FP2級相続事業承継【その5相続・事業承継対策】

1相続対策
・節税対策 ・遺産分割対策 ・納税資金対策
どんな方法があるのか、確認しておこう
2事業承継対策
・具体的な方法
相続対策に加えて、後継者の経営支配権の確保も考えておかないといけない!
3非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予制度
・非上場株式等の贈与税の納税猶予制度
・非上場株式等の相続税の納税猶予制度
・納税猶予制度の特例
・贈与税の納税猶予制度と相続税の納税猶予制度の関係
贈与の場合には、非上場株式等に係る贈与税の全額、相続の場合には、非上場株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予される
4事業承継を円滑にするための遺留分の特例
・遺留分に関する民法の特例
一定の場合には、遺留分について、民法と異なる取決めをすることができる
5個人事業者の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度
・個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度
・個人事業者の事業用資産に係る相続税の増税猶予制度
個人事業者の事業承継についても、納税が猶予される

1相続対策
相続対策として、節税対策(課税価格の引き下げ)、遺産分割対策、納税資金対策があります。
①節税対策の一般的な方法には、次のようなものがあります。
■不動産の購入:土地や建物の相続税評価額は、市場価額よりもかなり低くなるため、多額の現預金等で保有しているよりも、土地や建物で保有しているほうが相続税額が低くなる
■生命保険の加入:生命保険金の非課税額を利用して相続税額を低く抑える
■生前贈与(暦年課税、相続時精算課税)
・生前贈与により、相続財産の減少を図る
・贈与税の基礎控除や配偶者控除を活用する
・孫への贈与で相続税の課税を1回回避する
孫が相続や遺贈で財産を取得しなければ、生前贈与加算の適用がないため、相続税の課税を1回回避することができる

②遺産分割対策
遺産分割の争いを回避するための一般的な方法には、遺言や生前贈与などがあります。

③納税資金対策
納税資金対策の一般的な方法には、次のようなものがあります。
■生命保険の加入:被相続人を被保険者とした生命保険に加入することで、相続時に相続人が受け取る死亡保険金を納税資金にあてることができる
■資産の売却:
・資産を売却して、納税資金をつくる
・相続発生後に資産を売却することによって、相続税の取得費参加を利用する

2事業承継対策
中小企業では、経営者の死亡によって会社経営が困難になることが多々あります。そのため、経営者が死亡した場合における、後継者へのスムーズな事業承継が重要課題となります。
事業承継対策の具体的な方法には、次のようなものがあります。
【株価の引き下げ】(相続税の負担を減らすため)
■生前に役員退職金を支給する
・退職金の支給により、会社の現金等が減るので、純資産が減る
→株式の評価方法が純資産価額方式の場合、
 株式の相続税評価額が下がる
・役員退職金は費用計上されるため、会社の利益額が減少する
→株式の評価方法が類似業種比準方式の場合、株式の相続税評価額が下がる
■無配当・低配当にする
類似業種比準方式や配当還元方式では、配当金額を考慮して株式の評価額が計算されるので、一定期間、無配当・低配当にすることにより株価を引き下げることができる
【株式数対策】
■自社株を後継者に贈与する
後継者の持株数を増すことによって、経営支配権を確保することができる
【納税資金対策】
■生命保険の加入
契約者=受取人:会社、被保険者:経営者」という生命保険契約の活用により、死亡退職金の支払原資を確保できる

3非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予制度
①非上場株式等の贈与税の納税猶予制度(一般措置)
後継者(受贈者)が、前経営者(贈与者)から贈与により、都道府県知事の認定を受ける非上場会社の株式等を全部または一定数以上取得し、その会社の経営を継承する場合には、その非上場株式等(発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分)に係る贈与税の全額について、増税が猶予されます。この制度を非上場株式等の贈与税の納税猶予制度といいます。

②非上場株式等の相続税の納税猶予制度(一般措置)
後継者(経営承継相続人)が、前経営者(被相続人)から相続等により、都道府県の認定を受ける非上場会社の株式等を取得し、その会社の経営を承継する場合には、その非上場株式等(相続開始前から所有していたものを含めて発行済み議決権株式総数3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税について、納税が猶予されます。この制度を非上場株式等の相続税の納税猶予制度といいます。

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③納税猶予制度の特例(特例措置)
特例後継者が、特例認定承継会社の代表権を有していた者から、贈与または相続等により特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その非上場株式等に係る贈与税または相続税の全額について、納税が猶予されます。
☆「発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分」という制限はなく、取得したすべての株式に係る納税が猶予されます。
また、特例後継者については、特例認定承継会社の代表者以外の者からの贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式についても、納税猶予の対象となります

④贈与税の納税猶予制度と相続税の納税猶予制度の関係
前経営者の死亡の日まで贈与税の納税猶予の適用を受けていた非上場株式等については、相続開始によって納税が猶予されていた贈与税額が免除されます。
この非上場株式等はすでに贈与を受けていますが、相続税の計算上、被相続人(前経営者)から相続または遺贈によって取得したものとみなされ、相続税の課税対象(相続財産に算入される価格は贈与時の価額)となります。そのさい、都道府県知事の確認を受けた場合には、相続人は非上場株式等(相続時点では非上場株式等に該当する必要はない)の相続税の納税猶予を適用することができます。

4事業承継を円滑にするための遺留分の特例
推定相続人が複数いる場合、後続者に自社株式(の全部)の承継させたくても、相続人には遺留分が認められるため、結果として、後継者に自社株式(の全部)を承継させることができなくなることがあります。
このような遺留分の問題を解決するため、「経営承継円滑化法」によって「遺留分に関する民法の特例」が定められており、一定の要件を満たせば、民法の遺留分の規定と異なる合意が認められます。
【主な条件】
①推定相続人全員の書名による合意が必要
②特例を受けられる中小企業は3年以上継続して事業を行っている非上場企業であること
③株式を譲渡する先代経営者は、過去または現在において、会社の代表者であること
④後継者は、合意時点において当該会社の代表者であることなど
【手続き】
◆経済産業大臣の確認が必要
◆家庭裁判所の許可が必要
【特例の内容】
後継者に贈与された自社株式について、除外合意(自社株式を遺留分算定の財産から除く合意)または固定合意(遺留分算定の財産に算入する自社株式の価額を合意時の価額で固定させてしまう合意)をすることができる

5個人事業者の事業資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度
①個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度
認定受贈者(20歳<令和4年4月1日以降の贈与については18歳>以上である者に限る)が、贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税について、納税が猶予されます。
なおその認定受贈者が直系卑属である推定相続人以外の者であっても、贈与者がその年の1月1日において60歳以上である場合には、相続時精算課税制度の適用を受けることができます。
②個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度
認定相続人が、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税について、納税が猶予されます。
☆前紀の特定事業資産とは、被相続人の事業(不動産貸付事業等は除きます)の用に供されていた土地(面積400㎡までの部分)、建物(床面積800㎡までの部分)、建物以外の減価償却資産で、青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものをいいます。

※このnote記事は商業目的ではなく私個人の勉強ノートです。

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