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支援事例「孫に払うバイト代経費になるか」

令和 6 年 7 月 21 日 沖縄タイムス経済面掲載

要件満たせば計上可能

 ◆ 企業名 H社
 ◆ 業 種 飲食業
 ◆ 所在地 非公表
 ◆ 資本金 非公表
 ◆ 創 業 非公表
 ◆ 従業員 非公表

【相談】
 両親が創業して営んできた飲食店を娘夫婦が手伝い、今後事業を引き継いでいく予定である。忙しい時は孫たちも手伝うのでアルバイト代を支払いたいが経費とできるのか?また、今後は法人化も検討していきたい。

【回答】
 原則として、個人事業主が生計を一にする家族に支払った給与は経費とはならない。しかし適切な手続きを行い、一定の要件を満たすことで、特別な取り扱いができる制度が設けられている。事前に届け出を提出することで実際に支払った給与額を経費として計上できる「青色事業専従者給与」、事前届け出は不要で一定額まで控除が認められる「事業専従者控除」がある。
 どちらもその年を通じて6か月を超える期間その申告者の営む事業に専ら従事していること(例外あり)、その年の12月31日現在で年齢が15歳以上の者という適用要件がある。今回の相談者のように社会人や学生で本業をもち空いた時間に手伝っている孫への給与は専従者の要件を満たさず、必要経費としての計上や控除の対象とはならないので注意が必要である。
 一方、法人化した場合、家族に支払った給与はそのまま法人経費として計上できる。労働の実態があるか、給与の金額が労働に見合っているか、その家族が行う仕事を家族以外の第三者が行う場合に同じ額を支払えるかという点は、家族への給与額を決定する際のポイントとなる。不当に高額とされた場合は追徴課税等が発生するため注意が必要である。
 相談者の娘さんご夫婦は自分たちが引き継いだ後は法人化も視野に入れているが、法人化の良しあしは目的が何かにより異なってくる。法人化により税負担が軽減される目安は所得が800万円となるころである。社会的信用の向上、経費範囲の拡大など法人化はメリットも大きいが義務や責任、必要運転資金の増加に対応する必要があり判断は慎重に行わなければならない。税負担が一番少ないことが事業者のベストとはならない場合も多くある。
 地元の方たちに長く愛されてきたお店を営む相談者は、コロナ禍を乗り越え、親から子へ事業のバトンを渡していこうとしている。税負担の軽減だけではない、将来を見据えた多角的な助言が行えるよう、今後も引き続き支援を行っていきたい。
(県よろず支援拠点コーディネーター・税理士・友寄亜由子)

※掲載内容は相談者の承諾を得て紹介しています。経営者のあらゆる相談を無料で受け付けます。ご相談は、電話098(851)8460のよろず支援拠点、またはお近くの商工会へお問い合わせください。

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