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歌舞伎ヲタが滝沢歌舞伎についてぐだぐだ語る2023正月 -滝沢歌舞伎の凄さと今後についての考察-

これまで現時点で私が見ることのできる「滝沢歌舞伎」を全て見て、個別に感想をまとめてきたわけですが、一旦ここで「滝沢歌舞伎」ってどういうものであるのか、どういうところに価値があるのか、そして今後の「滝沢歌舞伎」に対する私の思いみたいなものを残したくなりました。

このところ色々動きのあった滝沢歌舞伎ですので、それも絡めて書こうと思います。本当は2022年のうちに書きたかったのですが間に合わず、2023年の正月三ヶ日にこれを綴っております。

はい、そうなんです。本ブログの目的は自分の考えや気持ちを吐き出すことでしかないので、そういうのお嫌いな人はそっとページを閉じてくださいね。何度も申し上げますが、私はただの歌舞伎が好きな一般人で、Snow Manが好きなオタクです。それでは鷹揚の御見物のほどを・・・。

滝沢歌舞伎は何が凄いのか

正しく歌舞伎である

「江戸時代にエレキギターがあったら、歌舞伎役者は絶対にそれを舞台で使う」と故十八代目中村勘三郎さんは言ったそうです。常に新しい技術、新しい演出を歌舞伎は取り入れてきたわけですね。今でこそ歌舞伎を支える音楽として三味線が使われていますが、これも最初は批判があったそうですよ。もともとはお能で使われている太鼓や笛がベースだったので、三味線なんていう新しい大陸由来の楽器を使うなんてちゃらちゃらしてるとか何とか。そんな批判を跳ね除けて今やもう古典です。

滝沢歌舞伎はただ単に和のエンターテインメントを組み合わせて若者が挑戦したということ以上に、歌舞伎の演目に新しいものを取り入れて見せたというところが価値のあるところだと思います。歌舞伎パートだけでなく、他の部分でもそうですね。セグウェイ使ってみたとか太鼓ぐるぐる回してみたとか、三味線やエレキギターと同じ感じで、意味なんて無いけどなんかかっこいいから使ってみたが満載なのがいいんじゃないでしょうか。

さらに、やっていることは現代的なのに、観る側には歌舞伎を観ている時と同じリテラシーを求めている。歌舞伎パートは特にそうですが、いい場面を切り取って見せているのは、見取り狂言といって昔から歌舞伎にあるスタイルです。また、鼠小僧の幕切れ、小判が舞ってみんながカッコつけて終わりますが、歌舞伎でも突然演者がいいところで「本日はこれ切り」と言って三方礼して幕が引かれるみたいなこともばんばんある。

演者(推し)だけを見ていると気づかないというか、ファンはかっこよければ何でも飲み込んじゃうわけなので、知らないうちにそういうものに対する耐性がついていくんじゃないでしょうか。なので、滝沢歌舞伎観てきた人たちは普通に歌舞伎観られると思います。筋の通らない芝居とか名場面ばかりをつないでみたとか、「このあとどうなんの?終わってなくない?」っていう幕切れなど(全然ディスってないよ)、歌舞伎では当たり前なので。

現代の演劇やミュージカル(ドラマや映画もそうだけど)って、「伏線回収」みたいな言葉に象徴されるように、話の整合性を重視している傾向が強くなっていると思います。それはそれで楽しいんだけど、人間生きてると矛盾したことばっかりやっちゃうし、説明できないことも多いし、立場によって感じることも違う。それを大きく捉えて全部包み込んでカッコよくしちゃったのが歌舞伎なんじゃないかなって思ってるし、それでいくと滝沢歌舞伎は正しく歌舞伎だと思います。

松竹株式会社の大きな信頼を獲得している

「歌舞伎」という言葉は松竹株式会社が商標登録しています。「歌舞伎」という言葉以外にも、黒・柿・萌黄で構成された定式幕や座紋である鳳凰丸のデザインも同様です。つまり誰もが気軽にこれらのものを使用できるわけではありません。

