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No.666 ココロ躍ったメモ書き

下駄箱に乾ききったゴキブリが隠されていたことはあっても、ラブレターの隠されていたことはありません。そんな男に、不似合いな感動が待っていました。
 
数年前の今頃、1週間後に迫った県下の高校弁論大会出場予定者からアドバイスを求められ、久々に古巣の高校の玄関に靴を脱ぎました。
 
1時間半後、帰る段になって、玄関の靴を履こうとしたら、小さな書き置きメモが靴の中に忍ばせてありました。ん、不幸の手紙か?脅迫状か?とても艶なる付け文のようには見えません。思わず周囲を見回しましたが、生徒の姿はありません。
 
「先生へ!お久しぶりです。つい先日、先生の毎日新聞を家で読み返して、懐かしいなーと思い出にふけっていたところです。」
 
数年前に中学生だったY子も、その時は高校2年生でした。花も恥じらう乙女に成長していることでしょう。きっと、そうでしょう。間違いなく、そうでしょう。その彼女が、私をどこかで偶然見つけ、ノートを千切って走り書きしたのでしょうか、勢いのある字でした。そして、私の靴の中に置いたまま下校したのでしょう。サプライズとして…。
 
学校を出たのは午後8時過ぎの事でしたが、弁士からの依頼のお蔭で、こんな感動に出合い、実のカミさん以来の「ココロトキメキ」を味わうことが出来またのです。筆を折らずに通信を書き続けて良かったなとも思いました。
 
さて、練習熱心な弁士生徒は、出場した弁論大会で優秀1席(第2位)に入賞したことを、後日、ご指導の先生から伺いました。二人三脚での頑張りが目に浮かぶようでした。
 
その喜びとともに、学びの中に「気づき」と「成長」があったことを教えてくれた、あのメモ書き少女Y子の優しい心を懐かしく思い出しました。心が躍ったあの夜のことを。

※画像は、クリエイター・大水音々さんの、タイトル「紙と鉛筆」をかたじけなくしました。今日のコラムのお話にぴったり。お礼申します。