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8.三題噺「強烈、幼馴染、マカロン」

 先輩が休み時間に教室へやってきた。

「幼馴染ならいますよ」

 今は何故か僕の人間関係の話になっていた。

「どんな子?」

「隣の家に住んでて、手作りお弁当を作ってくれて、オマケにお節介焼きな奴で、前までは朝起こしに来てくれましたね」

「手強い相手がいた……」

 先輩は急に項垂れた。

「最近は色々やることあったり、受験勉強で忙しいので前ほどではないですけどね」

「後輩くんは、その人のことどう思ってるの?」

「声震えてますけど大丈夫ですか?」

「う、うん。大丈夫」

「単なる幼馴染としか思っていませんよ」

「でもでもっ。そういう関係に限ってギャップが垣間見えてドキッとしちゃったりしなかったり……。よくある話じゃない?」

 やけに掘り下げてくるな。
 そんなこと絶対ありえないのに。

「でも、男ですからね」

「……なぁんだ。よかったぁ〜」

 先輩は発達したふたつの山を撫で下ろした。

「何か安心することでもありました?」

「いやいやいや、なにも!?」

 この人は急に焦ったりコロコロとテンションが変わるよなあ。

「もっと強烈なエピソードはないの?」

 こうやってすぐに悪戯顔になってうりうりと僕をつついてくるのにも慣れてしまった。

 僕はうーん、と考えて数秒。

「あ、バレンタインにマカロン作ってくれましたね」

「それはなかなかに強烈な幼馴染キャラだね」と先輩はケタケタと笑った。

「もしその人に会ったらマカロンくんと呼ばせていただこうかな」

「もう会ってますよ」

「え? 誰々?」

「生徒会長ですよ」

 先輩は僕の発言を聞いて言葉を失った。

 目を見開いたまま、驚きが意味不明な音として口からこぼれるだけで、え? しか発音できていない。

「うちの学校の生徒会長はマカロンだったんだ……」

「先輩、さすがにそのセリフは意味不明です」

 混乱して人が食べ物になっちゃってるし。

「マカロンくん、私の隣の席なんだよね」

「世間は狭いですね」

「ほんとだよ! このあとマカロンの話で揶揄っちゃおうかな」

「レスバ強いんで先輩じゃ絶対勝てないと思いますよ」

「なにおぅ。見てろよ。後輩くん!」

 先輩はダッシュで教室を出て行った。

 二分後に帰ってきた先輩は案の定涙目だった。
 ご愁傷様です。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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