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スタッフの結婚式に参列してあらためて感じた「責任」

久しぶりの投稿になります。これからまた少しずつ書いていきたいと思いますが何分不定期なもので、気長にお待ちくださればありがたいです。このnoteでは、イタリアンレストランのオーナーシェフである僕が、普段、考えていることをお店のスタッフに語りかけるつもりで書いています。

先日、スタッフの結婚式に参列してきました。22歳か23歳のときに面接に来た入社8年目になる女性のキッチンスタッフの結婚式です。

彼女のドレス姿を見て「きれいだね」といってあげないといけないんだけど、なぜか照れくさくてうまくいえなかったです(笑)。というのも長い時間一緒にいて、子どもみたいなものだから。どこか甘酸っぱいような、なんだか恥ずかしいような気持ちでした。

人それぞれの人生があって
その人生を守るために仕事をしている

結婚式にはコロナ禍もあって3、4年出席していませんでしたが、さまざまな人たちが集う結婚式は、いい文化ですよね。

式に参列して、あらためて感じたのが、自分が知っているその人の人生は、本当にある一部だということです。彼女とは厨房でずっと一緒に仕事をしていて、終わったら一緒に飲みに行ったりして、たくさんの時間を過ごしてきたと思っても、それは彼女の人生の一部分でしかないということです。

彼女が悩みを吐露してくれることもありましたが、それは仕事上の悩みであって、実生活では、また違った悩みをもっていたんだろうと思います。

披露宴の内容も2人で考えたそうで、途中にいろいろと余興をやるんですよ。新郎がドラムを叩けるからと3曲ぐらい演奏を披露したり。それがすごく盛り上がったんですよね。そのときに彼女が見せるんです、会社では見せないような、うれしそうな顔を。

式には、彼女のお友だちがたくさん出席していて、恩師もいらしていました。もちろん、親御さんやご兄弟、ご親族もいらっしゃる。彼女は決して一人で育ったわけでもないし、ブリアンツァだけが世界でもない。さまざまな人たちの助けがあって彼女の今があるんです。人間は共存して生きているんだなぁと、あらためて実感する式になりました。

彼女は、これから先に子どもが生まれて産休をとったあとでも「ブリアンツァでバリバリ働きたい」と夢を話してくれましたし、親御さんからも「これから先もよろしくお願いします」と言っていただいて、もちろんこれまでも大事にしてきましたが、さらに、彼女たちのこれからの生活を守るために、もっとちゃんとしなきゃいけないと思いました。

人はそれぞれに人生があって、その人生を守るために仕事をしている。そのことを考えたときに、本当にスタッフを大事にしなきゃいけない、会社を大事にしなければいけない、彼らの生活を支えていかなければいけない。

そのためには、自分自身が責任が高いポジションにいるけど、やっぱり利己主義にならないで、みんなのことを考えて、お客さんのことを考えて、インポーターさんやサプライヤーさんのことを考えていく。昔は、こんなこと思わなかったから、角がとれたてきたのか、社会人になったのか、大人になったのかわからないけど、本当に責任っていう言葉を強く感じるようになりました。

僕は、会社として責任を果たすためには、人間の力が必要だと思っています。人間の力とは、何かというと、若手の力もそうだし、経験がたくさんある方々の力も必要だし、いろいろな力が重なり合って生まれるものだと思います。

ブリアンツァは、来年(2025年)に大阪、再来年に名古屋で大型店を出店することが決まっています。

それに向けてチームのメンバーで話すのは、若手だけでなく、ほかの店から移ってきた人、ずっとブリアンツァを支えてくれている生え抜きがの人が共存するようなチームをつくっていかないといけないとということです。

そのうえで僕は後ろにいるだけでいい。スタッフがどんどんいいメニューつくって、いい土台つくって、良いサービス形態をつくって、新しいブリアンツァをつくってくれる。それが本当に会社としていいことだと考えるようになりました。

昔は、「なんでこんなにおいしいのに食べてくれないんだろう」という不満ばっかりで、とにかく「自分の料理!自分の料理!!自分の料理を食べてほしい」という思いばっかりでした。自分の料理で星を獲りたいということばかり考えていたのに、今はそんな考えが一切なくなりました。不思議ですよね。たとえば「DepTH brianza」で良い評価を浴びたとしても、それは会社のためだと考えるようになりましたから。

