鬼滅の刃
僕はキレていた。
僕のバイトは学童保育の指導員で、平日は毎日小学校に通って子どもの見守りをしている。
そこで子どもたちがこぞって歌うのが鬼滅の刃の主題歌「紅蓮華」だ。この曲の流行り方は尋常ではない。勉強の時間中もお絵かきをしながらでもみんなで合唱しやがる。
毎日、毎日、毎日。学校の校歌より浸透してるんじゃないか?
もう気が狂いそうだ。
これは自分に鬼滅の刃の知識がないからに他ならない。自分が知らないものが周りで流行っている状態、これは面白くない。
しかもそれが職場なら尚更だ。避けようがない。子どもたちは今日も紅蓮華を歌いながら他の指導員がどこかから引っ張ってきた画素数の荒い鬼滅の刃の塗り絵をやったり絵を描いたり、つけているマスクまで黒と緑市松模様、鬼滅カラーだ。とんでもないブームが子どもたちの間で巻き起こっている。
もう逃げられない、そう悟った僕は家に帰るなりNetflixで鬼滅の刃を視聴し始めた。
鬼滅の刃はNetflixやAmazonプライムなどの動画配信サブスクで視聴気軽に視聴できるのも流行った理由だろう。子どもたちはみんな口々にAmazonプライムで見た!!と言っていた。
なるほど、鬼に襲われて自らも鬼になってしまった妹を助けるため主人公が鬼を倒してがんばる話しなのか。
みた結果、1話目の富岡義勇の啖呵を切るシーンで引き込まれた。すごく勢いがある。
あと仲間のキャラクターがいいね。善逸、伊之助がすごく元気でいい。
極め付けはアニメ19話「ヒノカミ」のかっこよさ。挿入歌と絵がバッチリあった完璧なバトルシーン、エンディングへの入り方も最高。
そしてその後に出てくる9人の個性的な柱、風呂敷が広がるワクワクがすごいね。
気がついたら全話観てた。3日にわけて楽しみながら観てた。
んで、それを学童に来てる3年生の子に話したらアニメの時点で7巻くらいだよ。と言われてびっくりしたわけ。
こいつら俺の遙か先を行っている……。
その日僕はインターネットで鬼滅の刃の塗り絵を有志で作ってるサイトを見つけて塗り絵を印刷しまくった。
主要人物から柱9人まで満遍なく擦って塗り絵のファイルに入れておいた。
子どもたちがそれを見つけると喜びながら色を塗りはじめる。それを見て回る僕の姿がそこにはあった。僕は変わっていた。
この土日で原作もアニメの続きの7巻から買って、最新刊まで読み終わった。僕は中途半端な所から漫画を買うのに躊躇がない男だ。
今では最終巻が出るのが楽しみで仕方がない。
学童の教室で響き渡る紅蓮華も心地よい歌に変わった。
僕を連れて進め。
あなたのサポートで今日も口にのりする事ができます。