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新人を2日間で劇的に成長させた方法

私がいた会社では、4月から入社が決まっていた新卒の人は、その前からアルバイトとして週に数回、(会社の領収書等をまとめ試算表を作るための)入力作業を手伝うことになっていました。とはいえ税理士事務所の入力作業は難しく、簿記の知識だけでは上手くいかないところもあります。経験がものを言う世界です。

さて、そのうちの1人(A君)が、なかなか上手くならずに困っているということで、私が2日間だけ指導をすることになりました。私も入社して半年のころの出来事だったので、経験からでは良いことは何も言えません。しかし、私は

2日間で、劇的にA君を成長させました。

今日はその方法について、書いてみたいと思います。

今回は、会社における先輩と後輩感がある、素敵な画像を見つけたので、使わさせていただきました。私はこの女性のように暖かく見守る人ではないかもしれませんが笑。とても素敵な絵ですので活用させていただきました、ありがとうございます。

自信を失っていたA君

指導することになった初日、A君が来たということで会いに行きました。そこで見たA君の印象は、明らかに自信を失っていました。

・下を向きがち ・目が合わない ・声が小さい ・顔が引きつっている

私は、この子が入社する前に退社してしまうんじゃないかと心配になりました。というのも、内定が決まっているということで、入社前に行われた忘年会等に呼ばれていました。そこで話したことがあったので、もっと明るく、自分のことをよく語る子だったのです。

自信を失うと、人はそれを隠すように行動すると思います。すごく元気がなくなるか、すごく悪いことをして荒れてしまうか、です。いつも通りではいられなくなってしまいます。

今まで指導していた方が良くない人だったわけではありません。むしろ、とっても丁寧に教えていたように思います。細かいポイントを指摘し、すぐに教える姿は何度も見ていました。私も同じ方に指導して頂いたのですが、とても良い人でした。


さて、2日間しか与えられた時間はありません。私の戦略が始まります。


褒めまくる

A君と「久しぶり~」と簡単な挨拶を済まし、さっそく指導に入ります。

「まずは、どのあたりがわからないの?」と聞きました。

少し悩んだあとに「請求書を見てみると、それが買掛なのか売掛なのか未払いなのか、どう処理したらいいか…」と言いました。

そこで私はすぐに「それはね!」と言いません。

「おぉー!難しいものが難しいってわかってるって、今までちゃんと考えてできてる証拠だね!

本当にわからない人は、わからないところがわからないもんなんだよ!

その上でわからないところがはっきりしてるって、それだけ頑張ってきた証拠だよ!」

必要以上に褒めまくりました(笑)
実際請求書は難しいので、わからないと言って当然なのです。しかしわからないものがわからない、から抜け出せていたのです。十分に褒めるに値します。

そして、わからないものが言葉にしてくれただけでも、こちらとしてはありがたいです。自信を失っているときは「また怒られるのでは…」と、言葉が出ません。言ってくれればこちらとしても対応が取れますので、まずは言ってくれる雰囲気を作ることです。

そのためには

9割褒めて、1割の本音を聞く

です。

褒めて褒めて褒めて、相手から「いやでもね、、、」が始まったら、それが本音だと思うのです。


指導は気付かせて、気付いた時に褒める

私はとにかく教えませんでした。気付かせます。

こっちが言ってしまえばとても早いとは思いますが、聞いたことはすぐに流れてしまいます。しかし自分で気がついたことは、強く残ります。

そこで、なるべく「気付く」ように仕向けることは大事だと思います。

少しずつヒントを出し、気がついたときに「よく気がついたね!」と褒めポイントに繋がっていきます。

正直、この方法は最初は時間がすごくかかります。しかし、後々のことを考えると、この方法はすごく早くなります。実際、2日間の終わりのころは、同じミスをしなくなったため、相当スピードがあがりました。


褒め方にもポイントがあります

ただ「いいね!」と言うだけでは、今なんで褒められたのかよくわかりません。

褒めるときには”褒めた理由=価値付け”をつけます。

私は会話の1つで「話を聞くときにメモを取るなんて、話をしっかり聞こうとする気持ちが伝わってくるよ」と言いました。

見逃しても良いポイントですが、私はそう伝えました。

そこで「メモをとってて、いいね」で止まりません。メモを取ることで「話をしっかり聞こうとしている」という価値を付けたのです。だから褒めたんだよ、と、価値をつけたのです。


”褒められた”という事実は、いずれ消えてしまうことです。しかし、そこについた価値感は、その人に残ることだと思います。


褒める効果は絶大

褒めることで、次の良さがあります。

1つ目は「本音が聞き出せる」です。

いいね~いいね~すごいね~!と褒め続けていたら、相手は「いや、でもね…」と続きます。ここから出てくるものが本音です。

なぜなら「この人には、言っても大丈夫そうだ」と思わせることができるからです。褒められるというのは、それだけ見ていないとできないことです。「こんなに見てくれるなら、きっと本音を言っても大丈夫だよね…」と、相手の心を開くことができます。


2つ目は「自信をつけさせる」ことです。

自分の成長は、自分ではわかりにくいものです。自分の成長は、人に言われて初めてわかるものです。これは子どもに言われがちなものなのですが、大人になっても結局はそういうものだと思います。そして成長を感じたとき、人は自信を持つものだと思います。


3つ目は「関係を作れる」ことです。

やはり褒めてくれる人には、心を開くことができますよね。

ちなみに心を開けない人は「怒られる人」だと思います。「やばい、これを言ったら怒られる・・・」と頭で考えてしまうと、その人には相談することはできなくなります。

ちなみに私は、A君には先に「100回同じこと聞いても、怒らない自信あるからね!」と伝えておきました。もちろんそのたびに自分の作業がストップするので私は大変ですが、A君がたくさんのことを聞いてくれました。


褒めるだけ?そんなことはありません

ここまで褒めることに対してずーっと書いてきましたが、もちろん褒めること以外のこともします。

伝えるべきところは、時間をかけて伝えます。

A君の話を事前に聞いていたとき「考え込んでるのか、固まるときがある」と聞いていました。

入力作業は、よほどのことがない限り先月のデータがあります。アルバイトの人には、基本的にはそれを参考に今月の分を入力してもらうようにお願いします。

しかし、A君は、その場で考えて入力し、過去のと比べて正しかったかどうかを確認していました。過去のを先に見るのは、わかっていないときにするんだ、自分がわかっていないから…、と自信が無い時の負のループに陥っているようでした。

ここには私は時間をかけました。私たちですら過去のを先に見ること、どうしてそうしているのか、そしてそれを繰り返す中で見えてくるものがある。悩む前に過去のを見ることが正しいんだ、ということを相当時間をかけて説明しました。

「悩む前に、調べる」

これを何度も繰り返し伝えました。A君の中で理解できたようで、そこからは悩んで固まる時間はなくなったように思います。


2日間が終わっての変化

一番変化したなと思うものは、アルバイトとはいえ研修なので振り返りシートを書くのですが、その言葉でした。

「~ができなかった」ばかりだったA君の言葉が

「~ができた」ばかりになったのです。

何かを掴んで帰った証拠だと思います。

もちろん、その後のA君は入力作業のスピードも上がり、顔つきも良くなったそうです。


「おかず先生、どんな魔法を使ったの?」と言われました(笑)

私は、何もしていません。ただ、A君が成長したのです。

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