成功も失敗も「うまく織り込ませる」こと

最近の若いモンは」とよくいう人がいますが、僕は若い人はすごいと思っています。

オリンピックを見ていても昔に比べて世界と十分に戦っている種目が多くなりましたよね。サッカーでも新しい世代の人たちが海外にバンバン行くし、世界の強豪といわれてるチームで活躍している。自分たちが世界に比べて劣ってると思ってないですよね。若い料理人たちでも、世界の料理に劣っているなんて思っている人は少ないと思います。

ただ、この国の社会構造だけが変になってきいる。社会が昔と変わったというのが大きいと思います。少子高齢化とか、労基問題だとか、線路の上を無理やり歩かせるような画一的な状況も、何か閉塞感があって自由度がないように思います。たぶん、それを取っ払ってあげたらみんなもワーッと、床に投げたパチンコ玉みたいに始まると思うんですけどね。

自由度をもたせて、ノビノビと「放流」してあげるのが大事だと思います。かといって何をしてもいいとすると、ルールや指針がわからないので、逆に何していいかわからなくなってしまいます。ある程度広めのフィールドを用意しするような工夫は必要です。

つまり自分で自由に考えることができるポジションを与えると活発に動きだすと思うんです。人間にはレギュレーションがありすぎるのは良くないですから。

ちなみに「自由」のなかで、経験のある人がどこまで助言するのかは悩むところです。これは相手にによるというのが正直なところで、言ってあげた方がいいことがあっても、それを聞く人は聞くし、聞かない人は聞かないですから。むしろ言うか言わないかではなく、「言ってあげる関係性」になっているかも大事だと思っています。まったく知らない人や、経験や知識がない人に言われても腑に落ちないですよね。

でも助言を聞いて「それでもやってみたいです」「試してみたいです」という信念は、かっこいいし、そういう意識をもってる人はにはやらせるしかないですよね。その方が、伸びると思います。というのも、そういう人は「やっぱり駄目でした、でも経験になりました」と、その失敗をその手前で織り込んじゃってるんですよ。

だから、「やるのはいいと思うんだけど、かなりハードル高いよ」という助言を「失敗させない」ために伝えるのではなく、「うまく織り込ませる」ために伝えることが、経験がある人ができるだと思います。事前にいっておけば失敗してもそんなにへこまないですから。成功も失敗も「織り込み済み」にしておくことがいいと思います。

若手が伸びていくことが、結局会社の伸びになるし、僕自身の伸びにもなるんですよ。教えるだけじゃなくて僕も勉強なります。やはり双方ともに利益がめちゃくちゃありますよね。一緒に伸びようねっていうスタンスです。

伸びしろしかない若者にとっての
「プロテイン」になりたい

ブリアンツァのメンバーは30代中盤が多いです。みんなに何かを任せることでそこから爆発的に伸びてくれたらと思うと、とても楽しみです。さきほど「放流」といいましたが、頭を押さえつけてやらせるのではなくて、彼らにもっと主体的に考えてもらう。そのうえで、どんどんプロジェクトに参加して新しいものを生み出していく作業がこれから大事だと思います。

もちろん僕もバリバリやりますよ。ディレクションであったりとか、またはちょっと変更するポイントがあればそれはもちろんそうだし、この業界の経験が長いので、価格帯であったり、何がウケるかウケないかっていうところの市場調査はやります。だけど、チーム作りがとにかく大事。自分が自分がというのでは、もうないですね。

DepTH brianza」が集大成って言われてるのも多分そういうことだと思います。僕がどんどん出ていくんじゃなくて、チームで、やっていくっていう感じになってるからだと思います。その方がいいじゃないですか。

伸びしろで考えたら、僕なんかより、若い子の方がたくさんあります。むしろ伸びしろ「しか」ない! それを僕たちは、彼・彼女たちを伸ばしてあげるではなく、伸びる手伝いする会社になりたいですね。みんな勝手に伸びるけど、ブリアンツァグループにいると、伸びが大きい。筋トレのプロティンみたいなものです。プロテイン飲んだ方が筋肉つききますから。若い人たちのプロテインになれるといいですよね。

ラ・ブリアンツァ」オーナーシェフ
奥野義幸

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