7月に見た写真集感想

Stephen Shore (Phaidon Contemporary Artist Series)
英語わからないのでとりあえず写真だけパラパラめくった感じだと、とにかく淡々と見た景色を撮ってる、それだけなのになんだか数周回ってというか、不思議な良さがあるなと思った
2B channelの渡部さとるさんの言葉を借りるなら、SNSに載ってそうとでも言うか、気の抜けた感じの写真が多い
あと、大体1975年あたりの写真のはずなんだけど色のグラデーションがすごすぎるせいか全然古臭く感じない
モノクロ写真で時代性が見出せなくなるというのはよくあるけどカラーでこの感覚は初めて
やっぱ現代のSNS写真はこの辺りのカラー写真の雰囲気が流行ってて見慣れてるんじゃないのかなぁと思う

ELLIOTT ERWITT PERSONAL EXPOSURES
いつどうしたらそんな瞬間に会えるんだというシチュエーション、1950年とかの写真なのに斬新さを感じる画面構成、ユーモアの中に突然刺すように現れるブラックユーモアを感じさせる組み、どれをとってもすごい
ユーモアとナイフのような鋭利さ、それでいて鑑賞者に一撃で見せたい物をぶち込みながらも飽きなど全く来させない画面構成、あまりの偉大さ巨匠具合にちょっとハンマーで殴られたような感覚になるねこれ。。

Joel Meyerowitz A SUMMER'S DAY
大西洋の日差しを感じるな、というのが第一印象
夏を象徴するものをアイコンにして間接的に夏を感じさせているような気がする
夏というと太陽がカンカン照りの青い空とデカい雲と薄着の人々とイメージしてしまうが嵐が来た時のほんのり冷たい感じなんかも残っていて湿度を感じた
あとがきの文章が次々に場面が変わって正直さっぱりだったのだけど、子供時代の夏の記憶の追想・夢心地のようなものなのかなぁと解釈した

ジョセフ・クーデルカ プラハ侵攻1968
すさまじいパワーに溢れた写真集だった
更に差し込まれている当時の記事やラジオを引用したテキストが写真の力を引き立てていて圧倒された
正直当時のプラハ侵攻のことは大して知らないし時間が取れなかったので中のテキストを全て丹念に読んだわけではないのだけど当時の静かな抗議と戦いの息吹みたいなものが詰め込まれていて歴史的一冊だと思った
絵的・構図的・写真的美しさみたいなものは勿論見出せるのだけどこの写真集の中にある圧倒的パワーの前にはそんなものは二の次であるとすら感じる、これはすごい
あ、でも写真的美しさは二の次と言ったけど個人的に最近広角で色んな情報詰め込むような撮り方が好きなのでけっこう絵的にすごいと思う写真も多くそういうところも印象に残った
あと、これ当時定価3000円だったみたいだけど今値段見ると値段三倍になっててわろた
というかこの定価はバグり過ぎだろう笑

ベルント/ヒラ・ベッヒャー 給水塔
ぼーっと眺めてたら最初マジで意味不明だったけど50枚くらい見るうちにまさに類型に基づく構成って感じになっており見つける楽しさみたいなものと読み取る何かがあって良い
類型の発見も面白いけど形自体を見るのも段々楽しくなってきて、たとえば給水塔というよりむしろ小屋だろみたいなのがあってこれちゃんと役割果たしてんのかよとなったり
そして類型を表すかごとく撮り方が全く同じなことに目がいく
どれも徹底的に「真正面」から撮られている、「真正面」といっても厳密には斜めのようになっているものもあるけど見ると不思議と「目が合う」というか、正面だなと感じる形になっている
また、普通に肉眼で見ようとすると見上げるような形になるようなものも全て真ん中くらいの高さというか中央点を基準に撮られているなという形になっていて技術的なことも詰まっているなと思った

深瀬昌久 父の記憶
前半の写真は明らかに深瀬の父と母の出会いや結婚のイメージなので深瀬昌久が撮ってない過去写真と、深瀬自身が撮ったイメージカットのようなものが混ざってるんだろうか?
静かに歳をとっていく様が、何かこう美しさすら感じさせる
人が一人生まれ、消えていく様を淡々と写してるだけなのになんでこんなに美しさを纏っているんだ
絵的な美しさがある写真もあるのだけど、そうした美しさを下敷きにしつつ一人の人間の始まりから終わりを淡々と写し切った、そしてこれは人生をやっていれば誰しもが遭遇することとなる人との死別を想起させ、鑑賞者各々の記憶ともリンクする部分があり、読み終わる頃には少し自分が経験した人との死別との不思議な共感みたいなものが湧く写真集だなと思う
美という概念は不思議だなとふと思い立った
この写真集は美しい写真というのもまぁもちろんあるがどちらかといえば私写真的で美しい幾何学線がヨォ〜〜とかそういう感じではない
何に美しさを感じたのか?

エド・ヴァン・デル・エルスケン ONCE UPON A TIME
どことなく人々の活力に対する羨望のような眼差しを感じる
そして時折り差し込まれるシュルレアリスティックな感じの写真も作風なのかも
あとは楽しげに撮ってるな、と思う
世界中の写真が集められてるけどなんか撮ってる本人は長年撮ってるうちにいつの間に、てなってそうだけどこれ編集した人は集めんの大変だったのではとなんとなく思った

William Eggleston's Guide
パッと見なんでもない写真のようでかなり精細な画面構成で撮られていてもう単純に日々の写真撮影における構図の参考になると思った
つまりどれも場所がアメリカであるにしてもありふれたものばかりが被写体であり、とはいえ光の加減なんかもかなり巧みだったりするし、別で聞いた撮影秘話として撮る場所は大体あらかじめ35mm判でロケハンしてたとのことだけど実の所全部計算づくで撮られたんじゃないかという気もする
2BChannnelさんでのこの写真集の紹介で、「後になってfacebookを見たら、この写真集に載ってるような写真が沢山あった。この時代では誰かが残そうとしなければ残らなかった、日常そのもの」と紹介されていてまさにその通りだと思ったけど、同時に写真に関して修練された技術を持った人間があえて技術を捨てた(あるいは、そのように見せている)写真集でもあるかなと
でも完全には捨てていないかもなと感じるのがまた違うとこかもなと感じる
森山大道や川内倫子など、最初はカメラマンとして技術・知識・経験がモノ言う世界で活躍していたが、その後写真家としてあえてそれらを捨てて写真を撮っているという人はけっこういるが、これはまたその別パターンというか
そして最近思うのはこの「アメリカンニューカラー」と類型できるかわからんけど、このエグルストンやジョエル・マイヤーウィッツなどの時代の色使いがけっこう自分の観測範囲では現像のブームがきているような感じがして、時代の繰り返しやあるいは色の好き好きの普遍性なのかも、と思う

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