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大河内健志短編集

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#小説

私は生まれ変わった『仮面の告白 第二章』

私は生きている。 賢明な読者なら、もはや説明することはないと思うが、『豊穣の海』にその手…

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短編小説「行く当てのない旅に出てしまったボク」

耳鳴りがするほどの静寂。 何も聞こえない。 吸い込まれるような暗闇。 もう何も見えない。…

大河内健志
2週間前
5

短編小説「目を閉じて広がる景色」

遠くで若い女性の引き裂くような叫び声がした。 全身に鉄の鎧をまとった大男がベッドの周りを…

大河内健志
3週間前
10

短編小説『流氷の鳴き声』

彼女がさっき言った「自由」、どういうことなのだろう。 確かに、彼女は札幌に出てきて「自由…

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私の投稿スタイルについて

2020年4月より、NOTEに投稿をはじめてから、2年余り経ちました。 現在までに340作品を投稿し…

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心は、あの頃のままなのに(小説『天国へ届け、この歌を』より)

香田美月が、このマンションに来たという痕跡を全て消し去った。 土曜日に、単身赴任をしてい…

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私の生き様(小説『仮面の告白 第二章』より)

私は、皆があっと驚くような馬鹿げたことしてみたかっただけなのだ。 世間が、どんなに頭をひねっても、理解することが出来ないことをしてみたかっただけなのだ。 様々な推測が、その時代の変わりようと共に違った解釈を生み出す。 そのたびに私は、祭り上げられる。 存在に関しては、永遠に記憶に留められるであろう。 私の死は、すべて織り込み済みであった。 私は、生まれた時からずっと、綿密なシナリオを描いてきた。 それを忠実に演じているだけなのだ。 そして、第一作は罵声と共に閉

はじめての音楽フェスでボーカルが急に歌えなくなる(小説『天国へ届け、この歌を』よ…

ワタシたちは、現役高校生の青春パンクバンドとして、人気が出てきました。色々なライブにも、…

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たそがれ(『天国へ届け、この歌を』より)

帰りの地下鉄は、混み合う。 特に淀屋橋から梅田方面に行こうとすると、京阪の乗り換え等で降…

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あの人の思い出と現実 (『夕暮れ前のメヌエット』より)

ポケットの中に手を入れて携帯電話を取り出そうとした時、田中の家族は小津さんであることを改…

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あのメロンパンをもう一度

焼きたてのクッキーの香りが、部屋中に漂う。 香ばしくて、鼻の奧が生クリームで満ち溢れるよ…

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さまようオヤジ(『天国へ届け、この歌を』より)

後ろを振り返った。 香田さんはまだ別れた場所にいた。 私が振り向いたのが分かったのか、百…

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すべては筋書き通り(『仮面の告白 第二章』より)

これ程までに文章を書くことが楽しいと思ったことがない。 自由に空を飛び回る鳥たちのように…

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ミッキーマウスの不調和音(『天国へ届け、この歌を』より)

「ああ美味しい」 香田さんが、先にスパークリングワインを飲んでしまった。 「あっ」 思わず口に出た。 「乾杯をするのを忘れていた」 「ごめんなさい。私、先に飲んじゃった?」 大きく開いた口をいっぱいに開かれた両方の手のひらで、覆う仕草が可愛らしかった。大したことでもないのに、こんなに大げさに反応するのが意外だった。 香田さんの神格化した女としてのベールが一枚剥がれ落ちた。いや、剥がれ落ちたのではなく、新しい側面が浮かび上がった。 彼女は、娘のカンナと同年代の女