『iCON Z』を振り返る

LDH主催のオーディション『iCON Z』を私が追いかけ始めたのは、第一章の中盤頃でした。独占密着番組『Dreamer Z』の振り返り記事を一度だけ執筆したことがあり、それ以降は番組を毎回視聴するようになりました。

元々はオーディション番組というものに苦手意識を持っているタイプだったのですが、ぐっと惹き込まれたのは課題曲発表回を観た時です。

歌い出しから大ハシャギが過ぎる。技能とセンスに溢れた人たちが、曲を聴いた瞬間に目を輝かせて生き生きとする姿が、自分にはとても新鮮で眩しく感じられました。その様子を誰よりも楽しんで踊りながら眺めていたEXILE SHOKICHIさんも「彼らがここにいる理由がわかりました。音楽が好きなんですね」と、いたく嬉しそうにコメントしていたのを覚えています。なるほどこうやって徐々に“人”の魅力にハマっていくのが、オーディション番組というものなのか…と、何となく理解できたシーンでもありました。

候補生で結成された4グループ(Z FACTION・LIL LEAGUE・KIDMATIC・CROONERZ)はそれぞれ魅力的でしたが、合格したLIL LEAGUEはその中でも早い段階でグループとしての個性が完成されていたので、納得できる結果でした。
振り返ると、この課題曲発表回で岩城星那さんが「楽曲を聴いた時にグループの方向性が分かった」「これがLIL LEAGUEだ、と思った」と語っていた通り、彼らと「Rolleh Coaster」という楽曲の相性が抜群に良かったという点も功を奏したのだろうと考えています。

(↑四次審査のLIL LEAGUEとCROONERZ(20:44~頃)。『Water Baby』、今の彼らに歌ってみてほしすぎる)

(↑四次審査のZ FACTIONとKIDMATIC(18:33~頃)。今改めて観ても楽曲の難易度の高さに震えます)

個人的には、ボーカル陣(遠藤翼空さん、山本光汰さん、百田隼麻さん)の歌声のソウル感が活きていて、ダンスの構成も高く評価されていたKIDMATICが特に好きでした。

結果としてはこの第一章の最終候補生たちもほぼ全員デビューを迎えることになったので、このとき惜しくも落選した3グループの存在も今後、彼らの重要な分岐点の一つとして語られていくんでしょうね。四次審査の時点で落選していたZ FACTIONも含めて、何年か後には「こんなに豪華な組み合わせのグループが居たのか……」と言われるのかもしれない。

(↑2023年7月に発売されたLIL LEAGUEの2ndシングル『Higher』MV。iCON Z第二章メンバーがサプライズゲストとして出演した映像が話題になりました!)

(↑バイレファンキ要素がカッコいいLIL LEAGUE『HYPE UP』。クールな曲や激しい曲もだんだん増えていて嬉しい限りです)

そして、2022年6月からは『Dreamer Z』上でガールズグループ部門の放送が始まりました。正直、男性部門の時点で自分はあまり視聴に向いていない(ネガティブな感情移入と想像で勝手に辛くなってしまう)タイプだと自覚したので最初の方こそ及び腰で観ていましたが、結果的には最後まで見届けました。

(↑ 4グループでの『ONE BITE』による審査。)

メジャーアーティストとしての活動経験がある大山琉杏さん、元々プロのダンサーとして名が知られていた佐々木つくしさんや北寺海羽さん、当時13歳ながら堂々たるパフォーマンスとスキルで注目された岡田あゆ乃さん等々、強い個性と将来性を備えた候補生たち。いち視聴者としてはやはり個々のスキルが高い人にまず目がいきましたが、追っていく内に「もう全員受かればいいのでは……?」という状態に(毎回これ。よくある事なのでしょうが)。

(↑個人的に好きだった、候補生達がEmyli先生のモノマネをするシーン。めちゃくちゃイジるやん)

最終審査のダンスパフォーマンス(↑)には、約半年程でここまでのものを作り上げられるのか…と感動しました。

(↑最終審査の『Lonely』。サビの2人の高らかな歌声が感動的でした)

最終審査を合格したのは7人。そのうち2人がデビューの準備期間中に脱退し、5人グループ「MOONCHILD」として今年5月にデビューしました。

しかし先日、メンバーのRUANさんのパワハラ被害と活動休止が公表されました。

RUANさんこと大山琉杏さんは、類い希なる音楽的センスとストイックさでオーディション全体を牽引していた存在でした。と同時に、真面目すぎるが故に苦悩する姿も番組内では多く映されていました。

このような事態に至った事そのものが残念でなりませんが「iCON Zを通して音楽の楽しさを思い出した」と言っていたRUANさんが健やかに、思うままにパフォーマンスできる日が、一日も早く訪れるようにただ願っております。

また、このMOONCHILDはグループ名が日本のロックバンド・MOON CHILDと重複している点もかねてより問題視・批判されています。いずれに関しても運営側の方々にはきちんと問題に向き合い、真摯に対応していただきたいですね。

話は変わりますが、このガールズグループ部門に参加していた坂口梨乃さん、佐々木つくしさんは現在開催中のガールズグループオーディション『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』に参加されていることで話題を呼んでいます。

二人とも観客の視線を抜群に捉えられるパフォーマンススキルの持ち主でした。健闘を祈っています!

