かがみの孤城 [書評]


・居場所はひとつだけじゃない


中学生だったころ、その中学生活が自分の世界の大部分を占めていた。

その世界からはじき出されるのが怖くて、周りに合わせることも多かった。

でも、大人になったら、家、会社、学生時代のつながり、サークル、趣味、SNSでの知り合い、地域の人…

そんな風に年を重ねるごとに、自分の属している輪を広げていくことができて、自由に選択できることも増えていきました。

自分の世界が少しずつ広がって、いろんな人との出会いや、新しいことへの経験をするワクワク感があったことも今では忘れているかもしれません。

そんな気持ちを「かがみの孤城」を読んでいるうちに、
昔を懐かしみ、今の自分の生活を改めて考えるきっかけになりました。

2018年の本屋大賞受賞作品は
人のこころを動かすパワーをもった作品でした。

・あらすじ


主人公の中学1年生、安西こころは学校に通えていません。

家に引きこもる日々を過ごしていると、
ある日部屋の鏡が光りました。

それは大きなお城へとつながる入口になっていたのです。

そのお城では、こころと同じような境遇の7人の子供が
集められていました。

そこに狼の仮面をかぶった「オオカミさま」が現れて、
「このお城のどこかに願いを叶える鍵がある」
と言い出します。

その願いの鍵を探す日々を送る中で、
7人の子供がどんな子たちかわかり、人間関係が少しずつかわり始める…


だんだんと明らかになっていく
7人の境遇、それぞれの関係性、そしてお城のこと
それぞれがテンポよく描かれていて読みやすいストーリーです。

登場人物の説明や日常が描かれている前半と変わって、
後半ではどんどんと展開が進んでいきます。

・本音で向き合い、話し合う


「かがみの孤城」を読んで私が一番感じたことは
本音で向き合い、話し合える人とのつながりでした。

本書の中でも、
自分の本当の気持ちを伝えられない
自分を認めてくれる人がいない
そんな登場人物が出てきます。

私も昔から、
「ともだち100人できるかな」
の歌のように友達はたくさんいた方がいい。
そう思い込んで学生生活を送っていました。

ニコニコして笑顔で、ケンカもしないで、輪も乱すことはしない。

なので、みんなにいい顔をして本音で接することができる人は
ほとんどいなかったと思います。

それは、人から嫌われることをひどく恐れていたのだと思います。

20歳後半になり今思うことは
やはり、本音で向き合い、話し合うことのできる人としか
付き合いが長くなることはなかった。ということでした。

友達が多くて、明るくて人気者になりたい。
そう思い、周りを気にしすぎていた学生生活では気がつけなかった
本当に大切にしたい人との付き合い方。
それを学ぶことができました。

信頼できる人とのつながり
本音で向き合い、話し合える認め合うことができる
そういう人がいるだけでどんなに心強いか。

忙しさに追われ、余裕がなかった今だからこそ
読めてよかったと強く思える、そんな本でした。

辻村 深月 さんの
「かがみの孤城」
ぜひ読んでみてください。


なんと漫画もありました!

https://tonarinoyj.jp/episode/10834108156726254773

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?