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No.617  ハ行の男

漢和辞典で有名な大修館書店が画期的な国語辞典作成に乗り出したのは、もう10年以上も前のことだったと思います。
 
「『もっと明鏡』大賞 みんなで作ろう国語辞典!」というのがそれです。全国の中学・高校生を対象に既存の国語辞典に載っていない言葉とその解説を募集するものです。生徒自身に辞書編集者の立場から面白さや難しさを体験してもらって、辞書を肩肘の張らない身近で楽しいものにしてもらおうというのが狙いのようです。その手があったかと納得したり驚嘆したり…。
 
その具体例として、こんなのが挙げられていました。
「あぎょう」=彼女を欲しがる男(あ行=あいうえお→愛、飢え男)
 
もう笑っちゃいました。柔らかすぎる言葉の解説に腰を抜かさんばかりの私ですが、若者の魅力的発想が全開で、手に取って読みたくなりそうな辞書の予感です。
 
さて、融通は利くがミスがあるのと、融通は利かないがミスをしないのとでは、どちらを評価しますか?在職のころ、我が敬愛するA先生からメールがありました。ところが、互いの話が噛み合いません。某先生から、
 「ありゃ~、やっぱり…!前回、今回とメールを送信しましたが、字数超過のサインがあったんだけど…。どうも、不通だったんだね。」
との返事。我々は、気短な者同士、ショートメール派です。
「A先生、文字数の超過は、受験生なら減点対象ですよ!」
と送ったら、
「浪人して、再受験します!」
とすぐ返信が来ました。
 
そして、間もなく、
「は = 半歩でもいい
 ひ = 一つでもいい
 ふ = 普通でいい
 へ = 平凡でいい
 ほ = 本気であればそれでいい」
と追伸が届きました。深イイけれど、笑えます。文明の利器はミスをしませんが、融通は利きません。そのお蔭で、私は何度もA先生とのやり取りを楽しむことが出来たのです。
 
「はひふへほ~!」と言いながら、二つの角の付いたUHOに乗ってやってくるバイキンマンとは、ちょいと趣きが違いますが、私はA先生を
「ハ行の男」
と呼んでいます。