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No.868 「行(ゆ)かしい、奥行かしい」がたまらない!

私のコラム「仁の音」(仁note)には、私なりのささやかなテーマがあります。それは「ゆかしい」お話を綴るということです。
 
「ゆかしい」は古語「ゆかし」が語源で、「行かしい」(行きたい)だそうです。心がそちらの方向に引かれ、見に行きたい、学びに行きたい、食べに行きたい、楽しみに行きたい、聞きに行きたい等々、「~したいよう」「~したいよう」「~したいよう」という「太陽がいっぱい!」な明るい願望の言葉です。
 
その「見たい」「聞きたい」「食べたい」「知りたい」が、さらに「奥ゆかしい」ものになり、「慎み深い」「上品で心ひかれる」「細やかな心配り」などの意味を派生するようです。
 
『枕草子』第154段に「とくゆかしきもの」(早く知りたいもの)のことが、あれこれ書かれています。

本文…「とくゆかしきもの。巻染(まきぞめ)、むら濃(むらご)、くくり物など染めたる。人の子産みたるに、男、女、とく聞かまほし。よき人さらなり、えせ者、下衆の際だに、なほゆかし。除目(じもく)のつとめて。かならず知る人のさるべき、なきをりも、なほ聞かまほし。」

訳文…「早く知りたいもの。巻染(絹または布を巻き、その上を細いひもで固く巻いて染色し、紐で巻いた部分を白く残した染め方)、むら濃(まだらに染めたもの)、着物のしぼりなどを染めた時の仕上がり具合。人が子を産んだ時は、男の子か女の子かを早く聞きたい。身分の高い人は言うまでもないが、身分の低い者、下々の分際であっても、どんな人か、やはり知りたい。人事である除目(官職の任命式)の翌朝。知っている人の今年の任命の可能性がない時でも、やはり(どんな役職・どこの土地に任命されるか)聞きたいものだ。」
 
今から1,000年も前に生きた清少納言も「ゆかしアンテナ」を張り巡らして、身近な些細なことから、国の決める人事に到るまで強い関心を持っていたことが知られます。
 
私のコラムの中に時々使われる「ゆかし」には、そんな気持ちが表れています。そして、興味関心から学びがあり、楽しみが増え、時には、人との心の出逢いという有り難い褒美まで頂戴しているのです。もう、たまりません!
 
Note事務局に、学びや喜怒哀楽を与えてくださる投稿者に、こんなにささやかなものでも見つけてくださった読者のみなさまに、心より感謝しお礼を申し上げます。そして、これからもよろしくお願いいたします。


※画像は、クリエイター・素晴木あい subarasikiaiさんの、タイトル「一足早い春を満喫」(貝合わせ)の1葉をかたじけなくしました。王朝時代の雅なゆかしさがしのばれます。お礼申し上げます。