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4月のおはなし

3月。卒業のシーズンですね。新しい門出を迎えていく皆様に、心から祝福を贈ります。
 今日はウン年前の4月の話をします。それは、私がワンダーミュージアムで働くことになって、初めて迎えた週末。
 ぱっちりした瞳の6・7歳くらいのお客様が、自己紹介を述べた私に「ワンダーの新しいひとなの?そしたら、ワンダーのこと、いろいろ教えてあげるね」と言ってくれました。想像もしなかった返答をいただいて、初心者マークのスタッフは、こそばゆくって、とってもあったかいものをもらったような、言葉にならない感覚に包まれました。
 その日の終業後、彼女とのやりとりをスタッフルームで話すと、どうやら、そういう出会いがスタッフそれぞれにある様子。多くの職員が、心強いこどもたちに迎えいれられ、スタッフとして育ててもらっている場所に来たんだなという実感が、更に心臓をギュッとしました。
 お客様で、こどもで、「先輩」で。

 ワンダーミュージアムには『対象年齢』はございません。「たのしむぞ」というお気持ちがあれば、0歳から100歳まで楽しんでいただける。そういう空間を目指しています。けれどお客様の多くは、やはりこども達。そして彼らはいつしかワンダーミュージアム以外のたくさんの場所で、活躍しはじめます。
 私の初めての「先輩」も、いつしかなかなか会えない存在になりました。「先輩」に教えてもらったたくさんのことも、自分の言葉で表現するのにためらいが要らないくらい私の中に染みこみました。
 それでも、今でも。慣れない場所でカチコチのスタッフに、手助けを申し出てくれるお客様がいたこと。当然のようにスッとこの手をとって導いてくれた小さな手。預けてくれる体と想いの柔らかさ、温かさ。それらはひとつ残らず私の中に貯蓄されていて、ワンダー館内を歩く私の胸で光っています。
 先輩、私まだまぁまぁ頑張っています。そのうちまた、遊びに来てね。

 動物園はじめましての赤ちゃんも、お孫さんに連れ添って来たおじいちゃんも、0歳から100歳のお客様の皆様が私にとっては新しいワンダーミュージアムを一緒に見つけてくれる「先輩」です。

 3月は卒業のシーズンですが、ワンダーミュージアムに卒業はございません。遊びに来たくなったら、その時に遊びに来てください。ここはずっと、遊びにいらしてくださるあなたの場所です。

※このブログは、2022年3月に沖縄こどもの国ゆんたくコミュニティにて掲載されたものを再掲しています。

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