5月に見た写真集感想

蜷川実花 東京
東京をテーマにした写真集というのもそれなりに見たことあるけど一際独特で良かった
蜷川実花自身の中に形作られた東京という街のイメージを実体化させたような独特の掴みどころの無さのようなものがあり、しかしそれが現実の東京っぽい曖昧さになってるというか
正直自分に刺さったかと言うと微妙という感想ではあるけど一冊の中に構築された世界観の迫力を感じた
明らかに家族と出かけた時の写真や人物撮影時のオフショットなどがありいい意味で肩の力抜いているような感覚がある
オフショットぽい写真はたぶんだけどコンパクトカメラかなんかのフラッシュ撮影なのかな、程よいソフト感というか写りきってない感じが逆に良さを出しちゃっててすごい
人の人生の「目」というか「視界」を見ているような感覚を覚える
てか真っ暗な中フラッシュ使った撮影っていいな 今度やってみよう


石原正道 AMERICAN SOUTHWEST
石原正道 AMERICAN SOUTHWEST <2>
スナップから風景写真まで様々あり、総じて「アメリカはスケールがちげぇな・・」という感想に至った
昔洋画とかで見たアメリカのイメージはどちらかといえばこの写真集にあるようなだだっ広い荒野のようなイメージが強く、このイメージの中のアメリカが具現化したようにも感じた
つまり見渡す限りの茶色い土ととにかく伸びている道路を走るバイクのニーチャンみたいな…
全体的にIIの方が好きかな、なんというかこの異国により十人として入り込んで写真を撮っている感がある
つまり1では異邦人としての写真だったのが、2ではあたかも現地民が撮ったかのようなナチュラルさをどこか感じられて好みの写真多かったなと


森山大道 Daido Moriyama 1965~
氏の傑作選的な写真集で既に見たことのある有名な写真が多かったものの、印刷装丁が素晴らしく最後まで新鮮な気持ちで見れた
改めてプリントの仕方で写真の見え方こんなに変わるんだなと
映画にも出てきた有名な写真も多数あったけどかなり新鮮な気持ちで見れた
森山大道の写真について改めて少し考えたけど主題をズギューンとクローズアップ一本勝負みたいな雰囲気の写真が多いなと思う
普通これだけクローズアップ系の写真を連発したり真似しようとしたりすると陳腐化が起きてあまり良くならない印象があるのだけどこの辺はなんというか言葉にしがたい大道の例外感というか次元の違いみたいなのがあって全然見れちゃうなぁ凄いなぁと思う


蜷川実花 noir
そういう印刷なのかわからないけど、被写体と本自体の匂いがなんかリンクしているような感覚があり面白いなと思った
どういう印刷なんだろう


浅田政志 浅田家
どこにでもありそうな日本の家族の肖像みたいなのを上手く具現化していてすごい
知らない場所の知らない家族たちなのになぜか見覚えがあるような、経験したことがあるシチュエーションに感じられる写真たちで何かこう存在しないはずの記憶を呼び寄せられるような不思議な感覚を覚える
個人的には前半の家族コスプレ写真もいいけど後半の家族写真の方が"素"ぽくて好きかも
友人と旅行とかした際はこういう写真を撮りたいなぁと思わせてくれるような写真集だった

菊池一郎 偽景
偽景というテーマはわかるようなわからないようなだったけど、無機物というか人が写ってない風景の撮り方が上手くてとても参考になった
実存感みたいなものを感じさせるというか
ここ最近の自分は通行人の写り込みを活かした写真というやり方に特化しすぎて人が全く写ってない、その場のモノを活かした写真というのがあまり得意ではないからこういった手法を取り入れてみたいなと
けどその中でたまにある人が映り込んだ写真の質がとても素晴らしかった

新倉孝雄 NEW YORK 1995‐2002
911ですら「写真」として仕上げてしまう写真家という生き物の執念と執着は個人的にどこか美しさみたいなものを感じる
1995から911までをも含めた"時間"を切り取った写真たちから時間という客観性を切り取ろうとしているような意図を感じなくもない


荒木経惟 東京人生 SINCE1962
今まであえて避けて通っていたアラーキーの写真集をついに見始めてるけど1、2枚見ただけであぁこの人天才だわとなった
「アラーキー」というだけでもはや素直に写真が見れないと思っていたし実際割とそうだなと思うがそれでもこの圧倒的な威容に飲み込まれずにはいられないというか
こんなに良い写真撮れるのになんでそんなに変態なんだよとか思うけどそれとも変態じゃなきゃこんな変態的な写真は撮れないってことなのだろうか、もうなんもわからん
やたら遊郭やら変態的な看板やら女の裸やらが出てくるのはそういうのを今より堂々と提示できた時代という側面とアラーキーが見ていた世界ってことなのだろうか
ブレッソンみたいな計算され尽くした緻密な構図は最高だがこのアラーキーの写真集のように猥雑なのに成立しているという感じもこれはこれですごいことをしているのだと感じる


森山大道 記録54号
アラーキーやウィリアムクラインとのツーショット写真が貼られてる壁のカットとシンジローのカットが印象的だった
やっぱり大道の写真はいい
いつまでも見ていたい


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