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No.551 古都で感じた思い出話 その2

京都に滞在中、ホテルは宿泊費が高いので、宇多野のユースホステルに泊まりました。20年ほど前ですが、1泊2食付きで3,000円ほどでした。財布に優しい施設です。
 
2008年に建て替えられた現在のよりもずっと前の建物です。安価なだけあって、2段組みの木製ベッドを両壁に設えた8人用の部屋は、教育合宿所のような趣です。しかも、ベッドはカーテンの仕切りがあるだけで、引き戸の出入り口には部屋の鍵もありません。もうそれだけで、「来る者は拒まず、行く者は引き留めず」という精神が感じ取れました。それでも、風呂で身も心も癒すことができましたし、夕食も、私には満足できるものでした。
 
高校生や大学生や老夫婦の姿もありましたが、やはり、京都という土地柄からか外国人旅行客が多く、リラックスしている風情から、旅慣れ、利用し慣れている感じがしました。彼らは、宿泊以外の所にお金をかけるのでしょう。旅の楽しみ方や、お金の使い方をよく心得ているなと感じた次第です。桜は、まだ蕾の頃の京都でした。
 
ユースホステル(youth hostel)は、1909年(明治42年)にドイツ人教師のリヒャルト・シルマンが創設した、青少年少女の旅に安全かつ安価な宿泊場所を提供しようという主旨で始まった施設だそうです。すでに、110年を超える歴史のある宿泊所です。そして、世界最初のユースホステルは、1912年(明治45年=大正元年)にドイツのアルテナにある古城の一角に開設されたと言われています。日本では、戦後となる1951年(昭和26年)に日本ユースホステル協会が発足され、1955年に、北海道の千歳市に直営一号のユースホステルをオープンしたと説明にありました。
 
その後、高度経済成長や旅行ブームにより、低価格で利用可能なユースホステルが増えて行きました。しかし、低廉のビジネスホテル、インターネットカフェ、カプセルホテル等々の新たな宿泊形態が次々に誕生するにつれて、徐々に減少していったといいます。かてて加えて、コロナ禍による旅行の抑止や禁止の波に襲われ、宿泊者は激減し、大きな打撃を受けていることは否めないと思われます。
 
国際ユースホステル連盟の2017年(平成29年)の統計によれば、世界中に3,510カ所、日本にも194カ所のユースホステルがあったようです。昨今のコロナ事情により、世界的規模でその数も形態も変化してきているのではあるまいかと想像されます。
 
それにしても、ユースホステルでの出会いを通して日本のみならず世界に知人ができるという魅力は尽きません。また、その地域の独自性や個性を生かしたユースホステルの存在も嬉しい話題となっていました。時を超えて息づく精神は、今も健在のようです。

世界中の若者たちは、旅する中から自己形成してゆける春秋に富む行動的な存在です。世界が旅行者を受け入れ、断絶と紛争を乗り越えて、希望のある時代が訪れてくれることを祈っています。