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『虐殺器官』伊藤計劃、早川書房 

感想です。ネタバレ大有りです。

⚠️「とりあえず一周」程度の読み込みの浅さです。誤読していたり理解できていないところもありますが、読了後の新鮮な感想を認めておきます。
⚠️画像は古本屋で買った本書に挟まっていたショップカード まだ存在しているかな 「本物の肉」と「人工肉」はどっちが旨いのかな


人が死んだり傷つくことの多い世界なのに、そして主人公はそれらを作り出している側でもあるのに、全体として静かな印象を受けた。生々しいのに冷たそう、という感じ。

なぜ「藤原とうふ店」を登場させたのかは甚だ疑問。
あれを知っている人は一気に「この世界」と現実とが地続きではない感じがしてしまうのではないかと。ちょっとしたジョーク、ユーモアのつもりだったのなら無粋ですまないとしか言いようがないけれど。

主人公がいつまでも—結局最後まで—「ジョン・ポール」と呼び続けているのが面白い。あえてなのか、線を引いているのか、「そういう」一連の音として定着してしまったのか……感覚が鈍磨させられている主人公が他の人には持たなかった、こだわりのようなものを感じたのが良かった。

言語学的な話は元々興味があったので面白かった。それと「ゴドーを待ちながら」、好きなので登場して嬉しかった。スーザン・ソンタグが『サラエボで、ゴドーを待ちながら』(みすず書房)という本を書いているのでそこからも来ているのかな、と。
そういえば不条理・理不尽というのが割と共通して根底にあるテーマのような気がしてきた。

結局、父も母も友人も、死に方を選べる程度にはアメリカが平和だったんだなと。
これまであった、日常から逸脱せずに死ねる平和は、ジョンによって守られていたのだと気づいた時の気持ち悪さがすごい。

大のために小を切り捨てるという選択はよくあるし、世界のためを思ってアメリカを捨てるのは「まぁ世界のためなら……」と思う。
でもアメリカでその文法を使ったら内紛は北米大陸にとどまらないんでは? 
「英語はいまや覇権言語」らしいじゃん?

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