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No.1351 願いましては…

先日のコラムで、トップ画像に「カバン」の写真を用いた時に、ふとカバンを背負った少年のひと昔前のテレビコマーシャルが思い浮かびましたが、名前を思い出せません。たしか、算数の「+、-」があったような?なかったような?
 
ネットで探してみたら、2012年(平成24年)に発表された「おもいやり算」というCMだとわかりました。30秒ほどの間に目まぐるしく幾つもの場面展開があるので、CM画像を繰り返し見て、文字にしてみました。
 
①ランドセルを背負って歩く少年の姿から物語は始まります。
 
②ふと少年が目をやると、杖を突きながらたどたどしくバスを降りようとするお婆ちゃんに手を差し伸べて手伝う女性と少女がいました。「ありがとうございます!」と老婆。画面に、
 『+』たすけあう
 の文字が浮かびます。
 
③次に、少年の目には、歩道橋の階段で片手に赤ん坊を抱き、ベビーカーを持ち上げて階段を上ろうとする女性に代わって、重そうな荷物を肩に掛けた男性がベビーカーを持って上る光景が映ります。
『-』ひきうける
の文字が浮かびます。
 
④さらに歩いてゆくと、公園のベンチで泣いている子ども(男子?女子?)に優しく寄り添いながら話しかける女性の姿が目に映ります。
『×』声をかける
の文字が浮かびます。
 
⑤そのうちに、ポツポツと雨が降ってきました。少年の前に雨に濡れながらうつむいて歩く黄色いカバーの鞄を背負い、黄色い帽子をかぶった少女がいました。その姿を見た少年は駆け出し、自分の持っていた傘をそっと差しかけ、少女を中に入れてあげました。少女の笑顔がたまりません。
『÷』わけあう
の文字が浮かびます。
 
⑥最後に、こんなナレーションが入ってCMは終わりました。
「それは人を笑顔にする算数。思いやり算。ほら、やさしいでしょ?ACジャパン」
 
カバンの少年は、いろんな大人たちの「思いやり」や「優しさ」を見るうちに、自分の心の中にも「親切な気持ち」が生まれ、少女に傘を差しかけます。心を形に表す小さな心の成長が、見ている者の胸を打ちます。あらためて温かみと気持ちよさの溢れるCMだったんだなと感じ入りました。それはACジャパンの広告で、制作は仙台博報堂(現、東北博報堂)とありました。
 
私の身近で、バスの中でお年寄りに席を譲った高校生が、老人から「年寄扱いするな!」と一喝された話は、実話として聴いたことがあります。人それぞれでしょうが、親切が必ずしも通じない場合があり、通じない人がいるということを彼は知ったようです。声を掛け、身体を動かしたからこそ、そんな残念な思いもしましたが、それも彼の手柄だったと思います。
 
ACジャパンは、こんなコメントを残していました。
「思いやり」は、行き過ぎればおせっかい、何もしなければ無関心になってしまう。作品では、その難しいテーマを、算数の四則をアイデアに「おもいやり算」を使うと、誰もが笑顔になれると提案しました。
◆第66回広告電通賞 テレビ公共部門 優秀賞
◆第53回消費者のためになった広告コンクール 雑誌広告部門公共広告ブロック 金賞
 
今から12年前にこのような広告が受賞するという社会が、健全だったのかどうか、気にはなるところですが…。
 
そして、気になると言えば、先のフランスオリンピックで出場選手に対する心無い中傷がSNSで行われたこともそうです。オリンピアンに対する誹謗中傷が匿名によって堂々とおこなわれること(匿名だからこそ堂々と?)は、やはり、成熟した者の仕業ではないように思われます。「思いやり算」は人が存在する証、人だから弾ける優しさの算盤。
願いましては…。


※画像は、クリエイター「だいごう先生@noteそろばん教室🎈一人でも多くの人にそろばんを知ってほしい!」さんの、タイトル「はじめてのそろばん🧮一番最初に習う事とは?」の1葉をかたじけなくしました。今は、このようなカラフルな算盤もあるのですね。お礼を申し上げます。