愛玉子(オーギョーチ)

 NHK朝ドラ「らんまん」第22週のサブタイトルは「オーギョーチ」。主人公・槙野万太郎は日本の植物学者・牧野富太郎がモデルだ。第109話では、日本統治時代の台湾へ植物調査に派遣された槙野が「台湾で愛玉子(オーギョーチ)に命を救われ、日本に持ち帰った」と話すシーンがあった。
 台湾に行ったことがある方ならば、市街地の小吃(シャオチー)店や夜市の屋台で「愛玉」や「愛玉氷」という文字を見かけたことがあると思う。台湾で「愛玉」は、中国語読みの「アイユー」の名で親しまれ、暑い夏にはぴったりの消暑の食べ物として、人々の生活に根付いている。日本で定着している「オーギョーチ」の読みは、台湾語読みである。
 愛玉子は、台湾特有のつる性植物で、山間に自生している。イチジクのような実を割ると中にゴマのような種があり、乾燥した種を布袋に入れ、水の中で揉むとヌルヌルとしたものが出てきて、水の中でカルシウムと結合し、ぷるぷるの飴色のゼリー状に固まる。ゼリー自体は無味なので、甘いシロップをかけて味わうのである。
 台湾では清朝より食べられてきている。「愛玉」というかわいらしい呼び名の由来は、『台湾通史』の「農業志」によれば、愛玉子の実を水の中で揉むと固まる性質を発見した、主(あるじ)が愛娘の名前の「愛玉」にちなんでつけたものだとされている。
 朝ドラの影響で台湾発の愛玉子デザートがタピオカミルクティーに継ぎ、日本でもブームになってほしいと思うが。  

(辺野喜 陳 宝来)


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