(また、その他にも今年3月にGirls²を脱退したさんも同オーディションに参加されています。石井さんのダンスとボーカルも大好きだったので応援しています……!)

さて『iCON Z』の話に戻ります。
2022年10月からは、男性部門“第二章”の放送がスタートしました。

『Dリーグ』に参加しているプロダンサー5人、EXILE ATSUSHIさんのオーディションから1人、またLDH所属のボーカル&コーラスグループ・DEEP SQUADから便宜上“新メンバー”と呼ばれていた若手メンバー3人、合計9人の候補生が追加されることとなりました。

今となってはもう一年以上前の話で懐かしくなりますが、この追加メンバーに関する発表は同年7月に開催されたJr.EXILEのイベント『BATTLE OF TOKYO』の公演中に行われました。当時この措置に対しては(発表のタイミングも含めて)少なくない数の批判的意見が上がりましたが、第一章から候補生の姿を見守ってきている視聴者の心情を考えれば、それも致し方ないことではあります。

それも踏まえてなのか、この第二章の序盤は明らかに「プロ(追加メンバー)vs 第一章メンバー」という構図になるような演出がなされており、これまでDEEP SQUADの活動を追ってきた視聴者としては少々辛いものがありました。

(↑2020年11月に初めてのワンマンとして開催されたDEEP SQUADの配信ライブの模様。準備期間中にコロナ禍に見舞われたため、自粛要請真っ只中でのデビューでした)

詳しく知ったきっかけはコラム記事の執筆でしたが、DEEP SQUADは聴き手に対して誠実なクリエイティブを重視するグループ、という印象が強いです。「Good Love Your Love」や「変わりゆくもの変わらないもの」が映像作品の主題歌としてそれぞれ好評を博したのも、その誠実さがあったからこそであると思います。

『iCON Z』への参加に関しても、DEEP SQUADが掲げる「(DEEP時代に立った)日本武道館のステージに、6人でもう一度立つ」という目標のためにこの選択をしたのだろう、という納得感は当時からありました。

(↑『Deja Vu』MV。端的に素晴らしくカッコいいPOP/HIPHOP/R&Bソングです。未聴の方は是非)

現在は事実上6人での活動が停止している状態ではありますが、別の形で活動していく中でそれぞれがファンを増やしていき、後にまたDEEP SQUADとして再集結する――という道筋になるのだとしたら、それは非常に感動的な瞬間になるのだろうと想像しています。楽しみですね。

それにしても過酷な合宿とボーカル審査/ダンス審査を経て「KID PHENOMENON」「THE JET BOY BANGERZ」「WOLF HOWL HARMONY」が結成されて以降のグループ観のまとまりの早さ、人気の急成長ぶりにはつくづく驚かされました。

(↑やはり第二章も良かった、課題曲発表回。当たり前ですが、現在では3組とも完全に自分達の歌としてモノにしてますね)

スキルを磨きながらグループとしてのオリジナリティの方向性を固めていきライブで表現する。と同時に、グループ毎の特性に合ったプロモーションのの仕方を模索し、各種SNSを駆使して積極的に発信していく……という、一連のプロセスを観ていくのが興味深く、楽しかったです。やっている当人達にとっては過酷な日々だったのでしょうが……。

そうした努力の末に3組がいずれも多くのファンに愛されるグループとなり、合格基準として設定された数字を遙かに超えた結果を残すに至った……という話は、上の記事でも書きました。

かくして3グループの同時デビューが決定。第一章で涙をのんだ候補生達もめでたく全員がメジャーアーティストとなりました。

(↑『iCON Z』第二章の本編内容が今でもYouTubeで観られるのは太っ腹ですよね。スタジオのパートがない再編集版ではありますが)

デビュー決定後、KID PHENOMENONとTHE JET BOY BANGERZの2組に関しては大阪の武者修行ライブを観に行きました(WOLF HOWL HARMONYはどうしても予定が合わなかった……)。かなり人が集まっていて上階の後列から観るのがやっとでしたが、どちらも精鋭が集まっているだけあってダンスのクオリティが非常に高く、見応えのあるステージでした。

中でも「Jettin'」のアウトロのダンスパフォーマンスは、生で観ると圧巻の一言でしたね……。

改めて考えると、このパワフル志向のグループに宇原雄飛さん、石川晃多さん、マーク・エイロンさんという3ボーカルが配置されるという巧妙な采配には唸ってしまいますね。足し引きで言えば引き算をしてくれるような歌声とテクニックを持つ人達が集まっていて、熱いパフォーマンスが程良く引き締められるような印象を受けます。

