夢をのせて

小学校からの同級生と久しぶりに飲んだ。

近い人でも約1年。遠い人は20年近く会っていなかった。ただ、今の時代、は便利なものでSNSで繋がっている。友達が友達を呼び、なんとなく写真で近況を知っていて、会話は思いの外途切れることがなかった。


その中でも一番近い男がいる。
彼とは家が近くて、歩いても20秒ほど。小学校に行く時は、毎朝彼の家の前で大声で名前を読んで、一緒に通っていた。
学校から帰っても、ザリガニを釣ったり、キャッチボールをしたり、とにかくずっと遊んでいた気がする。

そんな彼との思い出でずっと覚えていることがある。
自転車で30分ほどかけて、上野に行った時のこと。

彼は昔から電車が好きだった。小学生ながらNゲージなんかを走らせて、僕に見せてくれた。僕はその魅力がいまいち分からなかったけど。

そんな彼が上野のある橋に連れて行ってくれた。橋の下にはいくつもの線路が走っていた。たくさん電車が見える場所だった。待っていると次々に様々な色の電車が自分たちの目の前に現れる。

僕たちは、電車が来るたびに大きく手を振っていた。
気付くかなー?わかるかなー?そんな風に思っていたと思う。

電車が来ることは決して珍しいことでもなんでも無いのに、とにかく手を振っているのが楽しかった。どこかで、運転手に向かってエールを送っていたのかもしれない。

小学生の僕たちが手を振ると、いくつかの電車は警笛を鳴らしてくれた。
それが僕たちに向けられたものなのか、それとも業務上必要なものだったのかは分からない。でも、そのころの僕たちにとっては、何かメッセージに応えてくれたように思えて、二人で喜んでいたのを今でも覚えている。

そして、隣にいた彼は言っていた。
いつか電車の運転手になりたいな、と。


十数年後、彼は、本当に電車の運転手になった。
夢を叶えた。

そして数年経った今、新幹線の運転手をしているらしい。
多くの人の想いを乗せて、電車を走らせている。

自分の夢だけでなくて、たくさんの人の想いや夢を運んでいる。彼はそれを誇っている。でも何より楽しんでいるようだった。


小さい頃の時の夢ってなんだっただろう。
自分の楽しいことってなんだろう。

彼を見ていると、そんなことを前向きに考えられるような気がした。

自分にできること。
自分がたくさんの人の想いや夢を運ぶには何ができるだろう。

そんなことを思った素敵な夜だった。

いただいたサポートは取材や今後の作品のために使いたいと思います。あと、フラペチーノが飲みたいです。