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本当のピルとの付き合い方 後編


 本文は有料ですが、主要部分は全部読めます。また、前編からの続きですので、そちらを読んでからこちらを読んでください。



3 ピルとワクチンの類似性と女性の保護の在り方


(1)HPVウイルスと日本の対応

 子宮頸がんワクチンは知っての通り、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で起こるがんを予防するためのものです。

 日本で接種が始まったのは2010年11月。小学6年~高校1年の女性に無料接種ではあるが、任意的に摂取するというスタンスで行われた。2013年4月には定期予防接種になったが、既に多くの人々が知っているように、副反応が相次ぎ報告され、わずか2か月で義務的な摂取は禁止されるに至ります。

 この件については、マスコミもかなり大きく報道し、ワクチン接種が危険であると言うことが当時喧伝されることとなった。それとともに、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が結成され、被害者救済のための行動や、訴訟、国会などへの意見書の提出など様々な活動を行っている。メンバーは被害者の親やそれをサポートする女性の地方議員らである。



 もちろん、反対する側としては、女性の体がワクチンによって重篤な症状になることを防ぐためであり、定期接種には現在でも反対している。

 その一方で、賛成する側としては、内容は詳しくは書かないが、複数のエビデンスを元に危険性が少ないことの指摘、報告事例に対する因果性の疑問、他のワクチン接種で起こるような副反応事例と差はないというような指摘をし続けてきた。
 危険性はないということを必死に主張してきたのだが、国の動きは報道などもあってか消極的である。しかも、面白いことにリベラル側からも共産党は2019年の参議院選で出る立候補者全員が反対に回るというアンケート結果も出た。



 共産党と言えば、説明するまでもなくリベラル政党であることは言うまでもない。本当なら女性の健康を推進するために積極的に推進してもおかしくはないのだが、結果はこれである。

 また、公明党はかつて積極的に子宮頸がんワクチンを推奨していたのであるが、副反応があった後、再開に関して言及されているものがほとんど見つからない。救済に関する方針は決めているようではあるが、再開についての党方針は見えてこない。もちろん公明党も政策を見ればリベラルよりで党の方針としては中道とはしているが、基本的には女性に易しい政策を推し進めているほどである。だが、本件では及び腰である。
 それを証拠に、先のアンケートでは2名ほど再開するべきとしていたが、残り11名は未回答である。関心がないと言うより、党として動きにくい状況がこの結果なのではないだろうか。



 その他にも、先のアンケートの回答では多くの候補が未回答ということで、本件への関心の薄さを示している。


 フェミニズムの動きも色々と探ってみたのだが、どうもなかなか検索しても動きが見えてこない。もちろん、フェミニズムの中には、推奨することを進めている人もいるわけだが、調べてもあまりに反応がひっかからない。

 他にも、ピルと同じように日本特有の問題ではないだろうか、問題解決までの時間がかなりかかっている指摘も一致している。

子宮頸がん HPVワクチン 放置はもうゆるされない 厚労省は逃げるな
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20191206/pol/00m/010/018000c


なぜ諸外国でこうしたことが起きずに日本でだけ起きたか、世界保健機関(WHO)などさまざまなところで検証が行われているが、いずれにしても「積極的勧奨」を控えてから現在まで6年半は長すぎる。

 既に訴訟にまで発展している問題であることから、この問題は解決にいくまでに更なる多くの時間がかかるだろう。人々が色々な利害関係を持ってして対立した結果、ワクチンの摂取率は日本において全くと言っていいほど普及していないことが現実である。


 世界各国でワクチン接種が進む中、このまま日本だけ1%未満の接種率が続けば、近い将来、子宮頸がんは日本にしかない「風土病」になる可能性さえあります。


 どれだけ肯定派がエビデンスを重ねていったとしても、ワクチン接種の普及はほとんどない。本当なら若い世代が十分にワクチン接種を受け、ワクチンの利益を享受することによって、女性の体は守られるはずだったのだろう。
 だが、ここでも対立したのは、女性の体を守ることだったのである。一方は、女性を子宮頸がんから守るため。もう一方は副作用に対する保護のため。ともに女性がどのように守られるべきか。ピルにも副作用懸念や普及率の低さと言った面で共通している。