あとこのグループは、3組の中ではラップが際立って骨太なところも魅力です。BALLISTIK BOYZ・海沼流星さんを彷彿とさせる古嶋滝さんの躍動感あるグルーヴと聴き取りやすさはオーディション時から注目されていましたが、「Jettin'」では断然2コーラス目のNOSUKEさんと中村碧さんの仕上がりに惹かれます(上の動画だと01:19頃)。LDHのボーイズグループでは希少な、ちょっとギャングスタ感のあるフロウですよね。もっと色々な楽曲が聴いてみたくなりました。

最近の彼らはフェスイベントへ続々と出演しているほか、来年1月に発売予定のEPからの先行配信が近々あるようです。

その圧倒的なパフォーマンス力を存分に活かして、どんどんファンを増やしていってほしいですね。


他方、KID PHENOMENONは2ndシングル『存在証明』が解禁されました。2023年7月から放送されている新アニメ版『るろうに剣心』第二クールの主題歌という大きなタイアップがついています。凄い。

サビの多重ボーカルとサウンドの軽快さ、疾走感がアニメの主題歌らしく爽やかです。が、むしろ真骨頂は2コーラス目以降でした。後半は攻めてやろう、という意志が感じ取られる。

↑MV、あえて一人のメンバーにフォーカスしているサムネイルが目を惹きますね。ちょっと変化球な音色に引き込まれる間奏部分、ダンスでしっかりかましてます(動画では02:09頃~)。あと終盤のラップ(02:59頃~)もデビュー曲では見られなかった高速で熱いフロウが引き出されていてとても良いです。

KID PHENOMENONは今のところ、メンバーそれぞれの個性を活かしながら「今を生きる等身大の若者らしさ、青々しさ」を魅力とし、作品にも落とし込んでいるというイメージがあります。またダンス然りボーカル然り、もともと年齢を感じさせない実力を備えた人達ではありましたが、それでもやはりまだまだ若いので、様々な進化の可能性を秘めたグループでもあります。

今後が楽しみですね。恐らくJr.EXILEで言うところのFANTASTICSのように、様々な取っ掛かりから出会って楽しめる上に、クオリティの高い音楽パフォーマンスをしっかりと届けられる…というグループになるのではないかと想像しています。


最後にWOLF HOWL HARMONY。最近のニュースとしては「MTV VMAJ 2023」の特別賞『Rising Star Award Presented by YOKOHAMA』を受賞したことが発表されていました。錚々たる顔触れとともに授賞式に登壇するそうです。おめでたい。

WHHに関してはまずデビューシングルの表題曲「Sweet Rain」が素晴らしかったです。ファンによるSNS投票によって選ばれた楽曲だそうですが、これは大正解ですね。
タイトルや序盤のテンポ感からは「LOVE RED」と同じくしっとりとしたラブソングが想像されますが、全体としては、感情の高まりと共に加速する焦燥や葛藤を表現したシンセウェイブ的楽曲でした。

しとしと降る小雨のギターフレーズに小気味よいビートが加わり、一気に雨足が強まっていく展開に思わずニヤついてしまいます。速いビートに対して正確にアプローチしつつ、詞に落とし込まれた恋愛感情をしっかり表現する必要があるという点で「LOVE RED」とは一味も二味も異なっており、歌唱表現力が試される楽曲です。

(それにしてもサビの“Your Love Your Love”というフレーズ、どうしてもDEEP SQUAD『Good Love Your Love』を想起せずはいられないと思いませんか……関係ないのかもしれませんが)
4人の個性が強く、またそれぞれ歌唱もラップも上手なので、多種多様な楽曲にどんどん挑戦していき、色々な表情を見せていってほしいところです。


以上、自分が自分なりに『Dreamer Z』を通して見届けた『iCON Z』の総括的な話をしておきたくなり、まとめてみました。

もともと公開オーディション番組というものを観る習慣そのものがなかったのですが、改めて振り返ると思った以上に興味深く、また心動かされる瞬間がいくつもあった約2年間でした。才覚ある人達の努力と苦労の積み重ねを、いくらかでも目撃することができたし、様々な発見と楽しみを与えてもらいました。

しかしその間に「私はこういう番組の視聴にあまり向いていないタイプだな」という確信も得たので、今後『iCON Z』と同じようにダンスボーカルグループを追っていくことは、なかなか無いかもしれません……が、とにかく各グループの活躍を陰ながら応援していきたい所存です。

最後まで読んで下さってありがとうございました。
あまり各グループのメンバー個々人のファンの方のお話を聞いたことがないので、よろしければ感想代わりにXの方で何か推し語りのリプライでも投げてください( @SaikyouOkome)。


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