カッパのハロウィン

カッパの子どもはハロウィンをとても楽しみに待っていました。

この日ばかりは大手を振って通りを歩けるのですから当然です。

準備に余念がありません。子カッパはパリッとした真新しいシーツを手でぐしゃぐしゃと皺だらけにしては、ビリビリと引き裂いて、長いヒモのようにしていきます。そしてそのシーツをぐるぐると身体に巻き付けていきました。

「お母さん!見て!」「あらあら可愛いミイラですこと」子カッパは今年はミイラ姿にしたようです。でもちょっと張り切り過ぎたのか頭のてっぺんまで包帯で覆ってしまっています。

「これじゃあお皿が乾いたとき大変よ」お母さんカッパは子カッパの頭の包帯を少しほどいて、その代わりにお皿を隠すように小さなジャック・オ・ランタンを括り付けてくれました。

「わあい。ありがとう、お母さん」うちの子ったら大丈夫かしら。お母さんはちょっぴり心配です。

「子カッパ君、迎えに来たよー!」いつも遊んでいるコガモ君の声です。子カッパは慌てて飛び出そうとしましたが、お母さんが呼び止めます。「水筒を持って行かなかったら、お皿が乾いたときに大変よ」「ありがとう、おかあさん!行ってきまーす!」お母さんはやっぱり心配です。

「お待たせっ。わあっ!かっこいいねー!」お家の外には赤や緑や青の長い羽をたっぷりと身に着けたコガモ君が待っていました。いつもの三倍は大きく見えます。

「アステカ人だね!」「いいでしょ」コガモ君が腰を振ると羽たちがわさわさと揺れてにぎやかです。

二人は川沿いを歩いてお社に向かいます。こじんまりとしたお社で、建物に挟まれて窮屈にしていた時期もありましたが、今は周りに草が生い茂り、近くに植わっていたクリの木といっしょに日の光を浴びています。子カッパとコガモが鳥居を潜ると、お社の後ろから人間の子どもが顔を出しました。背中からちらちらと箒のようなものがのぞいています。

「なんだキツネ君じゃないか」

【続く】

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