 そして、これほどまでに時間がかかってしまい、解決からほど遠いのも共通しているのである。

(2)男性に対する摂取を求める姿勢。


 
 また、子宮頸がんワクチンは男性に対する責任を追及する点でも一致している。


 有料記事であり、全部読むことはできませんが、所々に下記のような記述が見られる。

では、女子ではなく男子にこそ全員接種にしてもらい、女性にうつさないようにしてもらうというアイディアはどうでしょう。

医療者の側からしても、ややこしいことの多い思春期の女子よりも、できれば思春期にさしかかる前の男子に接種したいところです。

だとすれば、男子のがんも防ぎながら女子のがんも防ぐよう、女子ではなく、男子だけ全員に接種するのが一石二鳥に思えます。

 この記事では、男性にもいいことがあると巧みに誘導をかけてはいるが、男性には義務、女性にはまるで任意的に接種を進めているようにも見える。しかも、読んでいると、男性であれば女性よりも単純だから、雑に扱っても大丈夫だろうという感じや、女性が不安に感じているから、男性が率先して行うほうがいいだろうという、男性へのジェンダーバイアス・性役割の追求という側面をこれでもかと出している。

 別の記事では、イギリスで女性だけが無料で出来るのは男性差別だという紹介もしていたのだが、差別反対論と男性のみの義務という、ダブルスタンダードを堂々と提示しているのである。自説の都合のために女性に不利がなく、男性が責務を負う部分をうまく作るのは卑怯極まりない。


 また、彼女以外にも、男性がワクチン接種をすべきと言うようなことを盛んに言い出し、男性という性を強調して、男性こそやろうこういう男性は素晴らしいというような話を出してくることも確認できる。


 面白いことに、推進する側に男性がやるべき、男性にも責任を取ってもらおうという動きがある。かつてピルでも、男性の避妊方法を訴えた動きと似たような行動を見ることが出来る。


2021年4月12日追記

(3)日本におけるそのほかのワクチン事情について

 日本において、ワクチン関連は世界に比べていると遅れている面があるのではないか?という側面があるからこそ、日本において子宮頸がんワクチンが進んでいない原因ではないだろうか?と考える人もいるようである。


 少し事例を出したのだが、日本はワクチン後進国であり、こういった状況だからこそ、子宮頸がんも同じようなことになっているに違いないという判断である。

 確かに、国によっては定期接種になっているワクチンも、日本では定期接種になってないものも存在しているのは否定できない。記事を書いている今の段階でもおたふくかぜや百日せきのような任意接種にとどまっているものもある。

 しかし、よく考えてみてほしいのだが、他のワクチン接種においては子宮頸がんワクチンのような強烈な拒否反応とその実行力があることというのは存在してないのではないか?現に、今まで定期接種でなかったものであっても、日本において段階的に定期接種になっているものはここ十年くらいでもそこそこある。

ヒブワクチンは2008年12月から、小児肺炎球菌ワクチンは2010年2月から使用できるようになりましたが、定期接種になったのは2013年からです。水痘は2014年から、B型肝炎は2016年から、ロタウイルスワクチンは2020年から定期になりました。

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 もし、日本がワクチンに消極的な雰囲気が強いという理由が主な原因なら、定期接種になるワクチンというのは認可される動きも止まっていても不思議ではないはずだ。

 さらに、インフルエンザワクチンのような任意接種になっているようなワクチンであっても、日本は必ずしも低いというわけでもないようである。


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 これは65歳以上の高齢者の割合であるのだが、日本におけるインフルエンザワクチンの接種率というのは、OECD平均と比べても有為に高いのである。可もなく不可もなくという割合ではあるものの、これを見る限りではワクチン接種に消極的な国柄というような感じはしない。(ちなみにそのほかの年代別の接種率の推計に関しては、>小児および高齢者は50%台,一般成人は30%弱,全体では40%弱程度で安定しつつあるように見受けられた。 となっている。)

