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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#スマホで読む短編小説

短編小説『夕焼けと古い街並み』

スヌーピーのエコバックを重たそうに提げる、香田さんの後ろを離れないように歩く。 スーパー…

大河内健志
6か月前
23

短編小説『月明かりに照らし出される幻想』

「そろそろ閉店の時間になります」 追い出されるように二人はカフェの外に出た。 「随分、遅…

大河内健志
7か月前
18

短編小説『ひとりで歌うのが好き』

ワタシは、お父さんが自殺した日から、ピアノを弾くのをやめた。 なぜなら、ピアノを始めた頃…

大河内健志
7か月前
19

短編小説『木蓮の香り』

「貴島さん、分りますか?ここのところに黒い影が映っているでしょう。こちらが、4月結果の分…

大河内健志
7か月前
30

短編小説『永遠の深い眠り』

目を閉じた。 美月と妻の美由紀が現れて、お互いに顔を見合わせて笑っている。 美月と美由紀…

大河内健志
7か月前
20

短編小説『食が奏でるハーモニー』

それにしても、香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸とお茶碗の重量感がいい。 こ…

大河内健志
8か月前
18

短編小説『輝きを失った黒い革靴』

玄関のドアを開けると、いきなりお父さんがいた。 「ただいま!」 うつむいて靴を磨いているお父さんは驚いた。 記憶を失った者が、電気ショックで突然、記憶を取り戻したように。 その表情は、無実の少女が突然、裁判官によって死刑を宣告された時のように、驚きと戸惑いに満ち溢れ、やがて悲しみ変わって行くように変化した。 「おおきくなったなあ」 「・・・・・・」 「ごめんな。身体の調子を崩しちゃって、しばらく会社休んでいたんだ。また、明日から会社に行くよ。もう大丈夫、大丈夫」

短編小説『娘が羽ばたいて行く』

「お父さん、ちゃんと持ってなきゃだめよ」 せっかくの休みだというのに、娘に無理やり近くの…

大河内健志
9か月前
31

短編小説『キスで魔法が解けたのかしら』

改めて、オトーサンの横顔を見る。 微かな明かりにも左右されない彫刻の様な彫の深い顔。皺や…

大河内健志
10か月前
42

短編小説『彼女の瞳に輝く花火』

息も切らせず上がっていた花火は、1時間近くも経つと、さすがに連発と闇の間隔が、長くなって…

大河内健志
10か月前
29

短編小説『落日の憂鬱』

久々 に浴衣を着て、角帯を締めた自分の姿を鏡で見る。 我ながら年を取ったなと思う。 スー…

大河内健志
10か月前
34

短編小説『彼女の瞳に輝く花火』

息も切らせず上がっていた花火は、一時間近くも経つとさすがに連発と闇の間隔が、長くなってき…

大河内健志
11か月前
27

短編小説『ビルの隙間の打ち上げ花火』

やっと、小川の土手に着いた。 風景が一変した。 空が広がった。 日の名残りは、入道雲を紫…

大河内健志
11か月前
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短編小説『そこに私がいた』(連続短編小説『天国へ届け、この歌を』最終回)

日本からエアーメールが届いた。 差出人は「池田美月」と書いてある。 誰だろう? ニューヨークに来て、もう6年になる。 ということは、お父さんが亡くなってから6年近く経っているということか。 早いな。 不思議なことに、お父さんの意識があった最後の遺言のような形で、彼と一緒になった。 どう言う訳か、お母さんの猛烈な後押しもあった。古い形の結婚だけど、今となったらそれも悪い気はしない。 彼は、お父さんの手術の後に、きっぱりと医師を辞めた。 彼曰く、「医学の限界を感