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No.811 優しさと、賢さと、愛を知る

「黄梅」(おうばい)は、中国から渡って来た落葉低木で、庭木や鉢植えなどの鑑賞用として広まったそうです。「迎春花」の異名を持つこの花が、我が家の庭先でも咲き始めました。画像は、その一枚です。その花言葉には、「恩恵」「優美」「気高い」「控えめな美」「期待」などがあり、欲張りさんの花だと思ったのですが、まさにそんな話を聞きました。

昨日、創立100周年を迎える芝浦工業大學附属高等学校(東京都)で卒業式があり、女優の有村架純さんがサプライズゲストとして登場し、祝辞と桜の記念植樹を行ったそうです。
 
このサプライズプロジェクトは、「お~いお茶」の伊藤園が2019年2月に発売30周年を迎えたことを記念し、公益財団法人日本さくらの会と協同して、日本人に古来より愛されて来た春の象徴としての桜を “未来につなぎ、咲かせ続けたい”という願いを込めて卒業式企画にしたものだそうです。粋な計らい、そして、心温まる若者へのエールです。
 
そのお祝いのメッセージを卒業生の前で述べた「控えめで美しい」有村架純さんは、ご自身が通った兵庫県伊丹市立西中学校を2008年3月に卒業した時の校長先生の祝辞を印象深く紹介しました。卒業以降、「恩恵」に浴した言葉だったようです。
「(…略)中学校の卒業式での校長先生の『ありがとうの数だけ人は優しくなれる、ごめんねの数だけ人は賢くなれる、さようならの数だけ人は愛を知る』という言葉を今でも覚えています。この言葉は学生時代だけではなく、どれだけ歳を重ねても大切な言葉だと感じています。(略…)」
 
私は、何てすばらしい校長先生からの贈る言葉だったのだろうといたく感激したのですが、ふと、誰かの名言を伝えようとしたのかもしれないと思いネットで検索してみました。すると、『転校生』や『時をかける少女』などの映画で有名な大林宣彦監督(1938年~2020年)の、
「人は『ありがとう』の数だけ賢くなり、『ごめんなさい』の数だけ優しくなり、『さようなら』の数だけ愛を知る。」
という言葉だったという事を知りました。人間の真実というか、「気高さ」のようなものをみごとに言い当てています。大林氏は、思想家であり哲学者のような言葉を紡ぎます。その監督は、3年前に82歳で病没されました。
 
若くて、見た目も心も「優美」な架純さんですが、メッセージの終わりに、
「人生80年と考えた時に、これから色んなことがあると思います。苦しいことや辛いこともたくさんあると思いますが、振り返ると笑い話になるので、目の前のことに真摯に向き合って日々を紡いでいってほしいと思います。自分を信じて未来を切り拓いていってください!」
と春秋に富む高校生たちを前に、笑顔いっぱいに「期待感」ある言葉を贈りました。

迎春花の花言葉そのものの有村架純さんの贈る言葉に惚れ惚れし、一生の感動ものだったであろう高校生と同じ席に自分も座っていたような気分に浸ってしまいました。素晴らしいサプライズでした。そして、私にとっても、忘れられない言葉となりました。
 
「濁りなきは愛のいろなれ迎春花」
 俳人・杉山瑞恵