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言い訳の分類学

人間は生きている時、様々な言い訳を思いつくものです。私もこれまで幾度となく言い訳をしてきました。これらの輝かしい言い訳達を振り返ってみると、2つに分類できることに気づきます。2種の言い訳の内、どちらを用いるかはその時の状況や気分、または個々人の性格によって異なるようです。タイプ分けができれば、あなたも言い訳をしたり、言い訳をされた時に、明確に言い訳を分類できるようになれます。区別できるようになっても全く役に立たないことは、私が保証します。

浮気がバレた際の言い訳を例に考えてみます。もちろん、浮気した場合は言い訳などせず、謝罪なり慰謝料なりの適切な対応をすべきです。しかし、残念ながら巷では、数多の言い訳が繰り出されているようです。例えば、以下のような言い訳。

「あれは本気じゃなかった。だから許して欲しい」

この言い訳を解剖してみると、次のようなを説明していることになります。

「浮気には2タイプある。本気の浮気と、本気ではない浮気である。本気の浮気は悪い浮気だが、本気ではない浮気はそこまで悪いわけではない。だから、許して欲しい」

至ってロジカルです。全てのキノコには毒があると勘違いしている貴婦人が、自分がキノコを食べてショックを受けている場面を想像してください。こんな時、彼女になんて声をかけるでしょうか。

「キノコには2種類ある。毒があるやつとないやつだ。君が食べたのは毒がないキノコだから、心配する必要はないよ」

多分、こんな感じのことを言うと思います。先に述べた浮気の言い訳と全く同じ論理構造です。浮気の2つの区分に分けて、片方に善、もう片方に悪を割り当てる。カテゴリー分けの言い訳です。

次に解説するのは以下のような言い訳です。

「あれは浮気じゃない。だって本気じゃなかったから」

一見滅茶苦茶なことを言っているようですが、実はかなり論理性を有する反論です。この言い訳は次のような内容のことを言っていると解釈できます。

「浮気とは、配偶者および恋人を持つ人間が、非配偶者または恋人ではない人間と本気の恋愛関係に陥ることと定義できる。今回のケースにおいて、私は本気ではなかったのでこの定義を満たしていない。したがって、私は浮気をしていないと結論付けられる」

まず、定義を述べてから、次にその定義に合致しているかを判断。まるで数学の論文かのような切れ味の鋭いロジック。問題があるとすれば、浮気という単語の定義を恣意的に決定している点です。浮気かどうかは、被浮気者もしくは第三者が判定するもので、浮気をしたと目されている人間がするものではないでしょう。浮気の定義を恣意的に決定して、自分の好意を定義の外に置く。恣意的定義の言い訳です。

市井に出回るたくさんの言い訳を見ていると、これまで説明したようなカテゴリー分けの言い訳と、恣意的定義の言い訳の2タイプがありそうです。新たな言い訳を見かけたら教えて下さい。

カテゴリー分けと恣意的定義の言い訳、どちらを使って世の中を渡っていくかはあなた次第です。