これは松竹側が商標で儲けようとかそういうことを意図しているわけではなく、歌舞伎という伝統芸能を守るためのひとつの手段だと私は思っています。なんか変なパチンコとかゲームとかビデオとかに歌舞伎とか使われて、そのイメージついたら困るじゃんね。

なので、元々「滝沢演舞城」と名乗っていたものが「滝沢歌舞伎」となった歴史は私からすると大変驚きで、この間にジャニーさんや滝沢さんが松竹側の信頼を得ることができ、興行としても大きな成功を納めていたのだろうということが推測されます。

さらに信頼が厚いと私が感じたのは、「滝沢歌舞伎」の定式幕があることでした。先述したように松竹の定式幕は黒・柿・萌黄で、これは歌舞伎そのものの表象に他なりません(おせんべいの歌舞伎揚とかもそうですね)。この定式幕は江戸三座と呼ばれる江戸時代の芝居小屋(中村座・市村座・森田座)から使われているもので、座元(興行主)によって色が変わります。今の歌舞伎座は森田座のものを踏襲していますし、中村屋が主体となって行われる平成中村座では中村座が使用していた黒・白・柿の定式幕を用いています(詳細は各自調べてね)。

普段、歌舞伎座と新橋演舞場は同じ黒・柿・萌黄の定式幕がかかっています。中村勘三郎襲名披露公演の際には歌舞伎座に中村座の定式幕がかかったそうですが、これは松竹側の粋な計らいだなと思う以上に、当時の中村勘三郎に対する期待や実績・人気に対する評価の表れとも受け取れます。

そんなわけで私にとっては新橋演舞場に独自の定式幕がかかるということは、まじで?という驚きでしかなかったのです。滝沢歌舞伎の定式幕は、紫・紅・白となっています。公式の記載をどうしても見つけられなかったので色の名前・並びは違うかもしれませんが、私にはそのように見えました(全然違う色を仰っているかたもおられる)。色気を感じさせる、滝沢さんらしい配色だなと思います。このように、これまであったどの劇場のものでもない定式幕がかかっていることについても、松竹側とジャニーさんや滝沢さんとの信頼関係が築かれていることの証左と言えるでしょう。

従って、滝沢さんが退所された際、滝沢歌舞伎は◯◯歌舞伎(◯◯は各自適当なものを入れてね)になってしまうのではないかという噂がTwitterなどでも面白おかしく言われていましたし、外部の演出家が入るのではないか等の噂もありましたが、私はそこまで楽観視できるものではないと考えていました。名称変更に関しては松竹側がまず簡単にOKを出さないのではないか、ということ。そして新しい演出家が入るのであれば、その人と松竹側との信頼関係を築く必要があり、それは一朝一夕にできるものではないということです。FINAL公演の演出がSnow Manということにあたっては、自然な流れのように思います。

伝統芸能・時代劇の継承先である

伝統芸能や時代劇を受け継ぐのはジャニーズかもしれないとTwitterでも呟いたのですが、今もその気持ちは変わらないです。

私があまり意識していなかっただけで、今も昔もジャニーズの皆さんってテレビの時代劇などにめちゃ出演なさっているのですよね。入口は様々に用意されていて、魅力的な人たちが魅力的な形で出演されている。ファンの人たちがそれを見ることによって、上述しましたが意識せずとも鑑賞する目を持つことができるというのは良いサイクルだなと思います。

日常で着物を着る人が減ってきたり、昔ながらの生活用品を使う人が減ってきたことで失われている伝統的な技術や文化があります。足袋のこはぜとか、今は使い回しなんですってね。もう歌舞伎や時代劇などの中だけでしか残っていないものがたくさんある。歌舞伎の小道具で使うからとか、化粧で必要だからという理由だけで残っていたりします。残すことだけが大事なわけでは無いのですが、せっかくの豊かな文化を潰えさせてしまうのは勿体ないなと思う次第です。

