短編小説『物価の高騰による思いがけない悲劇の予感』
若い大工が、知恩院さんの山門の模型が出来上がったので、直ぐに見に来てくださいと私を呼びに来ました。
今までの見たことのない程の大きな模型が出来上がっています。
その周りを大棟梁の主人や棟梁らが取り囲んでいます。
模型を見なくても、主人の自慢気な顔を見ると、凡その出来具合は分かります。
私は、父が手掛けた東大寺さんの南大門の様子を知っているだけに、その模型の緻密さには驚かされます。
垂木斗栱(ときょう)の織り成す綾模様が、規律のある精緻の繰り返しが続く中にある未来への