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No.743 サンタさんやーい!

2年前に1度書いた「サンタ苦労す」の、ちょっとだけリメイク版です。

子どもたちが夢見がちで幼かった頃、我が家にもサンタクロースがやって来ました。信じる者のところに、サンタは、やって来たのであります。

我が家にやってきたサンタは、子どもたちにも、そして、大人の私にも分け隔て無くクリスマスプレゼントをくれました。太っ腹のサンタの面目そのままに…。

朝、目覚めると私の枕元にネクタイを入れる箱大のプレゼントが置かれていました。
「フフン。サンちゃん、いいトコあるじゃん!」
などと一瞬思いました。しかし、いざ手に取ってみると、意外にも「持ち重り」がするのです。はて、中身は何じゃらほい?

丁寧に紙包みをはがし、箱の蓋を開けてみてギョ・ギョッとしました。な・な・なんと、刺し身包丁が1本「キラリン!」と輝いているではございませんか!
「自刃せよ!」
とでもいう謎かけか?隣で眠っているカミさんのお顔をそっと横目で見ると、心なしか口元が緩んでいるようにも見えます。日頃の「江戸の敵を長崎で討つ」魂胆なのか?

「サンタクロースに、えらいものを貰っちゃったよ!」
とその朝、カミさんに変化球を投げたら、
「きっと『美味しい魚料理を家族に作ってあげてね』ということよ!」
と直球が返ってきました。自刃強要説が消え、喉のつかえが少しおさまりました。

一年間、サンタの思し召し通り、「刺し身包丁」が「のこぎり包丁」になるまで頑張りました。初めのころ、魚を三枚におろすと、猫が骨についた身の多さに狂喜乱舞するほどでしたが、数カ月もすると、猫が骨を跨いで行くくらいに腕が上がりました。
 
その翌年、リクエストしたわけでもないのに、またしてもサンタさんから贈り物が届きました。更に重くなった箱の中には、「砥石」がドンとふんぞり返っておりました。

今となっては、涙なしには思い返せない、鼻の奥がツーンとしてくる実話であります。
 
あれから数十年、サンタさんは、お見限りです。

※画像は、クリエイター・Angie-BXLさんの、タイトル「蔵出し」(あしながおじサンタ)をかたじけなくしました。このサンタさん、世界中で活躍されていることでしょう。お礼申します。