歌舞伎や時代劇が完全に消えてしまうことは無いと思っています。ただ放っておけば、博物館の中で展翅板に広げられた蝶のように、限られた人たちのために保存されたものになっていくでしょう。生きて絶えず変化していく文化であるためには、演じる側と鑑賞する側の双方の力が必要だと思います。

滝沢歌舞伎は失われていく日本文化を守る一助となる、というと何か大袈裟だけれども、今の若い人たちが時代劇や歌舞伎といったものに触れるためのひとつの大きなパスであることは間違いないです。

だから、アイドルが歌舞伎なんてとか、滝沢歌舞伎ってトンチキとかやいやい言う人もいるんですけど、黙ってろって話なんですよね。いやもう本当にありがたい限りですよ、歌舞伎ヲタからしたら。まじで何か言う前に観ろ、滝沢歌舞伎を観ろ、と思います。歌舞伎側が敷居を高くしてたら、本当に観にきてくれる人がいなくなって、いつか無くなっちゃうんだからな!

で、滝沢歌舞伎を観ておられる若い方におかれましては、ちょっとでも興味があったら古典にも触れてみてね、という思いです。分からないことあったら何でも聞いて〜、私も分からないことだらけだから!って思ってます。とにかく着物は着ていかなくても大丈夫だし(もちろん着てもいいよ!)、ご新規様ウェルカムだよ!!

これからの滝沢歌舞伎について考えたこと

事実関係

ここ最近の事実を順に述べると、まず2022年10月末に滝沢さんがジャニーズ事務所を退社されました。続いて同12月22日に2023年の滝沢歌舞伎の公演実施が明らかとなり、タイトルは「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」、これをもってSnow Manは滝沢歌舞伎から卒業する、ということが発表されました。さらに、2023年1月1日に公開されたデイリー新潮の井ノ原さんのインタビュー内で滝沢歌舞伎を支えてくれていたIMPACTors(以下インパクさん)が退所することが明らかとなりました(その前から文春報道はありましたが、このインタビューで公式にオープンになったと言っていいと思います)。

Snow Manの滝沢歌舞伎卒業とFINAL演出について

スノさんが滝沢歌舞伎を卒業されることは、私個人の感想としてはやはり寂しいし、残念という気持ちが強いです。佐久間さんには女方を極めてほしかったし、岩本さんには勧進帳の弁慶をやってほしかったし、スノさんたちで稲瀬川勢揃いをやってほしかったです。

一方であのスーパーアイドルグループを1ヶ月以上もひとところに閉じ込めて、一度に1,400ちょいの人しかそのパフォーマンスを見られないなんていうことは、あまりにもあまりにも勿体ない。また、人気が加熱しすぎてチケットの高額転売なども相次ぎ、その取り締まりに興行側もコストをかけなければならず、いくらドル箱といっても本末転倒です。なので、これは滝沢さんの退所が無くても仕方のないことだと思いました。

滝沢さん不在により演出がスノさんに決まったことについては、不安でもあり楽しみでもありといったところです。これまで滝沢さん演出の元、色々と彼らなりの意見も出しながらやってこられ、間近で演出家の振る舞いを見てはこられたと思うものの、何せ初ですからね。

私としてはZEROは演者が変わったとは言え、全然ZEROじゃないな!というのが本音ではありまして・・・。腹筋太鼓・変面・歌舞伎・鼠小僧など、もともとの滝沢さん出演の滝沢歌舞伎からコンセプトを変えることなくやってこられたということを考えると、スノさん演出で新しいものを取り入れるのか、昨年と同じことを遂行することになるのか、彼らがどのような議論や判断をしていくのかということに注目しています。滝沢さんがいなくても、松竹側および各スタッフさんとコミュニケーションが取れており、信頼を獲得できているのかどうか、ということが試されるのだと思います。