 おたふくかぜに関しても、定期接種化を求めている声はあるが、任意接種である現在であってもおおよそ30~40パーセントくらいは予防接種しているという風に報告されている。
 これらを少ないという風に判断するにしても、子宮頸がんワクチンの接種率と比べればはるかに差があるといえる。

 副作用に関しては、他のワクチンとて同様の報告はされている。だが、近年のワクチン接種の定期化の遅れを少しでも取り戻そうとする動きや、定期並びに任意接種のワクチンとの接種率、日本国民の反応を比較してみても、子宮頸がんワクチンのようなレベルのものは存在しないのである。 

 もちろんそこには男性が摂取すべき、女性に負担を押し付けているというようなものは存在していない。日本がワクチンに消極的だというのは必ずしも合致している内容ではなく、多くは子宮頸がんワクチンの反応によって作られたものではないだろうかと考えられる。

 彼女たちの反応は、海外にいらぬ誤解まで生み出すほどの害悪的なものであり、風評被害を生み出すほどの影響力があるといえる。

日本においてもHPVワクチンの接種推奨が停止され、再開を求める医療者の声にもかかわらずいまだ果たされていない等の現状があり、科学誌Natureが、日本ではワクチン安全性への懸念が世界で最も高いレベルにあるとの風潮をニュース記事として取り上げるなど、日本は先進国の中でもワクチンを用いた取り組みが容易でない国として注視されているのが現状です。

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(2021/05/02 追記)

 近年の地道な啓蒙活動の影響なのか、一時期に比べると改善したという報告をここに記す。回復するまでにも大きな時間がかかるというものである。


4 本当の解決と責務の在り方


(1)足枷は女性も作り出したのではないか。

 ピルと子宮頸がんワクチンの運動との比較をみるに、双方ともかなりの及び腰であったし、フェミニズムの動きも鈍く、フェミニズムもしくはそれに同調する勢力同士で争い合っていた事実が浮かびあがる。
 しかも、その争いの影響はピルの場合は、日本において承認が国連加盟国で最後だったことや、後の世にまでこれだけ広まることがなかったということ、子宮頸がんワクチンは、報道後に一気に普及率が減り、訴訟に発展し、こちらも長期間問題になっている。しかも、子宮頸がんワクチンは中絶のような利益団体の主張を考慮するのは考えにくい。

 二つのような類似事例が果たして偶然の一致として片付けられるのだろうか?私はそう考えるにしては、あまりに日本の動きというのは特異であり、他国では見ることが出来ないレベルの争いであることから、偶然ではないと言える。

(2)男女における非対称な危険への懸念

 他にも、男女においては危険性における男女差というものが、よりこの問題が特異なるものであると考えることが出来る。その一つとして、ちょうどピルと大きな関わりがあるバイアグラの承認についてである。この件を調べてみたのだが、色々と面白い事実がある。

 日本では1998年にできた男性の勃起不全治療薬であるバイアグラを半年で容認した際に、国際機関や国内からもピル容認がされていないことを抗議する声があった。その後、2ヶ月ほどでピルも承認された。
 バイアグラに関しても、心不全などといった副作用の懸念もあったわけであるが、かなり異例の速さで認められたのである。これを元に、男性の場合だと、薬の認可も早くされるほど優遇されている、医師会が男性主導だからこそこういったときだけは速さのだ。という風に捉える向きも当時あった。このときに、ピルに関してはバイアグラ認可前にも身体に関する副作用懸念があったため、審議が中断することもあったこともよりそう感じさせた。

 だが、私はこの期間の短さについて、男性の身体の危険性に関しては女性の身体の危険よりも重要視されていないのではないと言う要因も考えられると主張したい。

 細かくは書かないが、例えば3Kや危険な仕事というのは男性が多く、男性側が危険な目に遭ったとしてもそれを当然の如く受け入れられているように見える。
 過労死と言ったものも、電通の一件を取り上げるとわかるように以前から電通では過労死で死亡する男性が存在していたにもかかわらず、高橋まつりさんがお亡くなりになったときには、報道が一斉にされたものであり、国側からの動きもかなり速かった。

