潮騒 感想

「潮騒」は、昭和の文豪・三島由紀夫の代表作の一つです。
あらすじを説明するとともに、個人的に印象に残った箇所や、なぜ印象に残ったのか考えていこうと思います。

1. 「潮騒」の舞台

お話しの舞台は、歌島という伊勢湾に浮かぶ周囲は1里(4kmほど)ほどで、人口は1400人程度の小さな島です。
時代は戦後間もない1950年頃
この島では、男は船に乗り漁を行い、女は海女となり海に潜るなど漁業がが盛んな島です。

小説の舞台となった伊勢湾に浮かぶ神島
北に愛知、西に三重県がある
崖からの景色
街並み
八代神社
小説の中でもでてくる

2.主な登場人物

久保新治(主人公):18歳の青年。背丈が高く、体つきが立派。ものを考えない性格。考えることが苦手。

宮田初江:18歳くらいの生娘。目元がすんだ綺麗な顔立ち。三重県の志摩に養子に出されていたが、父に呼び戻され歌島に戻った。

宮田昭吉:初江の父。歌島の有力者。貨物船を持っている。

川本安夫:村の名家の生まれ。若者たちのリーダー的存在。プライドがとても高く、鼻につく性格をしている。

3.あらすじ

伊勢湾に浮かぶ歌島で漁師をしている新治は、ある日浜で見覚えのない少女を見かけると心を奪われた。新治は女性経験がないため、意味もなく少女の前をうろついたりと浮足立ってしまう。
その少女は、村の有力者で金持ちの宮田昭吉の娘で名を初江という。初江は養女に出されていたが、初江の兄が病死したことで、昭吉から歌島に呼び戻されたのであった。

恋愛経験がなく初心な新治は初江の名前を聞くだけでそわそわしてしまい、鼓動がはやくなるなど様子がおかしくなる。そして、自分は病気なのかもしれないと検討違いを起こすほど恋愛感情について疎かった。

二人はある強風の日に観的哨(旧陸軍省が砲弾の着弾点を観測した施設)で偶然遭遇した。初江は慣れない山の中で迷子になっており、そんな初江を見つける形で二人は出会った。そこでは数言話しただけであったが、その後も新治が落とした給料袋を初江が拾ったり、灯台長の家で偶然顔を合わせたりと、回数を重ねるごとにお互い惹かれあっていく自分の心に気づいていく。

観的哨

嵐が予想されたため休漁日になる日に、初めて出会った観的哨で二人は待ち合わせることにした。当日初江と会うのが楽しみな新治は待ち合わせの時間より早く出発し、先に到着することにした。

豪雨の中家を出た新治は観的哨についた頃には雨で体が濡れたため、焚火を起こし温まろうとしたが、温まっているうちに新治は眠りに落ちてしまう。ふと目が覚めて気が付くと、初江が肌着を脱いで乾かしているのが目に映った。裸を見られた初江は羞恥心から新治にも裸になるようにという。

裸になった新治に向かって、さらに初江は、「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」と言った。火を飛び越した新治と初江は裸のまま抱き合うが、初江の「今はいかん。私、あんたの嫁さんになることに決めたもの」という誓いを聞き、新治は溢れる欲情を抑え何も強いることはなかった。

ただ二人は裸で抱き合い、鼓動の音だけを聞いた。その後永い接吻をした。新治は充たされない気持ちとは裏腹に、ある瞬間からこの苦痛がふしぎな幸福感に転化していくのを感じる。

そんな二人の逢瀬を噂話から知った安夫は、
新治に激しく嫉妬し、村中に悪い噂を言いふらす。
そしで、ふたりの噂を知った初江の父昭吉は二人が出会うことを禁じた。

この事件で二人の仲は引き裂かれたが、二人の思いは消えることなく、より強まっていく。
そんな時、昭吉の持ち船の貨物船で甲板見習いを募集していた。
その募集に新治と安夫は応募することにした。
昭吉は新治と会えないことで落ち込んでいる初江を見るにたえず、
二人の船での仕事ぶりを見て、初江の婿を選ぼう考えてたのだ。

船は沖縄まで貨物を運んでいたが、道中に台風に見舞われ船は危険に陥る。
そんななか、安夫は自分の家柄が高いことを棚に上げ新人なのに何もしなかった。それに対し新治は自分の命をはり、船の危機を救った。 
そんな頑張りが昭吉にとどき二人は無事結ばれた。

4.感想

この小説を読んで、あまりにも綺麗すぎるな感じた。
ここでいう綺麗というのは美しさなどではなく、清廉潔白さをすごく感じた。
まず、主人公の新治から人の嫌な部分というか醜い部分が全く見えない。
表裏がなく、まっすくな子供のような印象を受けた。
そこに違和感を少し感じるが気持ちの悪さなどは一切感じない。
例えば、安夫に噂話をされたり、昭吉により初江と会うことができなくなっても、無理に状況にあらがうことなく、その状況でやれることをやるなど、どこか従順的ささえ感じる。

大人たちはもっと汚い。
自尊心を傷つけないように相手の足を引っ張たり、自分の欲情にかられるまま行動したりと、裏には醜い部分が隠れているのが大多数だと思う。
安夫も自分のプライドを守るために、悪い噂話を流したりしている。

しかし、新治からはそういった部分が見えてこない。
そういった部分に羨ましさを感じた。
私はすぐに汚いことを考えてしまう。
自分の居場所がなくなりそうになると、相手の足をひっぱろうとしてしまう。そして、そんな自分に嫌気がさす。
私がひねくれている分、新治の純粋さに惹かれるのだろうか。

新治はものを考えない性質らしい。
悩みや不安なことがあっても、そんなことは考えず海を眺め潮の音を聞くそうだ。
まずは、そんな新治を見習って、ぼーっと何も考えずに過ごすところから始めてみようと思う。

神島に遊びに行こう。

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