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資金繰り支援から再生支援へ

沖縄海邦銀行 かいぎんエコマガ 令和 6 年 3 月号掲載「課題解決室 Vol.155」

県内では基幹産業である観光の回復による売上増加が見られる一方、物価高騰や人手不足等による人件費上昇により、企業利益は圧迫されている。コロナ禍でのゼロゼロ融資等の関連債務は増加しており、返済原資が確保できない事業者は多い。昨夏に続き 4 月には返済開始の 2 度目のピークを迎えようとしている。

休廃業・解散が過去最高に


 1 月 25 日の地元紙 2 紙が一面で報じた記事は、予想されていたとは言え、ショックを覚えた。東京商工リサーチ沖縄支店が発表した 2023 年の「休廃業・解散 最多 429 件」の数値である。倒産件数も 40 件で、コロナ関連倒産は 23 件、前期より 6 件増えている。ゼロゼロ融資等の金融支援や借換制度等の国・県の支援が継続している中、経営悪化がまだ表面化していない企業は少なくない。
 よろず支援拠点に寄せられた資金繰り相談も 23 年は約 500 件と過去最多になっている。相談者は全業種に及び、物価の高騰や賃上げ圧力の中、価格転嫁や DX による生産性向上にいまだ辿り着けない中小企業の経営難が見て取れる。コロナ関連融資を受け、コロナ禍を凌いできた事業者は、返済原資が確保できない環境下で債務が増加し、金融機関から新規資金調達が厳しい状況にある。

延命のための止血と輸血


 コロナ禍に直面したとき、国と県もわれわれ支援機関もまず「資金繰りの維持」を軸に、企業の延命を支援してきた。コロナ関連融資の返済開始が始まったものの、経営環境は厳しさを増している。事業者はニューノーマルの経済社会の中で、新規事業も含めた事業再構築等による収益源を確保していかなければならない。そのためにも新規融資等の「輸血」は必要である。だが、その前に「止血」をしなければ出血多量で持ちこたえられない。
 事業者が廃業を選択せざるを得なくなる前に、経営改善と事業再生への選択肢があることを提示して、存続と再生の道があることに気付いてもらいたい。その道を示す役割が国・県はもちろん、金融機関や支援機関にはある。コロナ禍の資金繰り支援のフェーズから再生支援のフェーズへと踏み込んでいかなければならない。

中小企業活性化パッケージ


 2022 年、経済産業省中小企業庁は財務省金融庁とともに、中小企業活性化パッケージを策定、再生支援協議会を再編拡充して中小企業活性化協議会を設立、併せて中小企業の事業再生等に関するガイドラインを策定した。目的は資金繰り支援の継続と中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの促進である。未曾有の災害と言えるコロナ禍で打撃を受け、今なお経営難にある中小企業の「稼ぐ力」を再建し、増段する債務への対応を支援し、破産を回避して再生を図る狙いがある。これらの一元化した支援体制は一つ二つの支援機関でできるものではない。

地域における連携支援の最大化


 去る 2 月 5 日に「コロナ後の中小事業者再生支援の現場から」と題して沖縄県地域支援機関連携フォーラムを開催した。国・県をはじめ県内支援機関が共催し、弁護士会・税理士会等の後援で、全金融機関をはじめ約 150 人の参加を得て実施。中小企業活性化パッケージ等の制作の企画立案に携わった元中小企業庁金融課の横田直忠弁護士の基調講演と、県中小企業活性化協議会の大島優樹弁護士、宮崎県よろず支援拠点の長友慶徳弁護士、県税理士会の金城達也税理士、県信用保証協会の吉田俊明部長、板橋区立企業活性化センターの中島修センター長らのパネルディスカッションをよろず支援拠点の絹川恭久弁護士の進行で論点を深め整理し、提示した。
 県外からの参加者から、沖縄だからできると言われた、まさに地域ぐるみの支援の最大化を図り、中小企業の相談に対応する体制が構築された。
 再生支援は資金繰りが窮してからでは遅い。経営状況が危ういと感じたらすぐに相談してもらいたい。

詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12688478.html


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