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感動を言葉に落とし込む難しさ。

感動を言葉にするのは難しい。怒り、苦しみを『イライラ』、『ムカムカ』と言葉にするのは簡単だ。でも、感動を抱いたその瞬間、それをそのまま言葉に落とし込むのはとても難しいことだと思う。

好きな小説の続篇を読む。すると、その小説に引き込まれるように夢中になって、目は勝手に文字を追い、手は勝手にページを捲るだろう。手に汗を握る場面もあれば、勝手に涙が流れる時、恥ずかしくてみていられないような時もあるだろう。しかし、最後の1ページを読み終わって、パタンと閉じた時、心の奥底から湧き上がるその感情を言葉にできるだろうか。

映画を観る。映画館で適当に選んだ面白そうな映画をポップコーンを片手に持って。薄暗い照明がパッと落ちて、ざわつきがだんだん、だんだん静かになっていく。お馴染みのカメラとサイレンが出てきて、辺りはシーンと音が無くなる。ポリポリと食べ進めていたポップコーンも気づけば手が止まっていて、主人公に共感して一緒にハラハラもドキドキも味わうほど没入する。そして、ゆっくりと照明が明るくなると、半分残ったポップコーンを片手に背凭れに深く寄り掛かり、ふぅ、と息を吐くその瞬間の気持ちを言葉にできるだろうか。

自分はその時、『なんか凄かった』『めちゃくちゃ面白かった』なんていう、とてつもなくふわっとしていて、捉えようのない浅いことしか言えないだろう。その感動をそのまま言葉に表すことができないのだ。

よくテレビのCM等で、新作の映画の感想が流れるシーンがある。そこでも大体の人が『感動した』『泣けた』『面白かった』など月並みなことを言う。

きっと心を掴まれる時の感覚は、人それぞれ違っていて、表現の仕方も人それぞれだ。ギュッとくるかもしれないし、ガッとくるかもしれない。グワッとくるかもしれないし、フワッとくるかもしれない。

でも、人間が心を揺さぶられて、心がギュッとなる、じんわり暖かいような、ドキドキして息を大きく吸いたくなるような、その感情を表す言葉はそんなものだろうとも思う。

だから、本当に感動して、ぼろぼろ泣いて、その心を表す言葉はもしかしたら月並みな言葉が正解なのかもしれない。むしろ、月並みな言葉以上に、深い感動を伝える言葉はないのかもしれない。

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