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【知床から箱庭の島へ②】帰郷


網走にて ハマナスと市街地

網走市を経由して山岳会のN氏、会長宅へ顔を出し、一年以上振りに元の職場へと行く。 この道○への派遣研修中、この派遣元の職場へ挨拶に向かうのは初めてという、「ろくでなし職員」である…

それでも、首長以下たくさんの方々が温かく出迎えてくれ、やあやあといろいろなお話をする。 久しぶりの庁舎や職場は、静かで涼しげで、地域の時間が流れているんだな~と思う。 馴染みのお店やガソリンスタンド、知り合いのお宅などにも顔を出す。

乳酪館で新発売されたソフトクリームがおいしい。 あちこちで牛乳の濃い味を特徴に売り出す中で、こうしたあっさりした軽い味わい感は、とてもおいしく感じる。 応対してくれる女の子たちが、とっても心地よい。

みんなに、平日になしてサ?と尋ねられるも、山なんだよね、機会あって北方領土に行くんだよね、と答えると、 「あ~、いつものことかい」と、納得されるのも少し奇妙なものだが、これが等身大の地域でのフツーのぼくである。 

ぼくにはやっぱりこの風土が必要なのだな、一部なんだな、溶け込んでいるんだなと思う。 何一つ変わっていない空気と温度、時間、たたずまい、みんなの人柄や言葉の優しさが、やっぱりうれしい。 胸がうわっと熱くなる。 理由なんかは、いらないな。

午後から、知床へ向けて走りだす。 夏空に斜里岳(しゃりだけ:1,547m)が、右側でおいでおいでと呼んでいる。 道東のマッターホルンの名に恥じない、相変わらず美しい端正な峰と壁を天と大地に向けている良い山である。 ホントウに良い山、思い入れのある山のひとつだもんなあ。

エゾスカシユリと斜里岳

出穂した秋まき小麦たちが広がる風光る畑たちの向こうに、青く知床連山が近づいてくる。 もう少しで馬鈴しょたちも花をつけだすと、最高の季節となるんだよなあ。

不思議と見るものすべてに感動する。 何だかすべてが被写体のように価値あるものに見えるのだ。 まるで観光客になった気分である。それくらい魅力的な地域ということなのかな。 それでも、今まで見てきた何気ないものに、新鮮な発見と感動ができることは、正しい姿なのかも知れない。
ぼくにとって、それだけ飢えていた、渇望していた大地感、空気、景観、空間、風と光なのかも知れない。

小麦と知床連山

斜里町ウトロ、知床に到着。
北海道内の各地からたくさんの生徒さんや顧問先生たちがBC(ベースキャンプ会場)入りしている。 今回の参加校は、男子15校、女子10校、計100名。 それに各校の顧問先生やサポートの人たちなどが加わる大所帯である。

知床は、先日5月27日に世界遺産の国内候補地に選ばれたばかりで、早ければ2005年6月にも北海道初の世界遺産 となるかも知れない。
そんなときに、この知床に青春多感期の高校生たちが集結したのは、絶妙な機会だと思う。 心から競技に関係なく、純粋な心に誇り高く、残して欲しいと切に願う。

おいしい夕食をさっさと済ませた後、早速、「夕陽台」へと夕陽を見に行く。 どうも、ここ最近、「夕陽フリーク」なのである。 何だか夕陽というものは、一日の切なさと充実感と、明日の希望をそろりと置いていってくれるように思えるのである。

この知床の、ここの「夕陽台」からの夕陽は、これまた素晴らしいのだ。 対面する夕陽は、海鳥と漁船のエンジン音の響きに包まれている。 そんな時間に包まれて、素直な高校生たちと一緒に山や進路などの話をする。
「どこのセンセイなんですかあ?」
「センセイでは、ないんだよう。地元の山岳会の人だよ」
「ふ~ん、そうなんだあ」
(わかってくれているのだろうか…)

こうして果てしない大空、地平線や水平線に軌道正しく沈む夕陽を拝める生活や空間力というものは、人の暮らしに とって贅沢なことなのだと札幌へ行ってから、つくづく思うようになった。

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