【フリー台本】賢者と猫と閏日の宴
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【概要】
あらすじ
ある日、「森の賢者」と呼ばれるフクロウのもとに、一通の手紙が届きました。
世界の中心で、四年に一度の閏日に開催される宴への招待状です。
フクロウと黒猫はさっそく世界の中心へと向かいます。道々に、閏日についてのお勉強をしながら……。
『森の賢者』の後日談です
情報
声劇台本
性別不問 二人用
上演時間 約20分
<>内はト書き。地の文として読み上げても、セリフのみ読んでもどちらでもOK
登場人物
フクロウ(性別不問)
森の賢者と呼ばれるフクロウ。魔法を使い、人間n言葉も喋れる。
賢者という呼び名の通り、とても賢く、物知り。
黒猫(性別不問)
フクロウに弟子入りした魔法使い見習いの猫
【本文】
黒猫
賢者様、賢者様! フクロウの 森の賢者様! どちらにいらっしゃいますか?
フクロウ
やあやあ、黒猫さん。ここですよ
黒猫
ここ……ここ……。
──あ、そちらにいらっしゃいましたか!
ここ、と簡単におっしゃいますが、大樹のそんなに高い枝にとまられていては、こちらから出向くのは困難です!
<黒猫はフクロウのもとへと、休み休み木登りをします>
フクロウ
そうは言いながらも、こうやってちゃんと出向いてくれるではありませんか
黒猫
そりゃあ、わたしは賢者様の弟子ですから。当然ですとも!
……うわぁ……高い……
フクロウ
それで、ご用件はなんでしょう?
黒猫
はい! お手紙を預かりました。賢者様!
<黒猫は賢者に手紙を渡しました。>
黒猫
ええと……確か、“世界の中心から来た使いの者”とおっしゃっておりました。とても飛ぶのが速い、大きな鳥さんで……
フクロウ
はいはい、わかりましたよ。ありがとう。 手紙を読んでみましょう。
……ほう。やはり。この時期だからそうじゃないかと思いました
黒猫
内容をうかがっても?
フクロウ
うるう日の宴への招待状です。いやぁ、久しぶりに参加できるなぁ
黒猫
うるう日の宴……とは?
フクロウ
うるう日はご存知ですか?
黒猫
ええ。四年に一度、一年の日数が一日多くなります。その多くなった一日のことですよね?
フクロウ
そのとおりです。四年に一度しか訪れないその特別な日を、皆で祝い楽しもうと、宴が開かれるのですよ
黒猫
へぇ……そのような催しが……
フクロウ
ではさっそく、一緒に世界の中心へと向かうとしましょう
黒猫
わたしも、行っていいのですか⁉︎
フクロウ
もちろんです。私の大切な愛弟子なのですからね。いざ、出発ですよ
黒猫
はいっ!
──あ……えっと……あ、あの……
フクロウ
どうしましたか?
黒猫
た、たいへんお恥ずかしながら、この高さから自力で降りられる気が……いたしません……
フクロウ
ほほほ。なるほどなるほど。それでは、良い魔法を教えてあげましょう。きっと後々にも役に立ちます
黒猫
魔法! やったぁ! どのような魔法ですか?
フクロウ
あなたの背に、翼を授けます
黒猫
賢者様のように、空を舞うことができるのですか⁉︎
フクロウ
それは、練習次第でしょうね。
──さて、それではしばし、駆け足で授業をしましょう。無事 地面に降り立ったら出発です。あまり時間に猶予がないのでね。飛ぶ練習は、道々に。
<フクロウと黒猫は、木々の鬱蒼としげる、夜の森の中を進んでいました。>
黒猫
賢者様。もう何日も、ずいぶんと歩いたり飛んだりしておりますが、世界の中心というのは、まだまだ遠いのですか?
フクロウ
道のりの通りに歩いていれば、いずれたどりつけますよ
黒猫
はぁ……
空を飛ぶということが、こんなに疲れるものだとは思ってもいませんでした
フクロウ
四本足での歩き方を覚えたように、飛び方を覚えましょうね。いずれは、歩く疲れとあまり変わらなくなりますよ
黒猫
そもそもですね、こうして歩いて“世界の中心”にたどり着けるというのが、不思議なのです。わたしどものいた森は、世界の中心から徒歩の数日で行けるような場所にあったのでしょうか?
それならば、以前に賢者様のお使いであちこち旅をした時に、わたしは そうと知らずに通り過ぎていたりするんでしょうか?
フクロウ
ほほほ。無知なる者はなんとも可愛いですね。教えがいがあるというものです
黒猫
ええ、ええ。どうせ無知ですとも!
