11月に見た写真集感想

森山大道 記録58号
ページの組みが組み写真みたいで面白いなと毎回思うけど今回もやはり面白い
写真を二枚並べられると脳が勝手に二枚の関連性を探してしまうのはなんだろうな、PENTAX17とかでもあるあるみたいだ
最近高いカメラやら色々使ってて再認識したのだけど、誰々が使ってるのと同じカメラがどうとかこのレンズだからこういう表現どうのとかって、ロマン的な側面はもちろんあれど最終究極は撮影者の個性・写真の編集・編み上げた人間の感性、によってのみ決まるものであり表面的に機材だけなぞったところでその人と同じになどなれるわけないなと、なんだか痛感する

北井一夫 1970年代NIPPON
基本的に撮影地はバラバラだけど見開き2枚に何か共通性があるという構成で、共通部を探すのが楽しい
ほとんどの日本人が心の奥底にイメージする「ニッポンの田舎」をそのまま抽出したみたいな写真ばかりで驚く
つまり、果てから果てまで山、川、田んぼ、みたいな、差し込まれるエッセイに至るまでイマジナリー田舎って感じ
テーマを持ってまとめた結果撮影地がバラバラになったのか、バラバラにするということが主題にあったのかどちらだろう、しかしともかくこの「ニッポンの田舎」の煮凝りみたいな世界観には自身のイマジナリー田舎みたいなものが強く共鳴してすごく惹かれるものがあり凄い写真集だと思う
群馬の渡し船のエッセイと写真のとこで完全にやられたわ
全体的には(この写真集が編まれた時は意図されてなかろうが)「美化された昭和」みたいなものを、50年後のぼくが見ると感じる
つまり田舎の綺麗な景色、暖かい人々との触れ合い交流、といったものが前面に出ている
この時代には当たり前だったのだから
同時に、この世界観は30代中盤の自分の年齢であれば昔のテレビ番組とかの記憶から構成された朧げな昭和の記憶からなんとなく世界観が想像つくけど、今の若い子がこれ見ても同じような世界観を共有できるのだろうか、ある種失われた世界観なのかもしれないな、とも思う
昭和の古き良きの具現化というのが非常に強い写真集だったけど、自分に対し振り返るともっと日本中色んな街の写真をストリートスナップの観点で撮って令和・あるいは平成をとりまとめるみたいなことをしてみたいなと思った

古賀絵理子 浅草善哉 写真
そこに誰かがいた(今はいない)ということと、それによる寂寥感みたいなものが強く出ていていいなと思った、気持ちを受け取れたことそのものにグッときたというか
あとがき読んでみたところやはりというか撮影者がよく通っていた場所の老夫婦とその終わりに立ち会うようなそんな写真集で、人生という脈が線を刻み、終わりゆくところが確かにここに残っているというのがすごく良いなと思った

佐藤健寿 THE ISLAND
開幕の黒バックに白文字の「我らの町へ」というのがもうあまりにカッコいい
時間の堆積とでもいうか、長い時間をかけた変化の静謐がとても精巧に写し出されてるなと
我々が見ている街の風景と軍艦島の風景の違いとはなんだろうなと考えさせられる不思議な写真集だった
いや、物理的には違うに決まってるんだけどこの写真集は見ているうちに我々の中に存在するモノとモノの境界線が取っ払われて写真から想起させられる幻視の町に引き込まれるような不思議な感覚があった
途中途中差し込まれるテキストは実は軍艦島に落書きされた詩からの引用というのも震えた
写真や被写体の場所性も相まって人ではないものが語りかけてるかのような感覚がスッと入ってきて非常に引き込まれた

細江英公 薔薇刑
三島由紀夫の旧字体だらけのテキストが読みにくくて正直テキストの読解がしんどい
写真は、「なんかすげー」とはなるものの西洋美術のコンテクストがわかってないと真意がわからなさそうな感じでつまり言うところの網膜的快楽を以て相手が何を喋ってるかわからんけどとりあえず拍手してるみたいな気持ちになる
総じて迫力は感じるけど何言ってんのかはわからんといった感じなので10年後くらいに改めて鑑賞してみたい
ただあとがきにある細江英公の「薔薇刑」撮影ノートは普通に面白かった
エピソードもさることながら、先月見た細江英公の「鎌鼬」に話が繋がって、コンテクストだ〜〜〜wwwwwと叫んだ


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