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ベートーベンとコーヒー 60粒の真実  その4

ベートーベンがパーコレーターを使ってコーヒーを沸かしていたことはほぼ間違いないとして、60粒説であるが
これはズバリでっちあげと言っていいだろう

あくまで想像だが、シンドラーが数えたに違いない
カリスマのエピソードのために、せっせことコーヒー豆を数える姿を想像すると哀れとも健気とも感じてしまうところである
(ひょっとしたら、ベートーベンは一度くらい数えてみたのかもしれないという可能性もあるのだけれど)


シンドラーは著書の中で、ベートーベンは60粒を1粒も間違えることなく数え、客がある場合は特にそうだったと書いている

そこで、再びルーイ・シュレッサーの回想である

客としてパーコレーターと思われるコーヒー沸かし器の構造の説明を受けてコーヒーを振舞ってもらったことを証言しているわけだが

彼にとってベートーベンは憧れの存在であり、その他にもこの日のベートーベンとのやりとりや部屋の様子など事細かに語っている

たぶん、ベートーベンがパーコレーターの説明をしてくれたことさえ嬉しかったに違いない
すなわち、もし、ベートーベンが60粒ものコーヒー豆を数えていたならば、書かないはずがない
書かれていないということは、ベートーベンは普通に豆を専用スプーンで入れたのだ

もし自分がシュレッサーであれば、パーコレーターよりも豆を律儀に数えているベートーベンの行動こそ驚くだろう

シュタルケやブルシーの回想録にも豆を数えていたという証言はない
この二人に関しても、もし数えていたとすれば証言しないわけがないだろう

あくまで僕の妄想にすぎないが
たぶん60粒よりももっと多い数の豆で濃いコーヒーを入れて飲んでいたのではないだろうか

パーコレーターは、その後エスプレッソマシーンへと進化をとげるのだが
もしベートーベンがエスプレッソを飲んだならば、相当喜んだだろう


そもそもシーモンの16粒証言にしてもシンドラーが勝手に付け加えたものではないかと僕は疑っている
のちに豆を数えてみて16粒では少ないことに気づいたのだ
(もはや妄想が暴走しています、すみません)

実際に豆を数えてわかることは、豆の形や大きさにも色々あるということ
ベートーベンのように自分の興味のあることには徹底的にこだわる人間であれば、おなじ形、大きさの豆を60粒数えるに違いない

「同じ大きさの豆を60粒1粒も間違えることなく数えた」
と書かなかったシンドラーよ、詰めが甘いな

さすが、会話帳を改ざんする際、さも連続する会話のように見せかけているのに途中で筆記具が変わっていたり、1820年頃は交響曲つづりが「Synfonie」だったのを1840年頃の書法である「Sinfonie」と記入していたり、いちいち詰めが甘いだけはある

とはいえ、後世にベートーベンに関する面白い謎解きをたくさん残してくれたという意味では感謝するべきかもしれない

ベートーベンが飲んだコーヒーを飲みたい!
というのが動機だったけれど、ちょっと長くなってしまったなぁ

パーコレーターをわざわざ購入してしまったので、ベートーベンコーヒーは毎日飲んで行きたいと思う

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