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工芸とデザインと先端技術の関係に関するメモ書き

僕のメモ帳にあった走り書きを、いつか書きたいと思っている文章のためにコピペ保存したものです。

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クリエーターにとって工芸とは、自らの出自を知り学ぶための有効な手掛かりだと思う。異なる文化と仕事をする時に慣習ではなく、無意識からくる美意識やバランス感覚にそれぞれの出自が出る。

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工芸は、その土地での風土や文化や生活、さらには流通や政治まで多様な背景を元に成立・成熟していく事が多いため、造形感覚という個人に由来するものに思える部分に影響をもらたした根源的な背景を知るに適している。それはこれから尚更に画一化されていくであろう社会に対し多様性を保つために必要な情報が埋め込まれたモノや技のかたちをしたデータベースなのである。

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テクノロジーとは技術を指す言葉である。それを切り口とすると工芸はテクノロジーの塊である。ただ、テクノロジーを一般的な印象論として先端技術として捉えた場合は、かつての先端技術であったとは言えるが、停滞と諦めが重なってしまっている部分は大きい。何故ならテクノロジーとは基本的に効率化と合理化を成果としてもたらす事が多い。となると工芸が持ち得るテクノロジーをより合理化し効率化した結果が先端技術にはある。合理化と効率化の過程で削ぎ落とされてしまったものが何なのかを正しく理解できれば工芸は先端技術に劣るものではないし、先端技術をうまく取り入れるべきと思う。そして逆に先端技術は工芸に学べる事も多いと思う。

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工芸と先端テクノロジーは、祖父母と孫のような関係はあるかもしれない。生きている時代は同じでも吸収する対象が余りに違うのだ。祖父母がいるからこそ孫がいる(今後は違うかもしれないがw)ように、そして祖父母も孫から多くの影響と、孫と過ごす同時代を視点は違えど楽しめるようになるし、それこそテクノロジーがそれぞれのコミュニケーションを維持する事も多い。祖父母と孫との理想の関係を想像してみると、それが工芸と先端技術の理想の関係に置き換えれるのではないかと思う。

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少なくともデザインも工芸も素材を正しく理解し、適切な技術でもってカタチづけていくことにおいては同じだと思う。過去に遡りながら今をさぐるという工芸と、今を探りながら未来を描こうするデザインが大きな差異ではあろう。工芸がより未来を意識するために、デザインがより過去から学ぶためには、共にじっくり向き合う事でうまれる新しい価値観は必ず合うと思う。

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多くのデザイナーが工芸分野とのコラボレーションをしているが、関わる時間の短さや回数の少なさが大きな理由だろうが、工芸のもつ技術や素材の特性を活かし切らず、カタチのバリエーションづくりに留まってしまっている事例をたた目にする。ただ、これは全て僕らのようなプロデューサーの力不足に原因があるケースも多い。
どの様にしたら、双方の理解を深める事が出来るのかが課題であるが、そこが成し得たときとても深い新しいモノやコトが生まれると思う。