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No.1014 どうかしてる!

今から115年前の1908年、エリザベス・モンゴメリは普及の名著と言われる『赤毛のアン』を世に送り出しました。カナダCBCとNetflixによって共同製作された『アンと言う名の少女』シーズン3の第9話・10話(最終回)の再放送(NHKプレミアム)が近づいています。
 
9月25日には、第8話「突然おとずれる変化」が放映され、カナダの原住民の子どもたちが寄宿学校で不条理な扱いや迫害を受けている実態に迫った映像がありました。寄宿学校から脱出して、遥かに海を越え野山を越え線路を伝い、命からがら部族の家に帰り着いた先住民の少女カクウェットでした。
 
次週の第9話「深遠なる闇」で、寄宿学校から脱出したカクウェットは、この先どうなるのか?また、ギルバートとアンの互いに惹かれながらもすれ違う想いはどうなるのか?さらに、最終回となる第10話「心の導き」で、ギルバートとアンの恋の行方は?そして、アンの親友カクウェットの運命は?何度見ても、ハラハラドキドキの展開です。

カナダでは19世紀から1990年代まで、政府とカトリック当局が先住民の子どもを親元から強制的に引き離し、各地の寄宿学校で生活させた。学校は139カ所にも上り、伝統文化や固有言語の伝承を絶つ同化政策を進めた。対象となった子どもは15万人以上で、学校では暴力や性的虐待、病気や栄養失調が多発したとされる。

東京新聞Web(2021年7月8日)より

西加奈子さんの小説『くもをさがす』は、カナダでがんになった作者自身の体験談をもとにした作品ですが、当時のカナダ政府がとった先住民の子どもたちへの「同化政策」ついても触れています。

 カナダは、もともと先住民族が暮らす場所だった。
 イギリスからやってきた白人が、彼らの土地を奪い、カナダという自分達の国を作った。
 先住民族の子供たちは親から引き離され、カナダ人の同化政策の下で、寄宿学校に送り込まれた。学校では母語を話すことや民族的な文化活動を行うことを禁止され、教師や牧師による虐待が行われた。2021年5月には、ブリティッシュ・コロンビア州カムループスの寄宿学校跡地で、3歳児を含む215人の子供たちの遺体が発見された。そして翌月、サスカチュワン州の寄宿学校跡地から、無記名の墓が新たに751基発見された。
 寄宿学校の記憶を持つ生存者はPTSDに苛まれ、その痛みは子供たちへ引き継がれる。彼らは適切なケアも受けられず、苦しい暮らしを余儀なくされている。その苦しみから逃れるために、どうしようもなくアルコールや薬物に頼る人もいる。

西加奈子著『くもをさがす』(河出書房新社、2023年4月刊)P106~P107より

ここには、カナダと言う国の犯した闇が子供たちの遺体と共に埋められていました。その全貌が明らかになるには、まだ時間が必要かもしれません。正しさを説き導くはずの教師や、牧師や、シスターや、ナースが行った非道は、多くの犠牲を産んでもまだ飽き足りない人間のエゴがもたらしたものでした。

日本も戦争統治下に皇民政策や同化政策を行った植民地支配があったのではないか、計り知れない愛憎と恩讐が歴史の中から生まれたことを忘れてはならないと思います。


※画像は、クリエイター・みど〜ゐんさんの「アンという名の少女」の1葉をかたじけなくしました。みど~ゐんさんが、想像の翼を広げて描いた何枚ものアンの画像の内の1枚です。心よりお礼申し上げます。