阿里山コーヒーを沖縄へ

 先日、那覇市内で開催された「嘉義(かぎ)プレミアムコーヒー交流会」に参加した時、台湾の嘉義県のコーヒー生産者に淹れたもらったペーパードリップコーヒーを堪能した。芳醇な香りが漂って、まろやかでフルーティーな味わいだった。ドリップコーヒーの個包装のデザインはユニークで癒される。
 嘉義県は台湾の南部に位置し、北緯23.5度の北回帰線が通る。有名な観光地の阿里山(ありさん)は1年中雲と霧に包まれている。昼夜の寒暖差が大きい上、水はけもよいので、お茶の産地として有名だが、近年はコーヒーの生産地としても注目されている。
 台湾でコーヒー栽培が始まったのは、1895年の日本統治時代になってからだ。日本人が外国からアラビカ種コーヒーを輸入し、北部で試験栽培に成功した。その後、本格的に栽培し、当時は東アジア最大のコーヒー栽培地にまで成長した。大正天皇に献上した歴史もある。
 輝かしい歴史を持ちながらも、戦後は時代に翻弄され、コーヒーは台湾の人々に忘れられる存在となった。しかし、1999年9月21日、南投県で発生した大地震を契機に、コーヒー栽培が復活したのである。地震による大規模な土石流の発生した原因は、檳榔(びんろう)樹栽培が原因だとわかったからだ。
 台湾は通称コーヒーベルト(北緯25度、南緯25度)に位置し、コーヒー栽培に適している地域だ。震災後、台湾の中部から南部では、コーヒー植樹に力を入れることにした。その中でも嘉義県は優良な地理的条件を有し、良きお茶を作る場所は良きコーヒーを作ることもできるというコンセプトをもとに、瞬く間に名が売れた。
 交流会では、嘉義県の翁章梁知事がコーヒー生産者の9農家を引率し、来県した。彼らは五つ星クラスと認定されている。県内のコーヒー生産者や販売関係者や愛好家たちとの交流を通して、阿里山コーヒーの風味を紹介し、PRをした。その場で、嘉義県珈琲産業発展協会と沖縄コーヒー協会は、今後の交流促進に向けての覚書を締結した。
 阿里山コーヒーは、阿里山で暮す原住民「鄒(ツォウ)族」が中心となって、栽培を行っている。その中でも「コーヒープリンス」と呼ばれる、鄒族男性が丹精を込めて作ったコーヒーは、数多くの賞を受賞しており、国内外で知名度をあげている。今後、酸味と苦味が抑えられ、「フルーティーさ」が魅力の1つである阿里山コーヒーが県内でも愛飲されることを願う。

(辺野喜 陳 宝来)

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