 もちろん、電通に限らず過労死でお亡くなりになるのは実際には男性の方が多いことは言うまでもない。(他にも、男女における身体の危険性における反応の性差はあるが、それは他に取り上げた話題などで確認してもらうといい。)
 また、先にも取り上げたように、女性のセンシティブな身体の話題で男性こそ義務にすべきと言うような言動が出るように、男性が身体の危険を顧みず、積極的に男性にいくべきという話も普通に出てくる。

 その他にも、女性専用車両などの特別な制度設定など、色々と指摘できるものがあるが、一端ここまでとする。

 これらのことを考えた上での答えが、問題解決までの期間の差ではないかと思う。男性に特権的なものがあるからこそ期間が短かったということで非難はされたが、逆に男性への危険性が顧みられなかったこそこの速さだったのではないだろうか。

(3)容認された時期付近にも、それほど動きはなかった。

 また、便乗して低用量ピルの容認にこぎ着けたのだから、このまま一気に普及のための制度や金銭の投入、保険制度の適用などの制度を一気に整えることも可能だっただろう。それでもその後の動きはほとんど起こらなかったのである。更に、この時期(90年代)には、フェミニズムで再びピルの容認を求めるような話が出たという見解を示すものもあれば、肝心の厚生省の会議にフェミニストがほぼ全くと言っていいほど介入しておらず、参加する場面が見えてこない、本音の部分ではやる気はないのではないか。と言う見解を出す人がいるなど、どうもちぐはぐで動きや見解にばらつきが出ている部分もあった。
 90年代ならちょうどフェミニズムが日本でかなり盛んになっている時期であり、社会党などが連立政権として出来た時期ともかぶる。リベラル系の勢力が一定以上入り込んでいた時期にもかかわらず、これだけバラバラだと言うことは、チャンスがあっても尚争いや及び腰な面があったのだろう。

 フェミニズムがもう少し努力をすれば、もっと早くに双方とも問題解決をしていた可能性というのは十分にあっただろう。だが、ピルに関しての普及率においても、子宮頸がんワクチンの件においても、他国では起こりえないような事情及びその流れを鑑みるに、明らかにフェミニズム、いや女性が問題解決を遅らせた主要な原因であると言うべきではないだろうか。

(4)男性は本当に責任を負っていないと言えるのか。

 だが、フェミニズムには男性の責任を問う声というのはまだ大きい。先にも挙げたが、妊娠というのは女性側が身体的にも精神的にも負担が大きいことなのだから、男性が積極的に責任を負うべきである。ピル使用による、女性だけが負担となるような状況を避けなくてはならない。
 それらを考えれば、まだ男性は責任を負ってないはずだ。男性がもっと理解を示すべきだし、社会全体で考えるべきことである。と。
 しかし、本当に責任を負ってないと言えるのだろうか。

(a)避妊方法に対する意識

 例えば、前編でも紹介したが、避妊方法としては日本の場合男性が主に避妊を行う傾向が強い。これは他国と比べてもである。

 2011年のデータになるが、避妊方法における国際データである。各国のデータを参照するに、日本はコンドームの比率が圧倒的に多く、香港、ボツワナに次ぐレベルで高い。伝統的な避妊法の割合もかなり高く、ピル使用に関しては、世界平均を大きく下回る結果となっている。

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 コンドームに関しては、世界平均と比べても突出して高く、他国における近代的避妊法というものはピルや避妊手術、IUDと国によって様々な割合があるものの、日本のようにコンドーム偏重というモノではない。また、伝統的な避妊法に関しても、日本はそれなりに多くの数字を出しており、どの方法も世界平均を上回っている。

 また、避妊の主体性についての意識も女性が高いとは言えない。数カ国分の比較ではあるが、日本は全体の7割以上が、男性側が避妊に関して主体的に動くべきもしくはどちらかと言えば主体的に動くべきであるとしている。
 これはアメリカやスウェーデンと言った国に比べると遙かに男性に対する主体的な動きを意識させられているのである。

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 世界的な流れを見ても、日本では男性側が責任を負うことを是としており、男性が避妊においても性役割を負うことを期待されているのである。