フクロウ
失礼。そう むくれないで。
ただ移動しているだけ というのも暇ですから、世界の中心とうるう日について、お話するとしましょう
<フクロウはもったいぶるように、軽く咳払いをしました>
フクロウ
この世界は、丸く平たい地面で できています。地の最果てのその先は虚空と考えられていますが、行ったことのある者はいません。
そして、世界は 半円球の空の壁でおおわれています。空の壁は虚空から大地をまもり、世界を周回する 太陽と月の光だけを通します。
これが、私どもの住む世界の形です
黒猫
それは、おとぎばなし程度には存じております!
フクロウ
それは良い。では次は、世界の中心には何があるのか ですね。
丸い大地の中心には、高い、世界中のすべての山よりも高い、塔があります。“時の塔”と呼ばれています。
時の塔の中には太陽のカケラが収められています。塔の頂きには、太陽のカケラの光を無数に散りばめて空の壁に映す、それは巨大な投影道具があるそうです。
そのおかげで、夜になると小さな無数の光を空に見ることができます。つまり、今もまさに夜空に瞬いている、星ですね
黒猫
ええと……。星というのは、時の塔が空に映し出している、太陽の光? うぅうん。わかるようなわからないような……。それに、星とうるうの日には、何か関係があるのですか?
フクロウ
大いに、関係があります。時の塔が映しだす星は、この世界に住むあらゆる生物に、時の流れを知らせるものです。
ゆっくり、ゆっくりとですが、星が動いているのは知っていますね?
黒猫
はい、存じております。夏に見える星座が、冬には見えなかったりしますもの
フクロウ
時の塔が規則正しく星を動かすことで、それを見上げる私たちは、時の流れを、季節を知ることができます。
しかし、時の塔を作った昔々の神様が 少し、計算を間違えてしまったのでしょう。だんだんと、実際の季節の移り変わりと星の動きに、ズレがあることがわかってきたのです。
神様とて、完璧とはいかないものなのですね。
そこで、時の塔の番人が取りいれたのが”うるう日“です。四年に一度、一年の長さを一日多くすることで、そのズレはなくなりました。
こうして出来上がった他の年より多い一日を、せっかくなので楽しんで使いましょうと、宴が開かれるようになった、という、そういうお話です
黒猫
ええと……はい。なんとなく、わかりました
フクロウ
実際に世界の中心を見れば、なんとなくではなく、すっと心に入ってきます。
──さあ、そろそろ着きますよ
黒猫
え? えぇっ⁉︎ そろそろって……! そんな天をつくような塔など、まだ影も形も見えませんのに!
黒猫モノローグ
賢者様は突然、空を隠すほど鬱蒼としげる木々の葉のすきまに消えたように見えた。わたしは慌てて、慣れない翼を背にはやし、バタバタと不器用に動かして賢者様の後を追って飛んだ。
分厚い葉っぱの壁を空に向かって抜けると、夜の暗闇の中に燦然と輝く塔の全貌が 目に飛び込んできた。
わたしは地面に降り立つと、思わずうっとりと、遠くきらめく 時の塔をながめた。
その頂きは目を細めなければいけないほど眩しくて、そのまま夜空に目を向ければ、塔から伸びる細い細い無数の光の線が、空の壁に星を映して輝いているのがよくわかる。
光の粒は空の壁だけではなく、そこらじゅう手当たり次第に散らばっていて、ちょっと二本足で立ち上がって目線を落としてみれば、自分の腹にまで 星が映っていた。
黒猫
賢者様、賢者様。夢の中の風景にでもいるようです。まるで突然眠りにおちて、夢幻の地に降り立ったような。それとも、まったく知らない土地に、一瞬で移動したかのような……
フクロウ
当たらずとも、遠からず、ですね。
世界の中心は、世界のどこから向かおうと、等しくおなじ距離なのです。さればこそ、中心と言えるのです。中心への道のりさえ知っていれば、どこからでも、辿り着くことができます
黒猫
時の塔は世界のどの山よりも高いと、賢者様はおっしゃっておりましたが……。
この場所から、塔が頂きまで すべて見えるということは、時の塔まではまだまだ遠いのでしょうね
フクロウ
中心の中心、時の塔には、永遠に辿り着くことはできないのですよ。どんなに近づいたつもりでも、時の塔が今 見えているよりも大きく見えることはありません。
塔にたどり着けるのは、永遠をもつ、神々と時の番人だけです。
ですから 宴は、塔ではなく、ここからさほど遠くない場所で開かれていることでしょう
黒猫
不思議です。絵に丸をかけば、中心をそう定義づけることはできませんのに。世界とは、不思議なものです
フクロウ
そうですね。世界は、不思議で満ちています。自分が見えているもの、知っているものが、全てではないんですよ
黒猫
あっ! 賢者様っ! 宴の会場はあちらではないですか? なにやら、楽しそうな音楽や美味しそうなにおいが漂ってきております!
フクロウ
ほう、そのようですね。では、私たちも四年に一度の宴を楽しむとしましょう
おしまい
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