燕を斬る!(『宮本武蔵はこう戦った』より)
佐々木小次郎の緩慢に空を切る一振りによって、巣に向かって一直線に飛んでいた親燕は飛ぶ方向を変えた。
親燕は、目の前に何者かが横切ったので、本能的にそれを避けた。上昇すれば、この速さでは自分の巣を飛び越してしまう。下をくぐり、直前で羽を拡げ、速度を落とし急上昇をすれば無事にたどり着ける。親燕はそれらをとっさに判断した。
親燕は、急降下して小次郎の膝元を通り抜ける。すると閉じていた羽を大きく拡げ、停止するかのように速度を落とす。そしてあえぐ様に羽ばたきしながら、自分の巣