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No.555 花言葉「独立」「報復」「厳格」「触れないで」の主は?

日本の国花は、「桜」?「菊」?いえ、どちらもでしょうか?ブラジルの国花は「イペ」(イペー、イッペイ)で、その明るい黄色は、あのサッカーのユニフォームの色でもあります。我が家のすぐ近くの個人経営の魚屋さんの庭に、何とこの木があるのですが、4月の終わりから5月の初めごろに短い間咲く花です。丈は4m以上です。では、スコットランドの国花は何でしょう?それが、この季節、道端や土手に咲いている「アザミ」だそうです。
 
♬山には山の 愁いあり     
 海には海の 悲しみや     
 ましてこころの 花園に    
 咲きしあざみの花ならば  
 
「あざみの歌」は、1949年(昭和24年)にNHKのラジオ歌謡で発表された曲だそうです。「♪うるわしき さくら貝ひとつ~」で始まる「さくら貝の歌」で知られる八洲秀章が作曲し、「下町の空に かがやく太陽は よろこびと 悲しみ写す ガラス窓」と書き出した「下町の太陽」の作者・横井弘が作詞しました。
 
その横井さんが、戦後に転居した長野県下諏訪で、自然散策をしながら数編の詩作をしたうちの一編が、八島ヶ原湿原での「あざみの歌」だったといいます。八島ヶ原湿原とは、長野県の霧ヶ峰にある標高約1632mにある高層湿原です。その八島湿原にある町立のビジターセンターは「あざみ館」と命名されているほどです。
 
アザミという名前は、古語の「あざむ」に由来するとされています。「欺(あざむ)く」「驚きあきれる」「興醒めする」などの意味がある言葉で、美しい花だと思って手を出したら棘に刺され、「欺かれた」と思い、「驚きあきれ、興醒めした」という説明がありました。野生の植物は、生きものたちとの生存競争があります。保身のための棘でしょう。


その昔といっても10世紀ごろのお話だそうですが、スコットランドとデンマーク(ヴァイキングか?)が戦争をしていた時に、砦にこもったスコットランド軍に夜襲をかけて忍び込んだデンマーク兵が、アザミの硬い棘で足を刺され倒れているのをスコットランド兵が発見し、とらえて尋問したことで敵の作戦を知り、スコットランドが戦争に勝利したといわれています。又、別の解説では、デンマーク兵士が、アザミのトゲを踏み、その痛みに耐えられず、思わず叫んだところ、夜襲が露見して負けてしまったといいます。
 
以来、スコットランドでは、アザミが国花になっているといいます。スコットランドの王家の紋章にもアザミが採用されており、国を守った大切な花として尊ばれている事を知りました。王冠にも似たアザミの花の形です。

子どもの頃に段々畑のある山村で育った私には、初夏から夏にかけて咲くこのアザミは馴染みの花です。アザミの花と言うと、ミツバチや蝶とのツーショットが思い浮かびます。飼育していた牛が、道端や田圃の畔に咲くこのアザミを好んで食べました。棘があって食べにくいだろうと思われましたが、実に器用に舌に巻くようにして食べていました。

アスファルトばかりの街中では、なかなか見られない花になってしまいました。近くには、地元の農家の耕す畑があり、また、川が流れており、土手もあるので、昔ながらの四季折々の風景が見られることをありがたく思っています。梅雨のさなかのアザミも乙なものです。

「あざみあざやかなあさのあめあがり」
種田山頭火 『草木塔』