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●傷病手当金と介護休業給付金の併給は可能

こんにちは、おけいどんです。

今日は、傷病手当金と介護休業給付金の併給について。

そんなことが可能なのか?

併給が可能かどうか、結論から申し上げますと、法的に併給は可能です。


僕おけいどんは、傷病手当金も介護休業給付金も受給経験がありますが、併給の経験はありません。この記事は、その経験、法律を調べたこと、監督官庁に取材をしたことで記述します。

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病気や怪我、出産や育児など、働けない人のために、いろいろなセーフティネットが設けられていますが、ふたつ以上の制度が対象になった場合には、通常 併給調整されます。例えば、傷病手当金と出産手当金は併給できません。傷病手当金と障害年金も併給できません。併給調整が法律で定められているからです。

しかしながら、健康保険法に基づく傷病手当金と雇用保険法に基づく介護休業給付金には、併給調整の法律が存在しません。よって、法律上、制度上、併給が可能ということになります。


各々の法律を紐解いてみましょう。

まずは傷病手当金について定める健康保険法から。

(傷病手当金)
第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

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療養のため労務に服することができない場合は、傷病手当金を支給する旨が規定されています。


(傷病手当金又は出産手当金と報酬等との調整)
第百八条 疾病にかかり、又は負傷した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しない。ただし、その受けることができる報酬の額が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないとき(第百三条第一項又は第三項若しくは第四項に該当するときを除く。)は、その差額を支給する。

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傷病手当金を受給するものが、報酬を受けた場合は、併給調整することが規定されています。給与を全額支給されている場合は、傷病手当金は支給されません。給与以外はどうでしょうか。この「報酬」とは何かということがポイントとなってきます。介護休業給付は「報酬」にあたるのでしょうか。


第三条に「報酬」が定義されています。

(定義)
第三条
第5項 この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

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このように、「報酬」とは、労働の対償と定義されています。したがいまして、介護休業給付は「報酬」には当たりません。


続いて、介護休業給付金について定める雇用保険法を。

(介護休業給付金)
第六十一条の六 
第1項 介護休業給付金は、被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより、対象家族(当該被保険者の配偶者、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。以下この条において同じ。)を介護するための休業(以下「介護休業」という。)をした場合において、当該介護休業(当該対象家族を介護するための二回以上の介護休業をした場合にあつては、初回の介護休業とする。以下この項において同じ。)を開始した日前二年間(当該介護休業を開始した日前二年間に疾病、負傷その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上賃金の支払を受けることができなかつた被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を二年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年間))に、みなし被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、支給単位期間について支給する。

(中略)

第5項 前項の規定にかかわらず、介護休業をした被保険者に当該被保険者を雇用している事業主から支給単位期間に賃金が支払われた場合において、当該賃金の額に当該支給単位期間における介護休業給付金の額を加えて得た額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額以上であるときは、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額から当該賃金の額を減じて得た額を、当該支給単位期間における介護休業給付金の額とする。この場合において、当該賃金の額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の百分の八十に相当する額以上であるときは、第一項の規定にかかわらず、当該賃金が支払われた支給単位期間については、介護休業給付金は、支給しない。

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第1項にて、介護休業した場合に介護休業給付金が支給される旨が、第5項にて、介護休業中に会社から「賃金」を得ている場合は併給調整する旨が規定されています。傷病手当金は、「賃金」にあたるのでしょうか。


第四条に「賃金」が定義されています。

(定義)
第四条
第4項 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。

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「賃金」とは、労働の対償として会社から支払われるものと定義されています。従いまして、「傷病手当金」は賃金には当たりません。


関連する行政通達を見つけました。

行政通達 平成11年3月31日保険発第46号・庁文保険発第9号
介護休業期間中の傷病手当金
傷病手当金又は出産手当金の支給要件に該当すると認められる者については、その者が介護休業期間中であっても傷病手当金又は出産手当金が支給されるものであること。なお、健康保険法の規定による傷病手当金又は出産手当金が支給される場合であって、同一期間内に事業主から介護休業手当等で報酬と認められるものが支給されているときは、傷病手当金又は出産手当金の支給額について調整を図ること。

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介護休業期間中であっても、傷病手当金は支給されるとされています。そして、会社から報酬がある場合は併給調整する旨が記述されています。


このように、法律にも行政通達にも併給調整する規定はどこにもないのです。ないということは、併給可能ということになります。


最後に、監督官庁に問い合わせてみると、法律上は併給可能ですが、実際に併給されたケースはほぼ聞かないとのことでした。やはりハードルは高そうです。


とはいえ、繰り返しになりますが、法的には併給可能です。

傷病手当金を受給しているということは、本人は病気もしくは怪我をしているということになりますので、それでも介護が可能か、さらには、療養と介護が可能であるか、という論点になってくると思います。本人が入院している、もしくは自宅療養でも安静が必要な状態では、家族の介護は出来ませんから、介護休業給付金の申請を行なうと虚偽の申請と見做される恐れがあるでしょう。また、介護をすることで療養ができないのであれば、傷病手当金の支給要件を満たしていない可能性があります。従いまして、本人は何らかの傷病を負ってはいるが自宅におり、自身の療養と家族の介護の両立が可能であるということが、傷病手当金と介護休業給付金の併給要件になってくると思います。


介護休業給付金および傷病手当金の申請の仕方は、過日 別記事でご説明した通りです。傷病手当金と介護休業給付金を併給する場合は、傷病手当金も介護休業給付金も、申請をするには、ややハードルがあがりそうです。


傷病手当金の申請には、療養と介護の両立が可能であることと就労不可であることを、健康保険組合に理解してもらえるよう記述する必要があると思います。書面だけで審査されますので、しっかりと記述する必要があるでしょう。


介護休業給付金は、通常通りの書類を揃える以外に、主治医から「介護は可能である」という診断書を出してもらうなど、何らかの介護している、介護できる旨を証明するものが必要になるかも知れません。


傷病手当金は給料のおよそ66.7%が支給され非課税です。介護休業給付金も給料のおよそ66.7%が支給され非課税です。よって、合計しますと、給料の133%が非課税で受給できるということです。

健常者から見れば、働かなくとも給料以上が非課税で貰えることに違和感があるかも知れません。感情論としては分からなくもないです。しかしながら、傷病手当金と介護休業給付は別々の法律に基づく別々の制度、別々の保険ですし、本人が病気もしくは怪我をしていることも、家族の介護をしていることも事実です。傷病治療や介護でそれぞれお金が必要ですから、セーフティーネットというそもそも論から鑑みて併給は妥当であると思います。また、それら両方の保険料を支払う義務を本人が果たしていますので、義務を果たしている以上は併給は権利であるとも言えます。


というわけで、傷病手当金と介護休業給付金の併給は法律上 可能です。ただし、ハードルは高そうです。


情報発信には細心の注意を払っておりますが、法改正や法解釈の変更、新たな判例が出される、管理人okeydon(おけいどん)の知識不足等の可能性があります。最終的には、読者の皆様ご自身で、監督官庁等にご確認いただきますようお願い致します。また、当ブログのご利用により、いかなるトラブルや損失・損害等が発生した場合でも、管理人okeydon(おけいどん)は一切の責任を負わないものとします。


今日も何事にも適温でまいりましょう。


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