(b)妊娠した際の責任の在り方

 万が一、誤って子供が出来てしまったときに、責任を取るのかというのも男性は基本的に取ることが主流である故か、子供が出来たら結婚もすぐに決めることも多い。


Q.もし、彼女が妊娠した場合、結婚を即決しますか?
即決する……72.8%
即決できない……27.2%

 妊娠させてしまったら、結婚して子供を育てて一緒に生活をしていこう。そういうように考えてくれている人が多数派であり、即決できないという方も経済的な理由を挙げるがそれでもなんとか相談なりして、決めていこうという姿勢も見受けられる。
 これだけ多くの人が即決出来るほど、責任を取ろうとしているのだから、男性側は積極的ではないだろうか。

 少し古い時代からも、妊娠させてしまったら未成年あら親からお叱りを受けるのはもちろんのことだった。それは現代でも意識としては変わらないのだろう。それは当事者である男性だけではなく、親の意識に関しても大きな違いがある。


●男の子のママに質問! 学生のわが子が妊娠させたとき、どんな判断をしますか?
・1位:相手の親への謝罪、先方の意思を尊重する……63%(119人)
・2位:二人(子どもたち)が産みたいと言えば、応援する……19%(37人)
・3位:有無を言わさず、中絶をさせる……11%(21人)
・4位:どんな理由であれ、授かった命は産む方向で手段を探す……7%(13人)
 ※有効回答者数:190人/集計期間:2017年1月11日~2017年1月13日(パピマミ調べ)

●女の子のママに質問! 学生のわが子が妊娠したとき、どんな判断をしますか?
・1位:二人(子どもたち)が産みたいと言えば、応援する……47%(102人)
・2位:有無を言わさず、中絶をさせる……25%(53人)
・3位:どんな理由であれ、授かった命は産む方向で手段を探す……18%(38人)
・4位:相手の親への謝罪の後、先方の意思を尊重する……10%(22人)
 ※有効回答者数:215人/集計期間:2017年1月11日~2017年1月13日(パピマミ調べ)

 この調査では面白いことに、男性側の母親では相手の親に謝罪をさせると言うことを意識しているのに対し、なんと女性側の母親は産みたいと言えば応援すると言うことが一番だったのである。
 男性側の母親としては、もちろん相手の人生を左右するようなことをしてしまったのだから、申し訳ないという気持ちが出てくるのは理解が出来ることである。しかし、女性側の親だった場合には、中絶をさせることよりも倍近く多いのである。一体どうしてだろうか?と思うわけだ。女性同士だから、妊娠をしても女性としての喜びがあるからであろうか?子供が出来ることについて、自分も育てることに関わりたいと思うのか?一人一人の理由は定かではないが、男性側の親と比べると、かなり違いがあると言って良いだろう。また、女性側の母親が先方に対して謝罪をするというのが、最も少ないというのも、主だって謝罪する側ではないからだろうか?と言う意識も垣間見える。

(c)中絶の際の費用分担

 もし、誤って妊娠させてしまった場合において、中絶という手段も検討される。そのときには、当然中絶の費用を支払うことになるわけですが、中絶費用も男性が中絶費用を全額負担するケースが基本的に多いとのことである。別に中絶費用は法律で男女どちらが払うべきかという明文規定はない。
 だが、実務を知っている人などからの意見は、男性側が費用を全額もしくはその多く負担する話と言う話がでる。

>一般的には収入が少なく、また、術後すぐに働けないことや、身体への負担を考え、男性側が全額または多くの金額を出すケースが多いかと思います。

 また、判例上も、十分な費用分担をしなかったりすれば、不法行為に基づく損害賠償が発生することも考えられます。


東京高等裁判所平成21年10月15日判決は、この種の事案における最も代表的な判例でしょう。同判決は、女性の身体的、精神的苦痛や経済的負担は、「男性と女性が共同で行った性行為に由来し、その結果として生ずるものであるから、男性と女性とが等しくそれらによる不利益を分担すべきである」ことを前提に、男性には、女性の「不利益を軽減、解消し、あるいは分担するための行為をする法的義務を負っている」とした上で、女性から、その不利益を軽減、解消、分担するための行為をしていない男性に対する損害賠償請求を認めています。

