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あまねくやわらかく死者生者の結ぼれをときほぐしーーー                滝本晃司さん「歌うっていいな」深き鎮魂のよすが


鎮魂とはひとり死者の側に留め置かれる行為ではなく、残された生者のたましいをも鎮める行為なのだと。
死者と生者ふたつのたましいに絡みつくかなしみの糸を、やわらかくときほぐすいとなみなのだと。
この10年余の歳月を経て、魂鎮め(たましずめ)なるものの意味深さを身をもって痛感している。

そういう意味でも「歌うっていいな」は滝本さんの楽曲中、最もストレートに亡きひとへ向けた暖かな鎮魂歌だと私は思っており。 確実に東日本大震災をご自身の中に落とし込まれ作詞作曲されたのだと。無数のテープ起こしを通じ三陸沿岸の方たちの声を聴いてきた私のたましいがはっきりそう言っている。

歌うっていいな また会えるから
忘れていた好きだったこと 思い出すから
君がもういなくても
君の前にいて まだいる ぼくは歌うよ
君のそばにいて ぼくは歌うんだ
君の中にいて ぼくは歌うんだ

◎滝本晃司さん/歌うっていいな(抄)

君の前にいて
君のそばにいて
君の中にいて
ぼくは歌うんだ。

そう歌い上げ。滝本さんはこんなにも暖かくやわらかく彼岸の彼方の君へ静かなる想いを届かせる。それは「思い出すから〜」のメロディが切に想いを高め強調される点においてもわかる。明確にそのひとへの鎮魂の句として歌われているのだ。

滝本さんにそんな意図はなかったとしても、その声を聴き続けその声を知る私がこの曲に出逢ったことそれ自体が鎮魂なのだ。たとえ録音であっても、話し手の方たちの肉声をじかに耳で聴く行為は話し手と聴き手のたましいとたましいが接続する流路である。むろん私が皆様の代弁者たりうるとは思ってない。

けれども、あのとき海辺の方々の無数のたましいにふれてきた身体は無数の記憶の総体を無形に宿している。そしてそれらの記憶の総体を滝本さんの音楽に暖かく繋いでゆく、私にはそういう役割があったのだと。それこそ伝令者たる水星の身体をもち生まれた私の宿命だったのだと。いまはっきりとそれがわかる。

この身体はみずからのたましいだけでなく、私が生きて出逢ってきたさまざまな他者のたましいをも運ぶ船だ。記憶であれ無意識の触知であれそれらたましいの総体の呼応として、私の身体がそう言っているのだ。

滝本さんがこの曲の曲名を長らくつけあぐねていたのも、その辺りに起因する気がしていた。
つまり、この曲の歌意でありコアが「いまは亡き君のそばで君の中で、僕はずっとずっと歌い続けるよ」であるからこそ。君への相聞であり挽歌であり鎮魂歌に相応しい曲名をずうっとずうっと探されてたのかなと。

そしてそれに相応しい曲名。私自身も試みに考えてみたけど本当難しくて…。 外部の促しを経て決まった「歌うっていいな」は僕の側の比重が大きい言葉なので、いまも私的にはこの曲のコアとズレがある気がしてる。アルバム収録しにくいのももしやそのズレも影響してるのかな?と(いち歌詠みの戯言です🙇)

そして、結構時間も経ったし、そろそろいいかなあ〜と思うので記録として書いちゃうけど…!(笑)

一昨年の滝本さんのとある配信ライブのアーカイブ1回目視聴時のこと。
「歌うっていいな」2番の「君がもういなくても〜」のあたりで、ふいに赤ちゃんがキャッキャするみたいな可愛い声?が鮮明に聴こえて。

あれ?ライブ中こんな声聴こえたっけ?夢中で見てたから会場の赤ちゃん気づかなかったのかな??と聴き直してみたら今度は入っておらず(!)
ブラウザ表示はアーカイブ画面のみだし、うちネット有線だから混線ないと思うんだけどσ(^_^;)。。どっちにしろめちゃめちゃ可愛い声だったから問題ないね(笑)

というかもし!この赤ちゃんが何らかの浮遊する赤ちゃんだったとしても。
めちゃめちゃ可愛く喜んでる感じだったし、滝本さんの歌聴いてキャッキャしてる感じだったから(笑)ネット空間の隙をつきそんなキャワイイ存在まで呼び寄せちゃう滝本さんほんと最高最強だにゃ〜とϵ( ≧Θ≦ ϵ )))💕💕💕💕💕💕

千倉の滝本さんソロで子供たちがのどかに遊び回ってた光景然り。滝本さんの楽曲の子供たちへの親和性は折り紙付きなので。くだんの浮遊する赤ちゃんもこの曲に込められた滝本さんの暖かな祈りとその想いをしっかり受け取め、キャッキャと嬉しそうに天国に上って行ったのかにゃ〜と。

そうやって滝本さんは40年以上にわたる音楽人生において歌を歌い音を奏で続けることで、無数のたましいを喜ばせ鎮魂をおこなってきた方なんだなあと。 これは切に真面目なはなしとして。「歌うっていいな」を聴くたびに心の中でそっと、私は手を合わせるの。

そして昨年12月24日のアピアクリスマスライブアーカイブを無限回帰しつつこれを書きながら、そうか滝本さんの最新曲「空き地」はこの曲に回帰していく曲だったんだと(泣)
この曲の終盤。青空の彼方まで届けるかのように歌い上げられる滝本さんの「忘れないよ」がいまの私に強烈に響く理由が霹靂の如くわかり。さぁこれからどうする?の希望の深さ晴れやかさにめちゃめちゃ涙止まらなくなってしまった。。。

滝本さんをはじめとする音楽家の方たちは意識的であれ無意識的であれ、幾重にもその楽曲を歌い奏でることで地上の無数のたましいの鎮魂を重ねていると、私は強く強く思う。
だからこそあらためて。あまたのたましいに深く深く祈りつつ思う。

鎮魂とは、ひとり死者の側に留め置かれるものではなく。
死者と生者ふたつのたましいに絡みつくかなしみの糸を、静かにやわらかく時と記憶の中にときほぐす極めて静謐で深遠ないとなみなのだと。



(2023年1月7日ツイートに加筆)


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