4月に見た写真集感想

ハービー・山口 [peace]
「シャッターを押した瞬間永遠の命をとどめる」という文言はよく言われるものながら冷静に考えるとすごいことだよなぁと思う
自分も何度か人物撮りをしたことがあるけどふと見返した時あるいは見返された時に懐かしい気持ちになってくれる写真になってるといいなぁと思う
2003年の写真集なんだけどモノクロになっていてかつハービー山口さんの撮影意図かはわからんけど全体的にあまり時代性・時間性が出ておらず、写真だから当たり前といったらそうなのだけどまさに静止した時間・永遠にとどめられた命という言い方がぴったりだなと感じた
ちょっと鬼海弘雄のPERSONAを思い出した
正直自分ももうとっくに若者とは言えない歳なので、やっぱ若者という存在は輝いていて、燃えていて、どうしようもなく羨ましい存在だなぁと感じるし、この写真が撮られて20年経った今、この永遠の時間の止まった若者たちは今リアルの世界でどうしてるだろうという思いに駆られる
これを「ポトレ写真集」と呼ぶべきなのかはわからないけど、市井の人々の、それも若者のその人それぞれの、時代性も含めたこんなエネルギッシュさを「時間を止めている」という感覚も踏まえた形で写真としてまとまってる、こんなに素晴らしい写真集が読めて本当に幸せだ
歳を食った我々が「若者」という存在から感じるエネルギッシュさをそのまま具現化したような、そして20年前の写真集で時間が経ってるゆえ冒頭の「シャッターを押した瞬間永遠の命をとどめる」という前書きがとんでもない重みを持って心に刺さってくる

平間至 Thank you for the photographs! 平間至1990-2022
今にも写真が動き出しそうなダイナミックな写真は迫力十分
そしてどの被写体ともものすごく親密さを感じて、バンドとかの撮影であればあたかも自身もバンドメンバーになっているかのような距離感で撮られていて素敵
「僕にとってカメラは楽器」というキャプションが挟まるけどまさにその通りでまるで演奏の一部になったかのようなフィーリングが写真からかんじられて不思議

広田尚敬 Fの時代
鉄道のことはよくわからないけど表紙のとにかく重厚感のあるモノクロにまず惹かれた
純粋に、蒸気機関車というバカでかい鉄の塊をカッコよく撮ることに命を賭けている感じが伝わって良い
昨今の「撮り鉄」という言葉に代表される図鑑みたいに全く同じ構図で列車を撮ってる写真は図鑑・図録としては良くても情報量が皆無に感じてしまうのだけど、こんな風景との一体化でアプローチした写真集が昔からあったんだなぁと驚いた
バカでかい無骨な鉄の塊と、それを取り扱う時代、そして時代の移ろい
はるか昔の旅情とはこういうものなんだなという資料性
そして無骨な鉄の塊のはずなのに、だんだん列車に表情があるかのように感じられていくと言ったらちょっと感受性が豊かすぎるだろうか、でもそう感じられるくらい構成がすごい
あ、これはなんか楽しそうだなとかこれは気分落ちてそうとか
列車の中の営みには当然表情がある、しかしこの写真集の中では列車にも表情がある、不思議なことだ
あとがき読んではじめて知ったのだけど、このお方鉄道写真のレジェンド中のレジェンドだったみたいでそらスゲェ写真ばっかだわとなった、勉強になる
あとタイトルの「Fの時代」ててっきり鉄道関連でなにか「F」があるのかと思いきや、ニコンフィルムカメラの「F」シリーズの「F」だったらしくそっちかーーいwとなった

HOMETOWN EXPRESS 「祝!九州」写真集
なんかめっちゃ良い
ブレてるのもおかまいなしで喜びが全身から溢れている人だったり、おめでとう!て垂れ幕にしれっと宣伝入れてる人だったりそこに住む人たちのしたたかさと強さが垣間見れる
写真と動画の境目がどんどん曖昧になる昨今、この写真集は写真じゃなきゃ絶対できないことをやっているなと感じた
仮に車窓を動画回してたとしてもこの人たちの一瞬の表情は一瞬で通り過ぎてしまうし、まぁ一時停止すんのも不可能じゃないけどそれもなんとなく違うよなぁと思うし
結婚しますって垂れ幕流してる人とか農機で無理くり上まで上がって手を降ってる人とか好きすぎる
窓から撮ってるんでちょっと描写が甘くなってるとこも含めて全てが愛おしい
人間のエネルギッシュさを煮詰めたかのような写真群で、ただ新幹線を歓迎してる人々が写ってるだけなのに感動すら覚える、そんな不思議な写真集だった


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