 法律的にも、実際の動きを見ていても中絶になった場合には、男性側から責任を取るというような行為やそうさせようとする動きが見受けられるのである。


 いくつか責任に関して書かせてもらったが、これらの責任に関して男性側が逃げるような行為をしたら、男性が責められることは当然のことであり、多くの非難をされるのは言うまでもない。これだけ書いてきたが、検討するまでもなく男性は責任を取ることを求められているのであり、また果たそうともしているのではないか。

(5)ピルの普及率の低さは、日本のフェミニズムの敗北である。

 結局、ピルをどれだけ認可しようがフェミニストがあれこれ言おうが、現代でも尚普及率は低いし、男性が主導して責任を果たし、性役割解放をさせなかったというのが実情である。
 認可される前からの動き、更に認可から何十年も経っても尚、この状況だというのだから、これはもはやピルというのは多くの女性に必要とされていなかったし、利用をしたいと思えるようなことが出来なかったと言うべきではないだろうか。ついに、女性の主体性や性的自由、伴う不利益を受け入れられず、ピルを受け入れなかったのである。どれだけ性教育が充実していないからいけないだとか、保守的な価値観が支配しているからだと発言しても、もはやさしたる意味もない。
 女性の主体性と言うフェミニズムの中核をなす部分が確立できない。これは明確に日本においてフェミニズムの敗北と言っていいだろうと。フェミニズムは女性やフェミニズムそのものに破れたのだと。フェミニズムが本当に隠したかったのは、ピル普及を出来なかったフェミニズムそのものの失態なのである。

 海外にも同様の意見というのは存在しただろう。それでもなお、海外ではピルを利用し、避妊方法としても主流な手段として確立してきた国も存在しているのである。女性側がリスクも責任を受け入れたという証拠ではないだろうか。もちろん海外でも、ピルに関する矛盾や問題点は解決しきっていたわけでもないだろう。それでも引き受けたのである。

 性教育が悪いとか、男性にも責任をというが、やる気がないのはもはやごまかしようがない評価である。他人に責任を負わせるようなことはもう時代遅れなのだ。そしておそらく、日本ではどれだけ認可が下りて使用出来る機会が増えたとしても、ほとんどピルは普及しないだろう。それは他ならぬ女性が「主体的」に利用をしないことを求めているからである。
 

(6)まだ、抵抗するのなら

 それでもなお、男性や社会に責任を求めるというのであれば、はっきりと言わせてほしい。それはあまりにもあんまりではないかと。

 ここまで敬遠的であるのなら、社会も男性もピルも不必要だろうと思うのが一般的ではないですか。その流れをくんで動かなかったに過ぎないのではないです?それなのに、動かない、役割を果たさないと言われても無理です。二律背反を押しつけてはどうにも出来ません。嫌なそぶりを見せながら、尚男性が察してあげてあなたたちにとっての正解を出し、男性がエスコートしながらあなたたちのことを決めてもらい、責任ももっと取ってほしかったですか?
 自己責任や選びたいなんておっしゃいますけど、本当は選びたくないのでは?何でそんな女性の権利ごっこにつき合ってあげないといけないのですかね?

 なぜそこまで男性に社会に荷を背負わせようとするのです?己で背負えないのなら、もうフェミニズムなんてやめていただけませんか。己の歴史も信念もごまかすというのなら、意思決定を他人に委ねてしまえば良いのでは?委ねた後は委ねた相手に任せ、責任はとらなくていいと思いますよ。だが、もう意思決定に関われないことに口を挟まないでいただけませんかね。

 そう言われても尚、本件記事に文句があるというなら、堂々と挑んでこられるとよろしい。我こそはと思わんものは、この首取って手柄とせよ。

 
 残りはおまけです。「真のフェミニズム」とは何かというような論争の個人的な雑感です。投げ銭感覚、支援感覚で投じるもヨシ。おまけも読みたいと思うもヨシ。お好きになされればよろしい!


その他 参考

ピルはなぜ歓迎されないのか 松本彩子 勁草書房 (2005年)

『中絶と避妊の政治学 ――戦後日本のリプロダクション政策――』



子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ (平成25年6月版)





日本ではなぜ近代的避妊法が普及しないのか


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