「中国」とは-我的読後感2021の1

渡辺信一郎『中華の成立』岩波新書、2019年刊

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2年前に岩波新書で始まった「シリーズ中国の歴史」の第1巻。

30年ぐらい前に講談社文庫から出た陳舜臣の『中国の歴史』を読んだことがあるので、

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勝手ながら「おっ!岩波もシリーズとして出すか。それも新書で!」と妙な期待感を抱きながらも、2021年の今年になって、ようやく手にして読みました。

この第1巻のお題は、「中国」とは何か。

冒頭に梁啓超の『中国史』から、国名に関する記述の引用があるが、そもそも彼が生きている時代までは「国名がない」、いままでの「中国」の歴史にあったのはすべて「王朝名」である、というそういえばそうだよなぁ~ということを念頭に読み進めていくと、なんか今までの中国の歴史に関する(日本人向けの)書物と比べて新鮮味がありました。

現在の中国の正式国名はご存知のように、中华人民共和国。

その国名のうち実は3分の2は日本語由来(日本人が作り出した言葉)だということを、以前何かの番組で知ったのですが、そういった複雑さというか妙なることをどう汲み取るかというのも、面白い作業かなと思いました。

第1巻で気に入った・なるほど!と特に思ったのは、

第4章「中国の古典国制-王莽の世紀」で述べられてあった天下観念、生民論、承天の世界観(pp.110-118.)。

生民論・承天論が清朝までの基盤となる「中国」における世界観であり、「天下は天下の天下」(p.113)という絶対的な公共空間を作り出し、そのもとで、天下と生民とを統治・・・皇帝は天子であること、その皇帝が専制政治を行うは正当であるとする政治イデオロギーがどう構築されてきたのかという点がわかりやすく記述されていたので、今まで読んできた古代中国から現在中国に至るまでの歴史的連綿が、私の脳内ですごくよく整理できたぁと満足しました。

やはり「中国」を歴史として語るには、皇帝は欠かせないものです。なので、思わず「皇帝になるにはどうすればいいのかな」と万万が一そんな機会に巡り合う(合うかいッ!)ようなことになったら、失敗にしないためにも、

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これを読んで、しっかりと予習しておかないと・・・と思いました^^

閑話休題。

皇帝は天子であると、皇帝=天子みたいに理解されますが、最後の王朝・清においては、多種民族を統合したという背景があることから、君主の称号を「皇帝・天子・カーン・金輪聖王」の4つを支配下にある諸種族の文化的歴史的特性に合わせて使い分けしていた、とあります(p.225)。

ちょっとした多文化社会じゃないか・・・共生しているのか牽制しているのかは議論があるところですが・・・時代の先端を行っているねぇ~なんて思ったりして。

2021年読み始め&初読後感でした。

この「シリーズ中国の歴史」は全5巻です。すでに第2巻も購入したので、全巻読破して楽しもうと思います。

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