連作短編小説「天才左甚五郎の片りん」『白木の棺』
「どんなに緻密な計算をしていても、誤差が出てくるものだ。五十分の一の模型でさえ、これだけの誤差が出るのだ。実際の建物になるともっと誤差が出る。誤差は出るものなのだ。それを承知で、埋め合わせをして行くのが大工の仕事だ。心して掛かってくれ」
主人は、棟梁をはじめ皆の大工がいる前で、話しました。
私が言うのもおかしいですが、主人も立派になったと思います。
私の父の組に入って来た頃は、おとなしくて無口な子供やったそうです。
しかし、父は早くから、この子は立派な大工になると、見