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No.714 こんなところにキレッキレの直角お爺さんが!

漫画家・小山ゆうの「おれは直角」は、『週刊少年サンデー』(小学館)の人気漫画で、1973年(昭和48年)から1976年(昭和51年)まで連載されました。幕末時代の長州藩を舞台にした青春コメディーです。その頃、大学生だった私は、コインランドリーに行くと置いてあった『週刊少年チャンピオン』の「750ライダー」(秋田書店、1975年~1985年)と共に、その爽やかな青春像を楽しませてもらいました。
 
長州の下級武士の家に生まれた石垣直角は、父の
「武士は常に戦場の心でいるべし!」
という教えを金科玉条として守り、ちょっとでも曲がったことが嫌いです。それは歩行にも表れ、一途に直進し、角に来たら常に直角に進むのがモットーの生き方です。
 
藩の名門・萩明倫館に入学して以来、直角の家族や仲間たちと繰り広げる時代劇です。本人は何事にもいたって真面目で本気モードなのですが、軽いコメディタッチに描かれており、抱腹絶倒の筆者の世界観に誘われます。特に、直角が、曲がりくねった世の中や精神を、「直角斬り」で一刀両断するので、爽快感はマシマシです。スカッと青春!
 
コロナの「コ」の字もなかった数年前のある日「人生これから5人衆」(略称、JKG)の忘年会会場に徒歩で向かっていました。すると、反対側の人道のかなり向こうから後期高齢者になるかならぬかくらいの男性が、それこそロボットのように、いや、怪獣のようにカクンカクンしながらこちらに向かって歩いて来ます。
「えっ、リアル芸人のコロッケか?」
と見まがうほどの完成度です、その男性は、歩道もないのに途端に車道を反対側に渡ろうとしてカクンと90度左向きになると、右腕を天に向かって鋭く振り上げ、左右確認の後、悠然と渡りました。
 
そして、なおもカクンカクンしながら私の真正面に舵を切り、歩を進めて来たのでした。ん?私に用なのか?と不安に駆られたその時、彼は、マンション入り口にさしかかり、急に歩を止めたかと思うと、指差しによる左右確認、前後確認をしたきちんとした後、
「よーし!」
と大声を上げてマンションに吸い込まれて行きました。
 
その一連の流れを細大漏らさず見逃すまいと、私は、息をするのも忘れていたかもしれません。これは「おれは直角」の実写版かと、その「直角お爺さん」に唸りました。
 
時代は「令和」を迎えましたが、世情不安、政治不信、環境の危機、混迷する世界情勢等、難問は山積。ここは真剣直角斬りで、一刀両断してもらいたいものですが、剣豪の政治家はいずこに?
 
それにしても、切れ味鋭い方向転換を見せてくれた「直角お爺さん」は、その手慣れた鮮やかな手つきといい腰つきと言い、鉄道関係の退職者を思わせました。今もこうして書きながら、前後左右確認のスピードと「切れ」のある動きを思い出しているところです。

※画像は、クリエイター・How'sitgoing?つながるイラストさんの、タイトル「10/23 挿絵 (27画像)」をかたじけなくしました。駅員さんの規律ある姿勢に「ほ」!