支援事例「経営者保証を解除したい」
令和 3 年 11 月 21 日 沖縄タイムス経済面掲載
専門家交え解決策探る
◆ 企業名 A社
◆ 業 種 食品加工業
◆ 所在地 本島中部
◆ 資本金 非公表
◆ 創 業 非公表
◆ 従業員 13人
【相談】
相談者(68歳)は県産品を扱う食品加工業を30年営んでいる。3年後を目途に事業承継を検討しているが、後継者候補の長男は、多額の借入金に対する経営者保証も継がながければならないため悩んでいる。
【回答】
経営者の長男は、大学卒業後に東京の会社へ就職し、そこに家庭もある。当初は後継者として事業を引き継ぐことに難色を示していたが、帰省した時に父親の会社への思いを伝えられて承継を真剣に考えるようになった。しかし、家族もいるため、本人だけではなかなか決断できない。特に大きな問題点が、銀行からの借入金8千万円の保証人の引継ぎだった。
事業承継においては経営者保証が障壁となって進展しないケースが多い。国もこの状況を重く受け止め、事業承継に焦点を当てた「経営者保証ガイドライン」の特則を策定し、2020年4月から運用している。その中で新旧経営者による二重保証を求めることを原則禁止し、金融機関等には本特則に即した対応を促している。
それに準じて国の支援機関である県事業承継・引継ぎ支援センターに経営者保証の解除を支援する専門コーディネーターが配置され、金融機関との調整役も担っている。経営者保証の解除には一定の財務的要件があり、全ての事業者が解除できるわけではない。その場合でも条件をクリアするためのアドバイスをしてくれる。
早速、相談者の了解を得て、同センターの専門コーディネーターに連絡を取り、連携支援にあたった。決算資料等に基づき経営者保証解除のための要件をチェックしたところ、財務面での課題がいくつか見えてきた。
次の相談からは東京の長男にもリモートで参加してもらい、経営者保証の解除についての相談以外にも、事業承継全般における課題を整理することができた。
現在は、それらの解決策を見いだすべく、当拠点の他のコーディネーターも加わり、具体的な進め方を話し合っている。長男も積極的に議論に参加し、相互のコミュニケーションも活性化してきたので、相談者にも笑顔が見え始めた。
事業承継する上で、後継者が安心して継げる道筋を示すことも現経営者の大きな役目である。当事者では気づきにくいことも多い。専門的な知見を持つ第三者を交えて話し合うことも有効なので、相談することをお薦めしたい。
(県よろず支援拠点コーディネーター・大城剛)
※経営者のあらゆる相談を無料で受け付けます。ご相談は電話098(851)8460の県よろず支援拠点、またはお近くの商工会へ問い合わせください。
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