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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#スマホで読む小説

短編小説「目を閉じて広がる景色」

遠くで若い女性の引き裂くような叫び声がした。 全身に鉄の鎧をまとった大男がベッドの周りを…

大河内健志
3週間前
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短編小説『思い出を失ってしまうことの悲しみ』

お父さんが亡くなってしまったことより、お父さんとの思い出を失ってしまったことが悲しい。 …

大河内健志
4か月前
21

短編小説『嫉妬より奥深に存在する美しい輝き』

自分のレジ袋に目をやった。 突き出ている土のついたごぼう。 スーパーマーケットのロゴが大…

大河内健志
4か月前
19

短編小説『嫉妬より奥深くに棲む魔物』

旦那が単身赴任をしている北大阪のマンションにきている。 名古屋で受けた精密検査の結果が悪…

大河内健志
4か月前
26

短編小説『美味しさが奏でるメロディー』

久々に手料理を味わっている。 それにしても香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸…

大河内健志
5か月前
36

短編小説『夕焼けを見ながら二人並んで歩きたい 』

胸騒ぎがしたので、単身赴任をしている部屋へ予定より1日早く行ってみた。 やっぱり私の予感…

大河内健志
6か月前
12

短編小説『お父さんの涙』

補助輪なしで自転車に乗れた日、 今でも鮮明に覚えている。 補助輪を外して乗れるように練習した。 最初は、お父さんがしっかりと荷台を持って、支えてくれるので、かえって安定感があった。 どんなに傾いたとしても、お父さんは、力ずくで戻してくれた。 「美月、持ってないよ、何も持ってないよ、手を放しているよ」 私は、乗れたと思った。 やっと支えなしで乗れたと思った。 お父さんから、離れてゆくと思ったら、後ろを振り返ると、すぐそこにお父さんがいた。 腕まくりして、が

短編小説『行く当てのない旅人』

古い町並みの中に、マンションがぽつりぽつりと現れてきて、仕舞には古い一戸建ての家は売れ残…

大河内健志
8か月前
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短編小説『迷える子羊』

私たちは、現役高校生の青春パンクバンドとして、人気が出てきました。 色々なライブにも、フ…

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短編小説『あの頃の記憶を残しておきたい』

「すいません、患者さんのご家族の連絡先は分かりますか?」 「はい」 ポケットの中に手を入…

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短編小説『お父さんが死んだ』

玄関のドアを開けると、お父さんがうつむいて熱心に黒い革靴を磨いていた。 「ただいま!」 …

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短編小説『あの時の感動はどこに行ってしまったのだろう』

やっと一日が終わった。 帰りの地下鉄御堂筋線は、混み合う。 特に淀屋橋から梅田方面に行こ…

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短編小説『思い出が色あせてしまわないように』

お父さんが死んだ。 お父さんを失った悲しみよりも、 お父さんとの思い出を失ってしまったこ…

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短編小説『流氷の鳴き声』

彼女がさっき言った「自由」、どういうことなのだろう。 確かに、彼女は札幌に出てきて「自由」になったと言った。 頭の中で、「自由」という言葉が駆け巡る。 コタツに足を深く入れて、仰向けになった。 彼女の足に当たった。 素足だった。 接触に抵抗する気配もなかったので、素足に自分の足を絡めた。 「自由」どういう意味なんだ。 天井を見上げた。 目の前には、円形の洗濯ハンガーに架けられた下着が、石油ストーブから発せられる気流によってゆっくりと回転していた。 ピンク、