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2018年月組エリザベート 珠城トート×愛希シシィ

珠城トート、悲しみの感情を感じるトートでした。

怒りのトート、朝夏トートから一転して、また斬新なトート像でした。

トートが可哀想で泣いたのなんか、初めてだ。


珠城りょうのジャンルは、他のタカラジェンヌのような「カッコイイ彼氏」「憧れのアイドル」「この世のものとは思えぬ妖精」とかのジャンルではなく「安心する優しい夫」

たとえば明日海トートはハッピーエンドの際「まぁ俺が勝って当然」みたいな顔をするし、朝夏トートは「フランツに勝利してやった」みたいな顔をするけど、珠城トートでそれは想像ができないんですよ。

つまり、彼のスーパー夫パワーに負けて、美弥フランツが愛希シシィを譲るのではないか?

見に行く前、私はこう予想していました。

しかしこの二人、多分、逆だったんです。

珠城トートのスーパー夫パワーは、
「もし世界がこの逆で、おれが彼女と結婚していたとしたら」
「絶対にこんな男よりも彼女を幸せにするのに」
「なぜこんな、冷たく死神のような男が彼女の側にいるのか」

という方向に発揮されていた。

「それなのに」
「でも現実にはおれのほうが死神でしかないのだ。」

いままでのトートは、シシィへの愛情表現が不器用で、下手だったけれど、珠城トートはそこでは非の打ち所がない。

これマジで彼がフランツとして生まれてたら、シシィをそのまま幸せにできたんじゃないのか?

フランツはフランツで、「シシィを愛してはいるけど、意志薄弱なマザコンなので夫としては頼りない」みたいなキャラだったはずが、美弥フランツには人間臭さがありません。

この人、単に記憶をなくして現世を人間として過ごしてる、死神なのでは?

なので二人のチェンジ感が、とても上手く噛み合っている。

珠城トートがどんなに頑張っても、死神である以上は越えられない壁がある。
なのに、美弥フランツはちょっと「僕だってホントはこう思ってるんだけど表に出せなくてね」って言えばいい。
妖精みたいな顔でも、肉体は人間なので。

尚且つ「人間ずるい!」って文句を一切言うことなく、「死神の自分」として、ひたすら正攻法でのアプローチを続ける珠城トート、応援せざるを得なかった。

さすがの世界の旦那である。

この「ただ」「私が黄泉の帝王というだけで」「何をしても愛されない」を全身で表現する悲しみの珠城トートへの、美弥フランツの氷のような「彼女があなたを愛するはずはないんだ」「なぜならあなたは」「黄泉の帝王!」が非常に噛み合いすぎている。
つらすぎる。泣けてくる。

とにかく、かつてない優しく誠意のあるトートでした。

エンディングで勝ち誇って観客にドヤ顔する系統のトートよりも、こうやって嬉しそうな顔でエリザベートを見るトート、好きなのかも(彩輝トートとか)

彼は妖艶さよりも包容力を感じさせる見た目で、皮肉っぽさやキツさがない喋り方をするので、聞いてるこっちがストレートに受け取ってしまうんですね…。

シシィが不幸になることについても、わりとマジで心配しているように聞こえる。

「自分のもとに来てほしい!」じゃなくて、「そんなに苦しいなら死んだほうが本当に楽になれるのに」「愛するきみを楽にしたいのに」という感情が見えました。

なんなら、ルドルフの前にも「彼女は俺のことも見てくれないんだ…」って気持ちを察し、友達として出てきてくれたように見えてしまった。

だって彼は黄泉の帝王。
死という概念が彼を救う方法って、他にないんですよね。

結果として、死んだおかげでルドルフは念願のシシィからの本気の注目を貰えたワケなので、つまり黄泉の帝王としてはこれは、彼を助けたと言えるのかもしれない。

また愛希シシィは、歴代のシシィでいちばん、トートを見てる時間が少ない気がしました。

シシィって大体、死の存在を認識はしてるけど、受け入れられなかったり、惹かれながらも拒絶したり……みたいなカンジなんですが、愛希シシィ、最後の方までトートを「現象」だと捉えてないだろうか。

彼女が死を見つめてくれるまでそっと、陰で、シシィのために、死として動いてた珠城トートの感情が爆発したのが「死ねばいい!」のタイミングだった。

そして、振り向いて剣を見せるトートを、愛希シシィがハッと見上げた瞬間が、彼女が死を「現象」じゃなく「存在」として捉えたタイミングだった、ような、気がしました。


あと、今回のヴィンディッシュ嬢の扇子の交換、おおおって思いました。
あそこめっちゃよかったですね。

2018.08.25~

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