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姉とわたし⑩_初めて優しくされた(ような気がする)日

幼い頃の試練と言えば?
はい、せーの!
「乳歯からの卒業」!
「ありとあらゆる飲み薬」!
「自転車の練習」!
はい、ばっちり合いましたね。
ご唱和ありがとうございました。

まず、歯を抜く恐怖って、まあある程度逃げられるじゃないですか。
(あまりに抜かずにいると永久歯がガッタガタに生えてくるけど)
(だから私ガッタガタだったけど)

あと、飲み薬はね、克服しなくてもいい!
(だから私はいまだに粉薬もカプセルも飲めないけど)

ただ、自転車の練習って逃れられないんですよ。
自然に乗れるようにはならないし、
でも乗れないままだと将来困る可能性が高い。

だから、自転車だけは頑張りました。
以前記事にした通り生粋の運動音痴ですので、時間はかかりましたが。

小学校2年生。
補助輪無しの自転車に乗れるようになってしばらくしたある日。
1つ年下の友達と、家の周りを自転車でブイブイいわせておりました。

とは言えまだ操縦は安定しておらず、友達の後を必死で追いかける状態。
その日は初めて、雑草が生い茂る地帯に足を踏み入れたのですが、
そこは私の歯並びのようにガッタガタの砂利が。
ガッタガタのジャッリジャリ。

(あ、これ私、転ぶぞ絶対。)
と思ったが早いか、
まんまと砂利に車輪をとられ、自転車ごと盛大に転びました。

痛かった。本当に痛かった。

痛みにショックを受け、
膝に刺さった石にショックを受け、
血まみれの足にショックを受け、
転んだという事実にショックを受け、
その年下の友達の目もはばからず、泣いた泣いた。

そのまま自転車を投げ捨て、泣きながら帰宅しました。

帰宅すると、たまたま家にいた姉。
私の惨状を見て、姉、びっくり。
号泣する妹。血まみれの足。刺さった石。

姉は手際よく、
私のひざから石をグッバイし、
血を洗い、
丁寧に消毒し、
絆創膏を貼ってくれました。

私はただただ、痛みと共に、
「お姉ちゃん優しい…」と思った。
本当に、生まれて初めて。
優しすぎて、
感謝よりもむしろ、じわじわと恐怖を感じた。

こ、こんな優しいお姉ちゃん、見たことない…。
どうしちゃったんだいお姉ちゃん…と。

だから、
転んだ時の衝撃とか怪我の大きさとかでなく、
姉の優しさへの衝撃のせいで、
この怪我した日のことをいまだに忘れられません。

…一応確認だけど、
痛がる私を見て楽しんでたんじゃないよね?
「ざまあみろ、いつもわがままばっか言っちょるからや!」と
満足げに膝から石を抜いてたんじゃないよね?

これもまた、真相は闇の中。
(こればっかりやな)

膝にうっすら残る傷跡と同様に、
あの日の姉の優しさへの疑いも
心の中にうっすら残り続けるものと思われます。

おあとがよろしいようで。

***「姉とわたし⑪_次女優遇措置法の発令に際して」に続く。

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