また例年どおり4月〜5月ごろの公演となるのであれば、新曲や映画のプロモーションも重なり時間のない中での対応となるわけで(それでなくても宮舘さんは1月のSANEMORIが終わるまで動けない)、どのような体制で進めていくのかも気になります。ファイナルにしてゼロリセットというのもあり得るのか?あり得ないのか?滝沢さんがいなくても変面はできるのか?(そこ)

IMPACTorsの退所について

スノさんの卒業を上回ってショックだったのは、インパクさんの退所報道でした。岩本さんも滝沢歌舞伎をいつか下の世代に引き継がねばならないと仰っていたわけで、いずれ今はJr.のメンバーに受け渡すことを前提に将来を見据えていたのであり、その引き継ぎ先の筆頭はインパクさんに他ならなかったでしょう。インパクさんの退所時期がいつになるのかはまだ分かりませんが、FINALに参加するにしろしないにしろ、次代に受け渡すことが難しくなってしまったということは言えると思います。もちろん他のJr.を育成させることも可能ではあるのですが、多大な時間とコストが必要となります。

2022年、滝沢歌舞伎を初めて実際に拝見して、舞台を支えるインパクさんの力強さに感動したことは前のブログでも書きました。特に影山さんの歌舞伎パートでの働きを間近でこの目にし、その眼差しの強さとエネルギーの高さに胸を打たれたのを今でもはっきり思い出せます。あれは円盤ではなかなか映らない部分だと思います。

万が一、インパクさんたちの退所がFINAL前となってしまった場合ですが、これは本当に考えたくありません。上述のような高いエネルギーで舞台を支える脇がいないのに、公演が成り立つのかどうか全然想像できません。前のブログでも書きましたが、主役とは異なる種類の高い技量を持ったお弟子さんがいてこそ成り立つ歌舞伎です。その位置にいたのがインパクさんです。これまで携わったことのないJr.の人たちをあのレベルにまで押し上げるには、なかなか難しいと思います。

前後しますが、FINALが発表された時に残念に思うと同時に、この先スノさんが歌舞伎的なものに関わるとしたらどういうスタイルがあるだろうかと妄想しました。ぼんやりと思い浮かんだのがスノさん全員ではなく数名で(岩本さんや宮舘さんかなあ)、新たな作品の枠組みをつくり、上演するというものでした。もちろん、今の滝沢歌舞伎で培った技術や関係性やノウハウを活かした形でです。この場合も、脇を固める存在が必要不可欠なわけで、妄想の演者の中には今携わっているJr.の人たちも入っていたことは言うまでもありません。そんな妄想もしづらくなってしまいました。

あまり憶測でものを言うのはよくないのでこの辺りでとどめ、詳細の発表を待ちたいと思います。私個人の願いとしては、滝沢歌舞伎的なもの、つまり日本の伝統芸能に対するジャニーズの皆さんの挑戦が、先に述べた価値を失わないためにも、これからも続いていくといいなと思っています。

終わりに

さて、本当に長くなってしまいましたのでここで終わりにいたします。重ねて申し上げますが私は歌舞伎を見るのが好きな一般人で、歴の浅いスノ担です。ただ人一倍滝沢歌舞伎に魅了されまして、こういったブログを書かずにおれませんでした。タイミング的にも。

次回の滝沢歌舞伎ZERO FINAL、熾烈なチケット争いが予想されますが、なんとか観に行ければと思っています。頑張る。あ、その前に今月6日からSANEMORIですね!これも楽しみ。私が観に行けるのは月半ばですが、なるはやでレポート上げたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


追記)
だらだら書いてきたのですが、実は滝沢さんがどういう経緯で日本の伝統文化に傾倒していったのか、松竹との信頼関係を築いてきたのかについてはてんで資料が得られず分かりませんで・・・もし有識者の方、こういうテキストがあるよ!残ってるよ!などご存知であれば教えていただけると幸いです。今後も滝沢歌舞伎研究?を続けたいので!

昨日、滝沢さんがTwitterでスペースやってたので、思わずリクエストして滝沢歌舞伎についてインタビューしたろかなと思っちゃいましたがやめました笑。次があったらやるかもしらん。


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