見出し画像

未曽有のコロナ禍と金融機関の役割

画像1

かいぎんエコマガ(ecomaga) 2021年3月号 vol.192 P.14 掲載

新型コロナウイルス感染症の世界中での拡大で、沖縄社会もまたその災厄に見舞われ、県民生活を直撃し、地域経済を支える中小企業の経営を圧迫しています。この未曽有の災厄に対して金融機関を中心に地域ぐるみの対応が求められます。

コロナ禍関連相談の急増

 新型コロナウイルス感染症が県内で確認された昨年2月から今年1月までの1年間で、沖縄県よろず支援拠点には新型コロナウイルス関連の相談が4596件ありました。これはこの期間の全経営相談件数9860件の46.6%に当たります。相談者は県内のほぼすべての業種に及んでいます。最初は海外物流が停滞したことによる貿易業関係からの相談でしたが、インバウンドをはじめ来県する観光客の激減により、観光関連の運送業、宿泊業、飲食業、卸・小売業へと拡がりました。さらに食品製造業から農漁業、不動産業や建設業まで深刻な経営危機に見舞われています。
 昨年前半の相談内容の多くは、売上現象に伴う資金繰り相談や雇用維持に関する相談が大半を占めました。多くの中小企業が持続化給付金や雇用調整助成金等の公的支援、無利子無担保のセーフティーネット融資制度や特別貸付等の活用で当面の手当てを行いました。

返済据置終了で相談内容が変化

 夏から秋にかけて増加し続けてきた毎月の相談件数が昨年10月の1018件をピークに減少に転じ、12月には6月レベルの833件まで下がりました。しかし、今年に入ってから再び増加に転じて1月は880件に増えています。これは私たちが危惧していた通り、昨年前半にコロナ関連融資を受けた事業者が、売上が上がらない中で手元資金が底をつき、元金返済の据置期間が終了、または間近に迫っているためと思われます。
 「アフター・コロナ」という言葉に象徴されるように、当初は数カ月でコロナ禍が収束するとの見通しが大方の見方でした。しかし、肝心のマーケットの回復はいまだ見通せず、事業の存続が危ぶまれる事態に直面しています。相談内容も資金繰りや売上回復から、事業再建や業種転換、休廃業や解散含みの深刻なものへと変わってきています。

ウィズ・コロナの事業再構築

 観光が基幹産業の県経済ですが、観光客数が昨年は対前年比63.2%減少しています。前年度に7500億近くあった観光収入が6割減少するにとどまらず、景気の悪化が全産業に及ぶことになります。日本銀行那覇支店は景気の先行きを「下押し圧力の強い状況が続く」としつつも、ワクチンの開発や接種開始により「景気の持ち直しも期待できる」としています。一方、内閣府の景気の先行指数(数カ月先の景気)は悪化したままです。
 よろず支援拠点では昨年前半から「資金繰りと同時に売上拡大対策」を呼び掛けてきました。宿泊・飲食業のネット販売や他業種への展開、観光サービス業の業態変更、新規の販路開拓等々、事業の再構築を支援してきました。

金融機関の支援が不可欠

 今、必要なのは地域ぐるみで多くの県民の生活と県経済を支える中小企業・小規模事業者への支援です。よろず支援拠点はこれまでの知見と経営者目線のアイデアで事業再構築を支援しますが、事業再建には一定の時間がかかります。そのため金融機関の再リスケへの柔軟な対応や追加融資等の金融支援が必要不可欠です。地域経済を支える「リレーションバンキング」としての役割を今こそ発揮していただくことを期待しています。

詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e11851013.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?